今年もやって参りましたね。三月二日で三途の日!毎年滑り込みでアウトしております。
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・ハッピー!春竜(春→→→(→→∞→)←竜)(付き合ってるかあやふや)
・行為を匂わせる発言有
・梵軸
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「三月二日……三月、二日。さん…に、さん、つ………………」
三途は桃色の髪を片手で弄りながら何やら今日の日付をぶつぶつ呟いている。ふといい答まで辿り着いたのか、手の動きが止まった。
「さんず、……三途の日。………俺の日だ」
ルンルンと頭の左上辺りに音符を複数浮かべていると錯覚してしまう程珍しく機嫌のよさそうな三途に、灰谷蘭はげぇ、と態とらしく舌を突き出した。幸せそうで最早反社の目に毒、隣に立っている弟に見せまいと自分に興味がいくよう話しかけるため口を開けば、運悪く竜胆が先に三途の存在に気付く。
「ウワッ三途機嫌良、キモいんだけど。…何アレ?人間が幸せだと思い込んだ時ってああなるんだっけ?とにかく見るモンじゃないね。あんなの見ちゃダメだよ目に毒入る」
あまりの弟の優しさと頭の弱い愛おしさに目頭が熱くなり押さえていると、竜胆は心配そうに首を傾げた。大丈夫?と声をかけてくるのが可愛らしくて血涙が溢れ出そうになる。年?と聞いて来るのは少し癪だが弟から何を言われたようと寛大な心で許せる蘭はニッコリと微笑んだ。
「竜胆~~~、兄ちゃん全然現役だから大丈夫なんだよ、心配ご無用ってヤツね。それにしてもアイツ気色悪ぃなマジでさーー、隕石衝突してアイツだけくたばればいいのに!最高だと思わない?」
「うーーん、隕石じゃ俺にまで被害出ちゃいそうだけど」
「なに、珍しく三途のこと庇ってんの?」
ふふと頬緩め笑う兄の、葡萄色に染まった瞳の奥にある真っ黒く、冗談の聞かない部分を見つめて竜胆はゆっくり言葉を選んだ。
「………まさか!自己愛だよ。」
兄が仕事で事務所を後にしたので三途と二人きりになり、竜胆は重い溜息をはあと吐いた。あの後蘭はどこまでも容易く見透かす瞳で長い間竜胆を見詰めた。さすがに30年程蘭の隣に立ち続けた竜胆でも兄の前で己を偽り続けるのは疲労の塵が積もったのか、どこか疲れたような面影をかんばせに浮かべた。
「りーんど♡疲れちゃったか?かーーあいいなァ、今日何の日だ」
「マジで疲れたから黙ってて。あと俺仮眠取るから九井に報告ヨロ。あー、お前の日?なんて、」
三途がするりと竜胆の腰を抱き寄せ、睫毛が頬にあたるかあたらないかの至近距離まで顔を近付ける。
「バカみて…、………何してんの?」
片方が顔を動かせば唇が触れ合うだろうと竜胆が首を縮める。三途はそれを見越してか、腰を抱く手を片方だけにし、もう一方の手で竜胆の項に手をやった。
「お前ホント、最高だわ。分かってんねェ俺のコト。世間では出会いの日らしいけど、俺基準じゃ俺の日だからな」
「俺が最高って?当たり前だろ教科書に載るレベルだし。あ?俺基準でもお前の日なんだけど、なんでもかんでも自分一番に考えんな間抜け自己中。お前の一番は俺だっての」
三途は一瞬黙り、クク、と喉を鳴らして笑った。この男は言われずとも自分が一番であると自覚していて、それをなんの惜しみもなく晒してくる。そこが酷く愛おしくて、堪らない。
「何笑ってんだよ、……キモい、死ね」
「人様の事をキメェ、とか。間抜けーー、とか。好きに言ってるこの威勢の良い俺好みの可愛くて馬鹿な男が。今夜他の誰でもない俺に組み敷かれてェ、嘸かし嬉しそうに啼いて悦ぶって思うと感慨深ェモンがあるなって?」
死ねと言った事には触れないのが不思議だが、三途は意地悪気に目を細めては、満足そうに口端の傷を歪めた。
「今日は俺の日。俺の言う事なーーんでも、聞いてくれるよな?」
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深い愛は浅く見える
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今年は間に合ったんじゃないでしょうか。いつもひな祭りになってしまいます。
感想、リク等頂けると嬉しいです。
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