mcfw中心のファンタジーパロ
インスピレーションはタロットカードから少し
捏造に捏造を重ねてます。
※ nmmn注意
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神の御前において、愛は時に業となり、試練が与えられるであろう。
さあ、見よ。深淵で悪魔が笑っている。
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この世界を創造したのは神である。
神は我々を創り、感情を与えて、遥か上から我等の行く末を観察している。
欲望のままに生きる人間を神は楽しんでおられる。争うことも、憎しみ合うことも、全てをただ静観しているだけ。
そう、この世界は神の箱庭なのだ。
神によって作られ、神によって支配される。
それがこの世の常識であり、信仰されている考えである。
聖典をパタンと閉じる音が聖堂に響く。
シャンデリアから差し込む月明かりが青年の銀糸を輝かせている。
俯いている彼の顔は、垂れた横髪に隠されていて見ることは叶わない。
壮大で静寂な空間で、ただ独り。
「バカバカし…」
ぽつり、とその音が静かなチャペルの中にはっきりと響く。
顔を上げた青年の表情は無であった。
バイオレットの瞳に光は宿しておらず、頬が動くこともなければ、口角が上がることもない。
ただ、淡々と。
それはまるで感情が抜け落ちた人形のようであった。
「神なんて居るはずないのになぁ」
哀れみと、怒り。嘲笑の混じった声は酷く渇いていた。
この青年、不破湊は司祭長であった。
司祭長は神の愛し子と呼ばれ、世界のシステムによって選ばれた者のこと。
けれど、その認識が間違っている事を知る人は殆ど居ない。
先ずそもそもの話、この世界に「神」など存在していない。
神への絶対信仰。これは治世を担う教団の陰謀によるものなのだ。
彼らの︎︎「駒︎︎」である、不破を通して発言すれば全てが神によるご神託だと人々は喜びに湧き上がり、救われたと嬉し涙を流す。
全てが仕組まれたことだとも知らずに。
「…はぁ、帰ろ」
ひとつため息を吐いて、不破は座っていた椅子から立ち上がる。
こんな場所、居たって良い事なんてありやしない。
聖堂の外に出ればひんやりとした空気が肌を撫でた。
月が、浮かんでいる。
不破に幼い頃の記憶は無い。
気付けばこの組織に居て、 神に愛された者だと真っ黒な聖職者の服を着せられ、この教会に囚われている。
外の世界は知らないし、出ることも無かった。
人々の前に姿を表すことのない自分の存在が本当に有るのか不安になって何度も何度も鏡を食い入るように見つめては自分の存在を確かめた。
この広い世界でぽつん、と一人でいるような錯覚に陥り、不安な夜を過ごしたこともあった。
そんな人生を歩んできた不破湊は愛を知らない。
誰かを愛したこともないし、誰かに愛されたこともない。
ずっと、ただ無感動に生きていた。
呼吸をするだけの毎日。死んでいると言われてもおかしくないような日々の中で、まだ生きている。 そう思い続けること、それだけが心の支えだった。
他ならぬ、生きていたい、それが誰かの為に人生を消費されている不破の微かな願望だ。
「あれ、ずは?」
教会内の奥地に用意された部屋に戻れば、勝手に部屋に上がって不破のベッドに我が物顔で寝転んでいるその人。
おい、そこ俺のベッドやぞ。
ずは、いや葛葉は不破の元に時々現れる。
何でも上層部からの命令で様子を見に来ているらしい。悪く言えば監視と言ったところか。
けれど、ノリが合った不破と葛葉の仲は直ぐに良くなり、今は気軽にあだ名で呼び合う仲だ。
不破にとって初めて出来た友達でもある。
のそっと起き上がった彼のガーネットが想定外の訪問者に驚いている不破を視界に捉えた。
「ふわっち遅ぇぞ。どこ行ってたんだよ」
「…ちょっと寝付けなくて」
「そ。 …んで、最近︎︎︎︎"︎︎力︎︎"︎︎はどんな感じ?」
何をしていたかを適当に流せば、本題に入ったのか、気だるそうにしていた瞳が真剣さを帯びて、鋭く細められる。
葛葉の纏う雰囲気が明らかに先程とは違う。
こういうところはふざけないんだよな、と肩を竦めて不破は笑う。
「まあ変わらないかなぁ。相変わらず制御出来へんし、最近は大したことは見えん」
「ん、りょーかい」
分かっていたかのような反応をする葛葉の横に座る。ベッド全体を占領するように伸びていた足を払い除けて。
葛葉の言う「力」とは、不破の持つ特殊な能力のことだ。
不破には予知能力がある。
簡潔に言えば、未来に起こることが見れる力。
例えば、明日の天気は雨だとかそんな小さなことや地震が起こるといった大きなことも。
しかし、自分で制御することは難しく、日時もタイミングもバラバラで、連日あることもあれば、1ヶ月来ない時もある。
何年後の未来を見たい、など到底出来やしない。なんとも不便な能力である。
まあ、この能力に利用価値があるから教団は俺をここで飼い殺してるんやろうけど。
「んで本題は?これで全部じゃないやろ?」
「おっ、分かってるねぇ〜!」
正解とばかりに ひゅう、と口笛を吹く葛葉。
こちらを射抜くような視線は変わらず、ぎらりと赤い瞳が月明かりを反射する。
「なあ、ふわっち。 虚空教って聞いたことあるか?」
「こく…、え、なに?」
頭の上に?を浮かべる不破に葛葉はため息を吐いた。呆れたという表情にイラッときて、早くしろ、と葛葉の体を肘で小突く。
「お前の世間知らずさには感心するわ。まあ、しょうがないとは思うけどー?」
「あのな、虚空教ってのは最近勢力を伸ばして来ているカルト宗教だ」
葛葉によると、その虚空教の教えは「この世の創生は、虚空から始まっている。すなわち虚空こそ万物の真祖であり、母なる虚空に立ち帰ることこそが、自らの心を強く在らせる方法である」というもの。
つまり、葛葉が言いたいのは教団の敵だということだろう。
「でも俺関係ないよな?」
不破にここまで重要な情報が回ってくることは今まで無かったはずだ。
なんせ、アイツらの操り人形である不破は知らなくて良いことなのだから。
なのにどうして、態々葛葉は伝えに来たのだろうか。
純粋な疑問をぶつけると葛葉は歯切れ悪く言葉を紡ぐ。
「あー、まあ、全面戦争になった時とかお前知らないと困るだろ?」
不破は目を見開いた。
葛葉の一存で伝えに来た、というのだ。
戦争の可能性が出てくるほど、虚空教という集団は脅威なのだろうか。
「だから、これ。今日はこれを渡しに来た」
カチャという音を立てて不破の手の上にそれは置かれた。
黒いボディと鈍い光を放つそれはずっしりとした重みを感じさせる。
「銃…?」
くるくると色んな角度から銃を観察する不破。
その銃を握る手に葛葉は上から手を重ねる。
そして不思議そうにしている不破を置いて、銃口を自分の方に向ける。
何して…、不破が言葉を発するより前に葛葉は不破の心臓のある位置に、長い爪をつう、と滑らせる。
「護身用だよ。いざとなった時はそれで自分を守れ。んで、」
バン、葛葉は心臓目掛けて手で銃を撃つ動作をする。
分かっているのか分かっていないのか、ポカンとして何も言わない不破に葛葉はグイッと顔を近付ける。
その目は 獣のように瞳孔は見開かれていて、無意識に不破の喉が鳴った。
「敵は殺せ。死にたくなけりゃね」
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死にたくなければ殺せ、か…。
不破は葛葉が窓から飛び出して行くのを見守ってからぽすん、とベッドの上にダイブする。
枕に顔を埋めるようにして先程の葛葉の言葉を思い出していた。
そもそも己に人を殺れるのだろうか。
銃すらまともに握ったことのない、貧相なこの体で、心で。
「あ゛ー、また寝れへんくなったあ」
目をつぶっても訪れない睡魔に痺れを切らす。
夜風に当たろうとベッドの上に捨て置いてあった銃をポケットにしまって部屋を出た。
静かな回廊。
不破の靴音だけがコツンコツン、と響き渡る。
柱に手を添えて、暗闇の中に白く輝く月を見上げた その時。
ひとつの旋風が、ふわりと肌を撫でた。
「っえ…」
そして、次の瞬間には背後に気配。
誰か、いる。
緊張で喉が渇いて上手く言葉が出ない。
ポケットに手を突っ込んで銃を素早く取り出しながら、後ろを振り向く。
「おや、聖職者が銃とは。
︎︎ ︎︎ ︎︎︎︎ ︎︎あははっ教団の奴らは実に愚かだ」
居たのは、一人の青年。
雪のように白いフードに隠れていて顔は良く見えないが、黒い服にワンポイントの藤の花。そして、胸元には逆三角の中に一本の線。
間違いない。さっき葛葉に教えてもらった「虚空教のマーク」だ。
「虚空教の教祖であるこの僕にそれを向けたこと。その意味が貴方には分かりますか?」
「教祖…!?」
「まあ、無理もありません。ですが、間違いなくこの僕、剣持刀也が虚空教の先導者です」
剣持刀也。目の前の青年はフードを頭から取り払いながら言った。
フードの下から現れたのは、夜闇に輝くペリドットの瞳。そして、それとは対照的に闇に紛れるような濃い紫の髪。
「おや…」
こちらを見定めるような視線に
じり、と不破は一歩後ろに下がる。
「ああ、何たる幸運か。
︎︎ ︎︎ ︎︎︎︎ ︎︎母なる虚空よ、感謝します」
「…貴方、司祭長ですね」
「っ、だったら何や」
銃を構えて照準を合わせているにも関わず、ズカズカと歩み寄ってくる剣持に不破はたじろぐ。
そして、目の前まで来た彼は不破の銃を上から押さえ込んで下に向けさせる。
抵抗する力は無かった。
ただ、自分の人生は結局、教団に巻き込まれてこんなところで死ぬような惨めなものだったのか。
…そんなの、
「ぃ、…だ」
ああ嫌だ。
アイツらに利用されて死ぬなんてことは、絶対に。
「何か言いましたか?」
「いやだっ!もうこんな人生…!
っ、俺だって…おれだって、っ自由に生きたい」
多分、俺は目の前の青年が羨ましいのだろう。自分の意見を好きに言って自由に生きている、そんな彼が。
不破は自分の足で街を歩いたり、誰かと笑いあったり、露店で買い物したり。
普通の人として、当たり前の日常を送りたかった。ずっと、羨ましかった。
…泣きそうだ。忘れたと思っていた久しぶりの鼻がつん、とする感覚。
なんとか泣くまいと目元に力を入れ、唇を噛み締める。
面食らった様子の青年に映るのは自分の滑稽な顔だろう。
「その願い、僕が叶えてあげましょうか?」
気が変わりましたと言う剣持による提案に、目を白黒させる。
そんな不破を見て、剣持は口角を上げて不敵に笑う。
「虚空は全てを歓迎します。
︎︎ ︎︎ ︎︎︎︎ ︎︎さあ、手を取るか取らないかは貴方の自由です」
どうしますか、と問われる。
一瞬の逡巡の後、不破の答えはいとも簡単に決まった。
この人に救われたい、その一心で剣持が差し出した手に己の手を重ねた。
「それでいいのです。哀れな子羊よ」
そして、青年がフードを不破ごと覆うように翻した次の瞬間、そこにはもう誰も居なかった。
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こういうのが好きです…😭😭💖💖
knmcに救われるfwが書きたくて、
精神的に不安定な推しが好き。
誰かの癖に刺されば幸いです。
続きありますモチベーション下さい(小声)
コメント
2件
ストーリーが好きすぎる…続き楽しみです!!🫶
こういうシチュめっちゃ大好きです(*´˘`*)♡!!!!助かりますー!!