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コメント
1件
うわあ……母の視点、すごく刺さりました。ルーシーを「大事な我が子」と迷い子でも変わらず愛してるところ、でも夫には「水臭い」って怒れる距離感、すごくリアルな母親だなって。騙すならもっと上手くやれよって台詞、愛情と寂しさが混ざってて泣けました。最後の甘えたい気分、ちょっとほっこりした🥀
子供の変化に気付かない親など、居るだろうか。
母である私を見る、ルーシーの目……彼女の瞳は、時折奇妙な怯えと、拭いようのない罪悪感を孕んでいた。
娘がただ者ではないことに、気付かない訳がない。
同じ頃、沸き上がる迷い子の噂。
私とも、夫のリチャードとも違う、ルーシーの顔立ち。
そんなの……気付くに決まっているでしょうに。
あの子が迷い子だということは、つまりは、身籠もった我が子は命を落としたということ……。
そのことに悲しみはあれど、ルーシーを恨む気にはなれない。
あの子だって、大事な我が子だもの。
せめて、もう少し早くに真実を知っていたなら……
生まれてくることのなかった我が子に対して、もう少し手厚く出来たのに。
「ねぇ、一つだけ教えてくれる?」
「……なんだ」
深夜の公爵邸。
久しぶりに夫と二人でグラスを傾ければ、つい、口まで軽くなってしまったみたい。
「亡くなった子供は……どうしたの?」
「……我が家の墓に埋葬してある」
「そう……」
それっきり、言葉は続かない。
ただ、時折グラスを持ち上げる音だけが響く。
「ご先祖様と一緒に、ちゃんと毎年、お参りには行けていたのね」
ぽつりと呟く。
そこに我が子が居ることを知らずとも、墓を詣でることは出来た。
これからは……違った気持ちで墓を訪れることになるだろう。
「ルーシーにも言ったけれど、私、あの子に対しては微塵も怒っていないの」
私の言葉の先を予想してか、リチャードが、グラスをテーブルに置く。
甲高い金属音が鳴り響いた。
「……でも、貴方に対しては、別だわ」
「ああ」
彼の応えは、低く短いものだった。
まるで、私にそう言われることを、覚悟していたみたい。
「せめて、もっと早くに打ち明けてくれていたら……なんて、言ったところで仕方ないんでしょうけど」
何を口にしようとも、結局同じような言葉しか零れてこなくて、ぐいとグラスを煽る。
甘いはずのワインが、やけに渋く感じられる。
「水臭いじゃない……馬鹿」
「ああ、そうだな……」
せめて、言い訳でも何でもしてくれたらいいのに。
この人ったら、私に言われるがままなんですもの。
「馬鹿よ。貴方ってば、本当に……」
ぽろりと、頬を何かが伝う。
文句を言っているのは、私の方なのに。
ずっと騙されていたのも、内緒にされていたのも、私の方なのに。
どうして、貴方の方が辛そうな顔をしているの?
「すまない、ウィレミナ……」
陛下達を上手く言いくるめた時みたいに、ご神託でも何でも言い訳に使ってくれれば良いのに。
リチャードの太い指が、私の頬を撫でる。
「貴方もルーシーも、嘘が下手なんだから……騙すなら、もっと上手くやりなさいよ」
騙すなら、相手を傷付けるだけの覚悟をもって騙しなさいよ……。
本当、変なところで詰めが甘いというか、優しいんだから。
死産の直後、悲しみのあまりに私は生きる希望を失っていたらしい。
落ち着いた今ならば分かる。
死産を隠していたのは、私の為でもあったんだ……って。
可愛いルーシー。
心優しいルーシー。
私を長年騙し続けてきたんだと、自らを責め続けていた、優しい我が子。
どうか、私のことで傷付かないで。
貴女は何も悪くないのだから。
ああ、ただ──
リチャードに対しては、もう少しだけ、素直になれなくても良いわよね?
久しぶりに、少しだけ……夫に甘えたい気分だった。