*後半駆け足
*ネス黒 カイ潔アリ
*誤字脱字
すっと馴染んで溶けていく感覚。前にも一度ここで誰かに出会ったような、運命が変わった気がする。
黒名蘭世は周りから距離を置かれていた。それは性格でも素行でもなんでも無い、ただ自分の歯の形のせいだった。歯一本一本がギザギザサメのように尖っており、少し歯並びの悪く見える。歯を見せていない当初は人懐っこい性格もあり、関係は良好だったもの一度見せてしまえば噂というのは広がってしまうもの。優しく接してくれた者もいたが次第に離れ、いつしかひとりぼっちになっていた。ギザ歯如きでと思うかもしれないが、言ってしまえばこれは奇形児と同じだ。周り違う点を見つければ、人間はあいつは変だ。怖い。など勝手に妄想して恐れ、離れていく。黒名自身は幼稚園の頃からこの繰り返しを体感していたためんれていたのだが、それはそれとして困ってしまうことがある。
黒名蘭世はサッカーが好きだ。しかしサッカーをするのには人が足りない。そんなことを高校に入ってからの考えていたところにある企画が舞い降りた。
「ブルーロック」
何処か懐かしさを感じている自分に困惑しつつも、ここなら自分は存分にサッカーができるのでは無いか。少しの期待と戸惑いを残して、自身の母親へと報告をしに黒名は階段を駆け降りた。
二週間の休暇が終わり、ブルーロックは新しいフェーズに入ろうとしていた。絵心からの説明を受けた後、自身の所属する国を選ぶためにスマホを確認する。その時、黒名に1人の男が声をかけた。
「黒名!黒名はどこ行くんだ?」
「潔」
彼は現在ブルーロックでNo.1の実力を持つ潔世一だ。超越視界という目の使い方に慣れており、サッカーIQも抜群に飛び出ている。そしてそれを実現することができる肉体も持っているためここで彼に敵うものはいない。そんな彼だが、何故か俺にチームを組もうと提案してきたり、よくご飯やトレーニングなどに誘ってくれる。理由を聞いてみたがやんわりとはぐらかされてしまった。人が近寄らない一人ぼっちだった俺に話しかけてくれたことは嬉しいし、サッカーの技術も確かに上がったけど、たまに潔が変なことを聞いてきたり話したりしていたのが妙に引っかかる。
休暇前もスマホで誰かと話しており、距離が離れていて聞こえづらかったのだが確か外国の言葉で喋っていた。英語っぽい綴りではなかった為アメリカとかではないのだろうが何故英語ではない他の言語を喋れているのか謎だった。聞いたところ外国への渡航経験は無い様だし、外人の友達がいたようにも思えない。故に黒名は内心潔に対して不信感を抱いていた。
「黒名?」
「えっな、なんだ?」
「いや、どこの国選ぶのかって」
「あぁ….俺は…少し迷ってる」
「そっか。ちなみに俺はドイツにしたぞ」
「じゃぁ俺もドイツに行く」
そう答えると潔は複雑そうなそれでいて少し嬉しそうな表情をしていた。その反応に首を傾げていると
「後悔、しないか?」
と言われた。
「自分の行きたい場所のことか?元々ドイツも候補に入ってたし行くなら潔のいるところの方が成長しやすいだろ」
「うーん、ちょっと違うけど…まぁ黒名がいいならいっか」
「どういうことだ?」
「気にしないでくれなんでもないから」
不完全燃焼だが仕方ない。余り深追い美味しすぎても潔を困らせるだけだ。
追求するのをやめ、表示されているドイツの国旗を選んだと同時に潔はそそくさと俺から去っていった。
ドイツの強豪、世界一のストライカーが所属するバスタードミュンヘン。ドイツを選択した俺らブルーロックはそのチームからの指導を受けることになり、世界一からの直接指導が受けられることと世界を体感できることに歓喜していた。潔も同じ気持ちだろうと視線を向けると目に飛び込んできたのは死んだ魚のような目をした無表情の潔だった。トッププレイヤーのノアがいるというのに無表情である。誰よりもサッカーを愛している潔がだ。思わず思考を停止していると絵心の説明が終わったようで場所移動を促された。移動している合間に潔のさっきのことを聞こうとしたが、そそくさと先を言ってしまい話す間もなく進んでしまった。
部屋の中へ入るとだだっ広い空間が広がっており、その中に浮かぶ足場やボールの数々が設置されていた。全員来たことを確認したのかノエルノアが何かよく分からない言語で喋るとそのままどこかへ消えたと同時に、空中に大きなカウントダウンが表示された。
なんだなんだと周りが騒いでいると不意に「ゴールまで死ぬ気で走れ」という声が聞こえてきた。声の主は潔であり、なんかめちゃくちゃやる気に満ち溢れていた。やる気と言っても気合いを入れる方では無い。殺る方の殺る気である。殺気がこっちまで被弾してきており、別の意味でみんな緊張していた。
カウントダウンが四秒前になり、みんな慌てて位置に着くと緊張と困惑が混ざり、嵐の前の静けさのような静寂が訪れた。
カウントが0になるとSTARTの文字が表示され、皆一斉に飛び出してった。
ひたすら前に進んでいく、中間に差し掛かったところで別の人物のゴールの表示が映し出された。一位ミヒャエルカイザー二位潔世一三位國神蓮介。まさかのブルロ勢が2人も乗員食い込んでいるのにゃ周りも驚きを隠せ焦りが積もっていく。パッと見て自分の順位は9、十位そこらだろうか。置いていかれる不安となけたくない気持ちでどんどん速度は加速していった。1人、また1人と抜いていく。最後のボールはど真ん中に当て、六位でもゴールとなった。
息を整えつつ周りを見渡すと潔とミヒャエルカイザーが何やら話し合っている姿が見えた。じっと見ていると視線に気付いたのか潔がこちらに振り返り小走りで駆け寄ってきた。
「お疲れ黒名」
「お疲れ。潔二位。すごいすごい」
「あははありがとな」
「おいおいコバンザメは六位か。クソ弱もいいところだな」
「カイザー」
「あいあい」
「2人は知り合いなのか?」
「あーまぁ、そんなもん」
「そうかそうか」
「….あ、のさ黒名」
「なんだ?」
「会って欲しい奴がいるんだよ」
「会って欲しいやつ?俺にか?」
「う、ん」
「わかった。今いるのか?」
「いるんだけど….カイザー」
「わかってる」
するとミヒャエルカイザーは潔から離れ、すでにゴール済みの人が集まっている所へ行った。
「黒名」
「どうした」
「これから会ってもらうやつさ、黒名のこと知ってるんだよ」
「うん」
「もしさ、変なことしても許してやってほしい」
「…?わかった」
潔は少し苦しそうな悲しそうな表情で「ありがとう」と言うとすぐ顔を逸らしてしまった。
「世一」
「ん、ありがとカイザー」
「紹介するよ黒名バスタードミュンヘンMF、アレクシスネスだ」
「_____初めまして、黒名蘭世」
隠しきれていない苦しい表情を浮かべたこいつを知っている気がする。この声この姿この瞳。
時がとまった気がした。何か大事なことがあった。笑って世話焼いて優しかったあいつ。忘れちゃいけなかった。怖くて泣いてた時に決して明るくはないけど、それでも暗い道を手を繋いで歩いてくれた大切な存在。
反射的に抱きついていた。その暖かさにもう一度触れたかった。もう一度優しい声で撫でて欲しかった。初対面の相手になんてことをと思うかもしれない。引かれてしまうかもしれない。でも、それでも今再び会えたことが奇跡で、嬉しくてその後のことなんてどうでも良かったんだ。
「____え?ちょっと蘭「アレク、アレクぅ!!」!!?」
「ごめん、置いていってごめん。寂しい想いさせてごめん苦しませてごめん好き、大好きだアレク」
「ら、んぜ」
「____ずっと、後悔していたんですっ。貴方を、1人にさせなければ、守れていたかもしれないのに、僕は、僕はっ!!」
一文字一文字が重くて辛いと感じさせられる。涙で溢れて前が見えなくても、それでも思いだけは伝えておきたいんだ。
「アレクのせいじゃない」
「でも僕はっ!!!」
「アレク」
「アレク、アレクありがとう。俺を愛してくれてありがとう。幸せだったんだ。アレクと過ごした日々がずっと頭に残ってる。いいんだ。もう。俺は死んだ。前の黒名蘭世は死んだ。だから今度は俺を見て欲しい」
「アレク、アレクシスネス。また、俺の恋人になってくれないか?」
「蘭世________えぇ、今度こそは最後まで貴方を離しません」
「私からも、恋人になってくれますか、蘭世」
「_____あぁ、もちろんだ!!!!」
拍手喝采。と言うわけではないが、少なくとも世一とカイザーは涙ぐんでいる。周りは突然のお祝いムードについていけず、ノアも出るタイミングか掴めずほぼ全員が棒立ち状態となっていた。
絵心に関してはもうモニターを見てすらいなかった。
まぁ、なんだかんだでハッピーエンドだからいいでしょう
「…死んだ後、どうなった」
「….ネスは自殺俺は病死」
「そうか….」
「俺はまだお前のこと許してないからな」
「わかってる」
「本当にわかってんのかよ」
「….」
「….お前のいない人生が空虚で一番寂しかった」
「…すまん」
「____だぁもう謝るぐらいなら今の俺を見ろ。ミヒャエルカイザー!!」
「次勝手に死ぬのは許さない。申し訳ないと思うならそのことを忘れるぐらい目一杯俺を愛せ」
「分かったか?カイザー」
「______ja!」
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