テラーノベル
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セミのなく音、じりじりと照りつける太陽。
帰り道に聞こえる風鈴の音、晩御飯のそうめん。
寄り道してアイスを買って食べる女子学生───
ふとした瞬間“夏だ”と感じさせるには十分すぎることだった。
教室のドアを開ける。 今日も私が一番乗りだ。
この静かな時間に読書をするのが好きなのだけれど、夏は暑くて快適だとは言えない。
勝手にエアコンをつける訳にも行かないし…。
??? 「なーに、思い詰めた顔してんのっ」
花乃 「…莉衣奈。」
莉衣奈 「はーい、莉衣奈でーす!」
花乃 「来るの、はやいね」
莉衣奈 「今日は何となく目が覚めちゃって。早めに来たんだけど…」
花乃 「…一番乗りは、譲らないよ。」
莉衣奈 「くぅっ…花乃がこんなに来るの早いなんて、」
この子は水野 莉衣奈。 同じ部活の友達だ。
本当はバドミントン部なんて運動部、入りたくなかったけれど…
莉衣奈に入ろうと押され、押しに弱い私はまんまとはめられてしまった。
まあ、なんだかんだ楽しいからいいのだけれど。
莉衣奈 「…花乃?」
花乃 「…えっ、あ、なに?」
莉衣奈 「……なんでもない。」
花乃 「…あぁ、そう。」
なんて会話をしていると、ほかのクラスメイトも続々と教室へやってきた。
明るくて人気な莉衣奈は、やってきた子達に呼ばれ、離れていく。
…ほんと、なんで私なんかに構ってるんだか。
莉衣奈は友達も多い。明るくて可愛い、いわゆる陽キャと言うやつだ。
そんな莉衣奈が、どうして?と思うことは度々あった。
昔からの知り合いだから、という理由ならば申し訳ないなと思った。莉衣奈と話しているのは楽しいけれど…。
先生 「今日の時間割は〜…」
先生が、話し出す。 セミは今も。鳴いている。
…夏だ。
とある7月の、中旬のこと。
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