「そう、たさん…が、無事..で、よかった。」
何故だ、鈴芽さんが要石になりかけて居るのだろう。なぜ辺土に、どうしてだ?
「ぁ..す、ず..、めさん、?」
何故だ、彼女がなぜ。
「もう、..そう、た..さん、..は寒く..ないね、」
カチッ、と凍る音と共に鈴芽さんの声は小さくなっていく。
ポツリポツリと、鈴芽さんの瞳から涙が零れ落ち、その涙さえ凍っていき、ヘラッと鈴芽さんは俺に微笑みかけている。
自分の瞳から大粒の涙がポタポタと垂れてくのがよく伝わる。
「そう、た..さん、わた..し、出逢えて──。」
その言葉を言った瞬間、鈴芽さんは要石になり悪夢が覚めた。
全て、夢だった。辺土に居たのも、鈴芽さんが要石になった事も、全て夢だ。
「ぅ..っ!」
目を冷めた瞬間、吐き気がしく口元を抑える。時計の針は3時前に回っており、隣で寝息を立ててゆっくりと寝ている鈴芽さんがいる。吐き気は止まらず、鈴芽さんを起こさないように、トイレに駆け込む。
「ふぅ…っ、」
気分は良くならず、寒気もする。きっと彼処に居たからだろう。
洗面台の鏡に映る自分を眺め、深いため息を着く。その時、ギシッと床を踏む音がする
「草太さん…、大丈夫?」
心配そうに此方を覗き込む鈴芽さんがみえる。
「すまない、鈴芽さん..起こしてしまった、」
「ううん、大丈夫…、草太さんは大丈夫?..顔色悪いし..、まだ気分悪い?」
「あぁ、..今は落ち着いたさ、」
落ち着いたなんて、真っ赤の嘘だ気分は悪い一方で、冷や汗が頬に流れてるのが伝わる。
「さ、鈴芽さん寝よう。」
苦しい。寒い。寒い。怖い。
ずっとグルグルと頭が回りながら、鈴芽さんとベットに横になる。
草太さん、と呼ばれ鈴芽さんに身体を向けた。
「どうした、鈴芽さ───」
背中に手を回され、ぎゅっと抱きしめられる。
苦しい。寒い。
暖かい。
「これで、寒くないよね?」
顔を向け、ふわりと微笑む。
「ぅっ、..す、ずめ..さん。」
泣いているのだろうか、それとも汗なのか何もかも分からなくなってきた。
「うん、草太さん…大丈夫だよ。」
鈴芽さんを手離したくない、彼女と一緒に居たい。そんな気持ちが溢れ鈴芽さんの背中に手を伸ばし、痛くならない程強く抱きしめる。
「居なくならないでくれ..怖いんだ、..もし、あの時、君が要石になっていたら、と思うと..。」
怖いんだ、鈴芽さんが居なくなる世界が考えられない。
「だから、ね…草太さん。」
ぎゅっと、鈴芽さんは俺の腰に手を回し
「今を大切にしよ..?、草太さんの傍から私は離れるつもりないから、」
白の寝間着に、湿った感覚が伝わる。きっと鈴芽さんの涙だろうか。
「おやすみ、草太さん。」
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