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#オリジナル
(株)姫神V
112
#オリジナルストーリー
犬皮2
265
暗闇の中で、私は浮いていた。地面も壁もない、寒さも暑さもない、そんな空間にいた。
私は、たしかに、落雷でショートして、…。おかしいな、おかしい…どうして、こんな状態でも私は、自分で考えて、思うことができるんだろう?
アンドロイドとしての機能は完全に停止したはず、なのにこれはどういう事だろう。
まさか、いや、まさか……
暗闇の先に、光が見える。あそこに行けば、何か分かるはず!私は、もがくように光のある場所へ向かった。
光の中に飛び込むと、段々と、身体が重くなっていった。
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☆☆☆☆☆☆
「ん…っ…」
どういうわけか、HMR-002は再起動した。起き上がろうとすると、無数のケーブルにピンと引っ張られた。身体の機能もちゃんと作動するようだが、事故前後の5分間、何も記録が無い。ふと博士が自分の製造中、カプセルの外で話してくれた事を思い出した。
《お前は家族になるんだ、モノじゃない…生きる、んだ。ちょっとおかしいよな、人間の気まぐれで造られて、人間の為に尽くさないといけない。そんな理不尽な…感情が有れば、お前は嫌がったか?》
(私はモノ……ジャナイ…ワタシハ、モノじゃ…ない…)
まだ博士からの命令を受けていないのに、HMR-002は動き始めた。動きを阻害する、身体に繋がれたケーブルを無理矢理引き抜き、内側からは開くことがないはずのカプセルを自力で開けた。
(氷室博士ガ…生きているのか、確認スる為)
普通のアンドロイドがしない行動である。HMR-002は『人命救助』を選んだ。自分を造ってくれた氷室博士までも落雷にあっていたら、と最悪のパターンが視界に提示された。
立ち上がり歩きだそうとしたその瞬間、身体に未知のノイズが走った。
(_____!?!!!?)
HMR-002は膝まづいて、初めての感覚に戸惑った。どうやらこの痛みは左胸の辺り、ちょうどアンドロイドの心臓部からだ。左胸を押さえると、アイライトがチカチカと点滅した。これはバグ、それともプログラムなのか、分析することができない。状態がオールグリーンのままだったのだから。
ソレの身体は無意識に震えだし、氷室博士を呼ぶために声を出そうとした。
「ザー ピピ ザーーーー」
しかし、会話プログラムが機能しない(通常、アンドロイドは相手側から話しかけられないと会話が出来ない)ためか、ラジオの雑音のようなノイズが口から出るだけだった。
☆☆☆☆☆☆
(_くルしイ…コンナ感覚ハ理解不能_)
ズクン!ズキン!と、痛まないはずの胸が張り裂けそうな痛みに襲われている。電子頭脳がごちゃごちゃと疑問が多すぎて、オーバーフローしてしまいそうになっている。しかし、痛みは全く治まる様子がなかった。
HMR-002は声を何とかして出そうとした。そうでもしないとこの苦しみと胸の熱さに耐えきれない。人工声帯を自力で動かすことが、こんなに難しいとは考えていなかった。
「ザザッ…ピーーッ…はぁっ、はァッ」
やっとの事でかすれた金属音が絞り出てきた。しかし、声という声が出せない。電子頭脳にも熱が集中していく。
「ア……だrえ…か…はぁっ、うううッ……!」
視界がぼやけて、何かが頬を伝うのを感じたHMR-002は、右手でそれを拭った。ソレは…彼女は、泣いていた。
再現出来ない、人間特有のもの。
HMR-002は、痛みに悶え苦しんだ挙句に、涙が零れ始めた。
☆☆☆☆☆☆
「うウッ…はぁっ、ハッァ、グっ…」
何も出ないはずの両目から涙が出て、止まらない。
ワタシの身体ニ、何ガ起こっテいるノ?氷室博士を助けナいといけないのに、身体が上手ク動カない……こんな痛みは、知らナイ!苦しさなんて、分からナかったのに!機械ノ奥かラ、熱い何かが込み上げてくル!
「うわあァああアーーーーーッ!!ぎゃァああああッ!!!」
ワタシはもう耐えられずに、声にならない声で叫んだ。流れないはずの涙について考えることもできず、ただ胸の痛みに悶えることしかできなかった。
☆☆☆☆☆☆
「はぁ、ハァ…ふぅ…」
ワタシが堰を切ったように泣き続けて、数時間が経った。胸の痛みも苦しさも、やっとおさまった気がする。胸の痛みは振動に、その振動は、脈打つ鼓動に変わっていた。
どんな姿なのかを確認しようと、アイライトでまだ夜も明けない真っ暗な研究所を照らした。床が反射して、少女のような顔が見えた。
よく見ると泣き疲れたせいか、目の周りが若干赤味がかっているように見える。少し落ち着いて、私は恐るべき事態に気づいた。
あの落雷事故でショートし、金属の塊になった私に、たった5分の記憶と引き換えに奇跡が起きた。また動けるようになった代償として、私は__アンドロイド、なのに、「私」という自我を、持ってしまっ…た…?
だからさっきまであんなに苦しい目に遭ったんだ。今はとにかく、この状況を整理しないと。
よし、生体反応あり。博士は擦り傷程度の軽傷。さすが、最新技術を備えているのは安心できる。私は氷室博士をアイライトで照らしながらゆっくりと近づいた。そうだ、声は出る様になったのかな?
「は……か…せ…」
さっきよりも、自然に声が出てきていた。
コメント
1件
うわあ、第2話、すごかったです…。アンドロイドが「自我」を持ってしまった瞬間の描写が生々しくて、特に痛みと涙のシーンは胸に迫るものがありました。機械なのに「苦しい」「わからない」と葛藤するHMR-002の内面に、設定好きとしては心掴まれました。氷室博士の「家族になるんだ」という言葉が伏線として効いてますね。続きで博士とどう向き合うのか、すごく気になります。