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ある日、伊織は風呂に入ろうと、寝巻の浴衣と、生前からずっと使っている、シンプルな青い手拭い(タオル)を、風呂敷に包み、五右衛門風呂の風呂場へと行こうとした。
廊下を渡っている時、外の木がゆらゆらと動き、伊織は「風が強いんだな」と思った。
伊織は、服を脱ぐと、ぶるっと震えた。
まだ白衣ぐらいなのに、今日はそれぐらい寒いんだな。と伊織は思った。
風呂に入ると、下に板があった。伊織は首までしっかり浸かり、左手を外に出した。
「寒いんだよね。ちょっとぐらい、この部屋の温度、上げてもバレないでしょ。まだ、20℃ぐらいだし」
そう言い、伊織は左手から、何やら朱色のような柔らかな光を手から放った。
その光は10秒ぐらいで消え、辺りは少し、暖かくなった。
(じゃあもうそろそろ出ようかな)
伊織は風呂から出て、浴衣を着て、手拭いを洗濯物用の籠(かご)に入れ、綺麗に畳んだ白衣と男袴を入れた風呂敷を包み、片手で自室へと持って行った。
自室の少し前の部屋(居間)には、舞香、澪、日向、優香、颯太など、伊織以外の全員が集まっており、各々、バラバラなことをしていた。
「皆ー、僕、お風呂入り終わったよ〜」
伊織は皆に聞こえるように少し大きめの声でそう言った。
「あ、お風呂入りましたか。じゃあ次は日向さんが行ってください」
「うーす」
舞香が日向にそう言い、日向が返事をし、日向は荷物を取りに、自室へと向かった。
舞香は自室の布団を直しに行った。
「伊織くん、肌、保湿しない?」
優香が聞いてきた。
「あ、じゃあ、しようかな…」
伊織がそう言うと、優香は乳液の瓶を取り、伊織に渡した。
伊織は乳液の入った瓶を開け、乳液を手で掬(すく)い取り、掌(てのひら)に塗り、顔につけた。
「あれ?伊織くん、お面のところ、塗らなくていいの?」
優香はそう聞き、伊織のお面に手を伸ばした。
「やめて‼︎」
伊織がかなり大きな声を上げた。颯太と澪がビクッとしたようでこちらを見た。
「い、伊織、どうしたんだ…」
颯太はかなり動揺しているようだった。
だが、伊織は颯太を無視し、優香に聞いた。
「優香、僕が昔からずっとこのお面で目を隠していることは知っているでしょう?」
「うん、知ってる。けど、理由までもは…」
そう言う優香の声を聞くと、伊織はゆっくりと、そのお面を取った。
すると
そこには、片目辺りの皮膚が焼け爛(ただ)れ、アザが多い皮膚の伊織を優香は見た。
「い、伊織くん…その肌…」
動揺し、声が震えている優香に、伊織は落ち着き払ってこう言った。
「これはねー…僕の死因、「落雷死」の時に出来たアザと、生前、僕のいじめっ子がつけた火傷痕。火傷だって思ってるかもしれないけど、その時に、目もちょっと焼かれちゃって…。ここの目の視力はあんまり良くないんだ」
あははと苦笑いしながら言った、伊織の片目の傷は何とも痛々しかった。