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律「…っ!?はぁ、!?」
思わず声が漏れる。
知らない。
絶対に知らない場所のはずなのに。
床に足をついた瞬間、
体が自然に動いた。
――歩ける。
――迷わない。
それが、何より気味が悪かった。
律「……ここ、どこなんだよ……」
??「主様?聞いておられますか…? 」
声が聞こえた方に目を向けるとそこには
白と黒が混ざった髪に、淡いピンクのメッシュの男がいた。
その色合いとは裏腹に、表情はひどく冷静だ。
ベリアン「大丈夫ですか?主様。」
律「……え?」
主様。
聞き慣れない呼び方に、思考が止まる。
律「……いや、違……」
ベリアン「私はベリアン。
あなたに仕える執事の一人です」
淡々とした口調。
まるで、それが当然であるかのように。
律「……待って。
執事? 主様? 何の話……」
説明を求めようとした、そのとき。
視界の端に、黒い影が映った。
足元に、一匹の黒猫がいる。
じっとこちらを見上げ、
何かを確かめるように目を細めていた。
ムー「……あれ?」
低く、落ち着いた声。
猫が、喋った。
律「……え」
次の瞬間、その猫は目を見開いた。
ムー「……律さん!? 戻っ――」
そこまでだった。
ベリアン「ムーちゃん?」
低く、鋭い声。
同時に、ベリアンの手が伸び、
ムーの口を塞ぐ。
あまりにも素早く、
反射的な動きだった。
ムーは一瞬だけ驚いたように目を見開き、
すぐに何かを悟ったように黙り込む。
ベリアン「……申し訳ありません。主様。」
それだけを告げる声は冷静で、
けれどどこか、必死に抑え込んでいるようにも聞こえた。
律「……なに、今の。」
胸の奥が、ざわつく。
律「俺の名前……言いかけなかったか?」
ベリアンは、ゆっくりとこちらを見る。
ベリアン「……聞き違いでしょう」
律「……」
嘘だ、と直感した。
理由は分からない。
けれど、この場にいる全員が、
“何かを隠している”ことだけは伝わってくる。
ムーは視線を逸らし、
何も言わずに床に降りた。
律「……説明、してくれない?」
知らない場所。
知らない人たち。
それなのに、自分だけが“知っている前提”で扱われる違和感。
ベリアンは、ほんの一瞬だけ沈黙した。
ムー「ごめんなさい。それは出来ないですっ。」
ムーに続いてベリアンが話し出す。
ベリアン「主様が思い出されていないことが、何よりの証です」
律「……何の証だよ…というかーー」
その瞬間。
――ウゥゥゥゥン。
屋敷全体を揺らすような警報音が鳴り響いた。
律「っ……!?」
空気が一変する。
ベリアン「天使ですか…!?」
律「……は?」
理解が追いつかない。
ベリアンはすでに行動していた。
ベリアン「後ほど、必ずご説明します」
一瞬だけ、こちらを見る。
ベリアン「すみませんがこちらへ来て頂けますか、?」
構わず質問しようとしたが声が出ない。
けれど…
――俺はここで…何があったんだ?
そんな疑問だけが
不気味なほどはっきりと残っていた。
ーーー
ーー戻る場所をもう一度ーー
〜第3話 知らない場所と思い出せない主〜