光が消えた
彼女がある日、突然居なくなった
いつものように『レイ!任務に行ってくるね!今日の任務は長引くかもしれないから、できる限り早く帰ってきます!』と言って、家を出た、私はそれを見送ったんだ、それから、もう1ヶ月が経つ、長くても2、3日で帰ってくると言った彼女は未だに帰ってこない。
もしや怪我をしたのかと思い、ハンター教会に連絡を入れたが、そちらからも連絡は取れないらしい。
あれから1週間警察にも連絡をして、ようやく彼女が見つかったらしい。場所だけ聞いて行くと、通されたのは霊安室だった。
レイ「…は?」
職員「信じられないのも、無理はございません、この方は、禁猟区の奥深くで、遺体となり発見されました。どうやら、ワンダラーの食料として、寝床に連れ去られたようです、幸いそこにいたワンダラーは捜索隊に倒されていたようで、まだ、原型が残った状態で発見されました。」
レイ「遺体、?嘘だろう?彼女は、臨空1のハンターだ、そんな簡単に…」
職員「…信じられないのも無理はありません。遺体確認を、お願いいたします。」
私は違う、他人の空似であることを願いながら、彼女の顔にかけられていた布を取った。
レイ「…」
そこに居たのは、多少傷はあれど綺麗な、紛れもなく自分の最愛の彼女だった。
職員「…どう、でしょうか」
レイ「彼女、です、間違いなく、私の、ッ」
それからは色々なことが行われ、焼かれる前にということで時間を取らせてもらった。
レイ「主人公、森の奥は冷えただろう…寒かったな」
所々腐ってしまっている彼女を見ると、恐らく長い間生きてはいたのだろう。
レイ「苦しかったな、痛かっただろう、すまない、すぐに探しに行くべきだったな、ハンター以外は入っては行けなかったんだ、でも、あんなもの、破って探しに行けば、まだ、助かったかも、しれなかったなぁ、っ、すまない、すまない…」
レイ「主人公、お前の弔い方は私が決めていいらしい、なにが、いい?最後の、おしゃれ、だな、お前はいつも綺麗な服を買っていたからな。死化粧も、綺麗にしてもらえ、やはり、焼こうか、骨壷に入れれば、私の部屋にお前を置いておける。特に物もないが、退屈と言うだろうが、許してくれ…」
あれから葬儀も滞りなく進んだ、彼女の同僚も数名来てくれていたが、凄かったな、お前は仕事場でも人気だったんだな…何より多かったのが彼女に命を救われた人たちだ。私より多くの命を救っていたんだと思う。
私は骨壷は墓には入れずに家に置いておくことにした。彼女はいつも『私が死んだらお墓に入れないでレイの家に置いて!物置でもどこでもいいから!』 と言っていたな…
レイ「リビング…は流石にダメか、寝室、もあれだな、私の部屋に置いておくか?いや、部屋の雰囲気にこの可愛らしい骨壷は、まぁ、いいか。」
結局私は彼女を自分の部屋に置いておくことにした、彼女は1人で暇になるとよくちょっかいをかけてきたから、恐らくこっちの私の部屋なら本もあるし私が基本ここにいるから退屈はしないだろう、映画を見る時なんかはリビングに置いておくか。
それからしばらくはいつも通りの日々が続いた、ある日ふと気づいた、彼女の声は、一体どんな声だっただろうか、可愛らしい声ではあったが、どうも思い出せない、なにかの文献で読んだことがある、人間で一番最初に忘れるのは声だと、例えいくら何度も聞いた声だとしても、忘れてしまう人間の体は実に薄情にできている。
少し前に彼女が突然、ビデオを撮りたいなどと言って、撮り方を聞いてきたのを。
レイ「確か絶対にいいって言うまで見るなと言われて渡されたのがあったな、」
レイ「もうお前は居ないし、怒られることもないしな、見るか」
結論から言えばそれは、今までの思い出等を、彼女がビデオの前でずっと語っているビデオだった、私すら忘れていた私の話や、彼女からまだ聞いていなかった話も沢山あり、ビデオは3時間ほど流れた。
彼女の声、顔、表情、匂い、触り心地、今は全て覚えている。いや、思い出したの方が正しいか、声、顔までは思い出せたとしても、匂いや触り心地はいつかは忘れてしまうのだろう。幸いなことにこの家には彼女のもの、匂いがありすぎる。暫くは、忘れたくても忘れられないだろう。
彼女の死から…60年以上が過ぎた、今まで1度も彼女のことを忘れたことは無いし、今の鮮明に覚えている。私もそろそろお迎えが来たみたいだ、お前は言っていたな、私が死んだら、私を忘れて恋人を作って、と、私の執着を舐めてもらったら困る、ちゃんと今まで、お前以外の女には見向きもしなかったし、お前のことを忘れた日はなかった、こんなに一途な男は、私ぐらいだろう。だから、次の人生では、一生そばにいさせてくれ…
𝑒𝑛𝑑
覚えていたあの感触
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