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朝から様子がおかしいのは、鳴海の目にはっきり見えてた。保科はいつも通り軽口叩いて動いてるくせに、動きが一拍遅い。呼吸も浅いし、額にうっすら汗。無理してる時の癖、そのまんま。
「……お前、熱あるだろ 」
控室で装備を下ろした瞬間、鳴海がそう言うと、保科は一瞬だけ言葉に詰まった。
「いや? ちょい寝不足なだけで――」
「嘘つけ」
鳴海は間髪入れずに距離を詰めて、保科の額に手を当てる。
熱い。
「……ほらな。自覚ないのが一番タチ悪い」
保科は苦笑いしようとして、失敗したみたいに眉を寄せた。
「任務中やし……隊長に言うほどでも」
「ある」
即答だった。
鳴海は保科の手首を掴んで、強引に椅子に座らせる。
「お前が倒れたら、俺が一番困る」
低い声でそう言われて、保科は何も言い返せなくなる。
「……ほんま、鳴海は強引やな」
「今に始まったことじゃないだろ」
鳴海は水を渡して、背もたれにクッションを押し当ててやる。
その手つきがやけに慣れてて、優しいのが余計に腹立たしい。
「目、閉じろ。少し休め」
「子ども扱いせんといて」
そう言いながらも、保科のまぶたは素直に落ちる。
鳴海はそれを見て、小さく舌打ちした。
「……ほんま、守られる側のくせに無茶しすぎだ」
しばらくして、保科が体を傾けた瞬間、鳴海は迷わず肩を貸す。
そのまま保科の額が、鳴海の肩に触れた。
一瞬、保科が驚いたように目を開ける。
「……ええん?」
「黙って寝ろ。今は俺が支える」
そう言うと、保科は観念したみたいに力を抜いた。
呼吸が少しずつ落ち着いていくのを、鳴海はじっと感じ取る。
「……ありがと」
掠れた声で言われて、鳴海は少しだけ表情を緩めた。
「治ったら倍で働けよ」
「鬼やなぁ……」
そう返しながらも、保科の手は無意識に鳴海の服を掴んでいた。
鳴海はそれを振り払わず、ただ黙ってそこに居続ける。
強い方が、支える側だなんて決まってない。
今はただ、そばにいるのが自分の役目だと、鳴海は思ってた。