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幸せをあなたに

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幸せをあなたに

1 - 幸せをあなたに

♥

820

2025年07月05日

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幸せをあなたに

HPBレダーヨージロー















「レダーさん、お届け物です。」


何だかデジャブを感じるな。




ーーーーー




レダーヨージロー、今日も今日とて警察業務に励んでいます。革靴の踵がすり減っているのを見れば、俺の頑張りは認めてもらえるのではないだろうか。

上官バッジが光る制服のシワを伸ばす。

制服は窮屈だが、なんだかんだ言ってファッションセンスを問われないで済むので好きだ。

一向に片付かない書類に飽きて壁掛けの時計を見れば、そろそろ大型の1件や2件入りそうな時間。

何時でも出れるようヘリを飛ばしておくのもありだ。



ヘリポートのペンキは禿げまくってるし、この警察署自体すきま風が酷い。俺より長くここにあるのだから当たり前といっちゃ当たり前だ。

ふと、そこまで考えて思い出す。

俺、今日誕生日じゃね?

スマホの電源を入れれば、ロック画面に映る日付はまさしく俺の誕生日。

忙殺されてすっかり忘れていた。

いやはや、俺も四十ですか、オジサンイジりに抗えない歳頃になっちまって。


去年は、ケインが車をプレゼントしてくれたんだよな。

淡い水色の光沢の、ドリフト車。あんまし乗らなかったけど、凄く嬉しかった。

身一つで来たから置いてきてしまっているのだけど、もし仮に戻ったら、残っているのかな。あるといいな。


ぼーっとヘリを操縦していれば、大型の通知がけたたましく入ってくる。

犯罪者は待ってはくれない。

スイッチを切り替えて、無線に声を。


『レダーヘリ現着。報告します。』




ーーーーー




結果、金持ちを含む10名を逮捕。

最近にしちゃ割と好成績な方だろう。取り逃した分も血痕から指名手配をかけられた。

今度は事件をまとめて報告書を作らなければならない。事務は嫌いだ。


積み上げられた紙の山にうんざりしていると、後輩がやって来て言った。


「レダーさん、お届け物ですよ。」

「あ、はあい。」


何だかデジャブを感じるな。

椅子から立ち上がり、固まった腰を伸ばす。

何か頼んだっけ。


玄関口には、いつもの配達員の好青年。

と、台車に乗せられたバカデカいダンボール。


「あ、お届けものですー…。」

「おお…お疲れ様です…。ありがとう…?」


台車は次回でいい、と疲れた様子で配達員は帰っていき、残されたのは俺とこのダンボール。

様子を見るにかなり重いコイツは、どうやらロスサントスから届けられたものらしい。

なんとなく、期待とも嫌な予感とも取れない複雑な感情になる。

あいつら、今度は何を。



意を決して、カッターを手に取る。

厳重に閉じられたガムテープに刃を立て、横にスライドさせる。

恐る恐る、上蓋を開ける。

そこには、見知った黒い装甲…、


(は?)

「ケインオー、起動します。」

「だあッ!!?」


ダンボールから生えてきた。868のロボが。


「店長、お誕生日おめでとうございます。今年はプレゼントが思いつかない上渡せそうもなかったので、今日と明日の家事を私がする、ということでプレゼントに替えさせて頂きますね。」

「いや…はい?ちょっと待て…ん??夢かこれ?」

「混乱しすぎですよ。全て現実です。」


レダーヨージロー、四十歳。

今年のプレゼントは、家事代行ロボットらしい。


全く情報を処理しきれていない俺をよそに、ケインはダンボールから抜け出し、立ち上がる。

ぽんぽんと服の汚れを払って、俺に向き直った。


「というわけで有給取ってください。」

「ええ………。」




ーーーーー




まんまと家に着いてきたケインは、まさしく家事代行として今夕飯を作っている。

ちなみにダンボールの中にあった緩衝材は全てロスサントスの新聞紙だったので、有難く情報源とさせていただく。後でゆっくり読もう。


「店長苦手なものとかありましたっけ。」

「んや、特には。てかいいの?向こうは忙しくないの?」

「最近は皆さん起床率が下がってきてまして。868の活動自体が安定期に入っていますね。」

「なるほどね?いやそれにしたってコッチ来なくても…。」


小さなキッチンにデカいロボがエプロン付けて立ってる。絵面がシュールだ。

休みをもぎ取って家へ帰るまでの間、ずっとバイタルチェックやら近況報告やらと付き纏い、見事に俺の不摂生を言い当ててきた。


「筋肉は付いていますが栄養が足りていません。ろくに食事を摂っていないでしょう。今晩は嫌でもちゃんとした食事をしてもらいますからね。」

「傷跡が増えましたね。ここの医療体制はどうなっているんですか?いや、店長が治療を面倒くさがっているだけですね?そんな事をして、いつか倒れても私は助けられないんですよ?」


俺は赤子か。今日で四十だぞ。

勝手知ったるように戸棚を開け、一組しかないスープ皿を取り出すケイン。

火を止め、作っていたミネストローネを皿に注ぐ。湯気と共に美味そうな匂いが立ち上り、思わず腹が鳴る。


「出来ましたよ、机空けてください。」

「ありがとう。」

「今晩のメニューはミネストローネ、クルトン入りのサラダ、チキンソテーです。パンは向こうから持ってきました。」

「すご、クオリティ高いな。」

「デザートもあります。」


味気ない部屋のど真ん中、机の上だけがパーティかのように輝く。

食べきれなかったら私が食べます、との事なので、遠慮なく好きに食わせてもらおう。


「…美味い。なんか久々にマトモな飯食った気がする。」

「お口に合うようでしたら、良かったです。」


ふふん、と得意気にファンを回すケイン。



今年の誕生日は、随分幸せだ。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

4

ユーザー

段ボールから出てくる🤖シュールw 素敵な話ありがとう✨️

ユーザー
ユーザー

ありがとうございます、優しくて良すぎて泣きました……。良いお話で私も救われた気分です、店長おめでとうございます🥳

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