【竜蘭】
梵竜×13蘭(梵)
息抜きです。
○兄が行方不明になって絶望していた竜胆の元に幼い頃の兄が現れる話。
・病み
・虐待表現
・レイプ(描写なし)
・倫理観欠如
・キャラ崩壊
・捏造過多
・誤字脱字
・自己満
*途中からセリフのみの文が増えます。
*蘭(13)が弱々しいです。
*後半は竜胆(29)が弱々しくなってます。
*竜胆(29)が蘭(13)に依存してます。
*後半、蘭(13)に縋る竜胆がいます。
*刺青入れる前という設定です。(13蘭のみ)
その他何でも大丈夫な方のみご覧下さい🙇♂️
↓こういう話が書きたかったってやつです。
特に何か理由があったわけじゃない。
その日は行方不明になった兄の事が心配でまともに寝れない日が続いていたので頭が回っていなかった。
そのせいか、普段ならば気に留めもしないであろう場所が何故か気になり、何かに取り憑かれたかのように奥へと進んで行った。
そこで竜胆が目にしたものは幼き頃の兄だった。
しかし、記憶の中の兄との大きな違いがあった。
どうやら兄は昔、両親から虐待を受けていたらしい。
他にも竜胆の知らない哀しい事実がたくさん明らかになって____
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突如行方不明になった兄。
任務へ向かってからの出来事なのでもしかしたら死んでしまったのかもしれない。
部下に捜索命令を出したが、兄に関する情報はただ1つしか掴めなかった。
任務先から遠く離れた場所。
廃墟となったビルが並ぶ空き地に兄の所有物と見られる指輪が1つ。
その報告を聞いて梵天の幹部は皆、兄の生存確率はほぼゼロだと口にして諦めていたが、どうしても俺は諦めきれずにいた。
きっとどこかで生きている。
俺を置いて行くはずがない。
大丈夫。死ぬはずない。
そんな考えを巡らせていれば夜はあっという間に過ぎていき、気付けば朝日が昇っている。
それが5日程続き、過度な睡眠不足に陥っている竜胆は仕事もミスの連続だった。
三途と九井にグチグチと小言を言われるがそんなことどうでもいい。
兄は今どこにいるのだろうか。
ちゃんと食べているだろうか。
怪我してないだろうか。
寝ても覚めても兄のことばかり考えていて、周りのことなんて見えていない。
そんな竜胆が家路を辿っている時のことだ。
ふと、何も無い薄暗いだけの路地裏が目に留まった。
夜の店の灯りが照らす街の中で、唯一そこだけ暗い場所。
そこに竜胆は、吸い込まれるように足を踏み入れて行った。
中に入れば特別変わったことは無い。
ただ他の路地裏に比べれば少し、怪しいというか、奇妙というか、なんとも言えない不気味さがあった。
どうやら中は幾つか曲がり角があるようで、かなり奥まで広がっているようだった。
竜胆は何も考えずに奥へ奥へと足を進めて行く。
まるでそれは何かに取り憑かれているようだ。
しばらく歩いた後、竜胆は我に返り自分の行動にようやく疑問を抱いた。
「…何してんだろ。帰ろ…」
そう呟き、来た道を戻ろうと足を止めた時、カサっと音が聞こえた。
普段ならば聞こえもしないであろう音が聞こえたのはやはり、隣に兄がいないせいだろうか。
スルーしても良かったのだが、何故か音の正体を知りたくて音がした方へ近付いた。
転がっているゴミや薄汚れたダンボール。落書きされた壁にシミのついた床。
汚ぇなと思いながら音の正体を探っていると、竜胆は信じられないものを目にしてしまった。
「は…?」
やはり疲れが溜まっているのだろう。
遂に幻覚までも見えるようになってしまった。
これは幻覚だ。そうでなければおかしい。
何故ならば、竜胆が目にしたものは、小汚い床で寝息も立てずに眠っている幼かった頃の兄の姿なのだから。
「どういうこと…?兄ちゃん…?」
そうだ。これは兄ではなく、兄に似ているだけの知らない子供かもしれない。
だって今行方不明になっている竜胆の兄は竜胆の年上で、背だって竜胆より十数センチ高いし、髪の色だって違う。
この子供は短髪ではなく、金色の長い髪を三つ編みに結んでいる。
…おかしい。兄の昔の姿と瓜二つだ。いや、瞳の色はどうだろうか。瞳の色さえも兄と同じであれば、兄では無いと言い切ることがなかなかに難しくなってしまうが。
およそ13歳にして金髪のさらさらロングヘアで、男にしては珍しい三つ編みをしている紫色の瞳を持った子供なんてそう多くない。
だから瞳の色を見て、同じだったなら三途達に話をして色々と考えよう。
今の竜胆ではこれ以上思考を巡らせることは不可能だった。
しかし、兄であろうとなかろうと何故こんな場所で眠っているのだろうか。
路地裏に入ってすぐならともかく、ここは薄気味悪い路地裏のかなり奥の奥だ。
この状況を見れば大体の人間は真っ先に虐待を思い浮かべるだろうが、単に家出の可能性もゼロではない。
そう思ったが、今はとにかくこの子供の正体が兄なのかどうかをハッキリさせなければならない。
仮にこの子供が兄だったとしたら竜胆の歳上である兄はどうなってしまったのだろう。
そもそもその場合はこの子供を兄と呼んでいいのか?
考えていても埒が明かない。
まず この子供を起こして話を聞くしかない。
「に…えっと…」
なんて呼ぶべきなのだろうか。
「兄ちゃん」といつも通りに呼んで全く知らない他所の子供だったら俺が完全に変人扱いされてしまうし、もし万が一にも警察を呼ばれたりなんてしたら全てがおしまいだ。
だからといって「蘭」と呼んでも同じだろう。
仮に本当に兄だったとしても…
「あーめんどくせぇ!!おい、起きろ!!」
竜胆は考えるのをやめた。
理由はただ1つ。頭が回らないからだ。
それに、どんなに考えたって行動してみなければ分からないことの方が確実に多い。
ならばこんな面倒なことはやめて、特定の名前では呼ばずに起こしてしまえばいい。
これが今の竜胆にできる精一杯だった。
「おら、起きろって!ンな汚ぇトコで寝てんじゃねぇよ。汚れちまうだろ。」
もう子供の服は数ヶ所汚れていたが、これ以上汚れてしまってはあまりに可哀想だろう。
「おい…いい加減起きろって…」
こんなに声をかけても起きないのは間違いなく兄だと思うのだが。
自身が寝れていないのですやすやと眠っている子供がだんだんと憎らしく見えてきてしまう。
「早く起きてよ…なぁ、兄ちゃん」
あ、やべ。
咄嗟に「兄ちゃん」と呼んでしまったが…
「んぁ…」
何故こんなタイミングで目を覚ましてしまうのだろうか…
聞こえていないだろうからきっと大丈夫だとは思うけれど。
「や、やっと起きたのかよ。」
「…誰…?」
ようやく開いた瞳の色は兄と同じ綺麗な紫だった。
パッチリ二重に長い睫毛。
垂れ下がった少し太い眉。
高めの鼻にぷっくりとした唇。
素晴らしい程に整った顔は、兄と全く同じと言っていい。
この子供は兄だ。
竜胆はそう確信した。
「え…だ、誰…?」
「…兄ちゃん。」
「は…」
どうやら少しこちらに怯えているらしい。
無理もないか。まだ13くらいだもんな。
とは言っても、13歳くらいの頃の兄はこんなに見知らぬ人間を見て怯えていただろうか。
否。
兄は8歳を過ぎた頃から相手が誰だろうと気にせず、話しかけられれば話したり、喧嘩を売られれば真っ先に買ったりしていた。
しかし今目の前にいる子供はどうだ。
記憶上の兄とは似ても似つかない程の怯えっぷりだ。
まさか本当に兄じゃない別の子供なのか?
そもそも兄だったならこんなところで寝ているのもおかしい。
こんなところで寝ていたら誰であろうと不自然だけれど、兄ならばもっと不自然だ。
兄は大雑把ではあるが少し潔癖なのでこんな薄汚い床で寝るなんて有り得ない。
まず何故こんな時間に家を抜け出しているのだろうか。
いや、仮にこの子供が兄だったとしても、兄の家はあるのだろうか。
昔兄と両親で暮らしていた頃は家があったが、今両親はいないし家だって変わってる。
でも昔住んでた家もここから少し離れた場所だったような気はしないこともない…
「あ、あの…」
と、急に兄が口を開いた。
そうだ。兄が質問してきたのに無視して放置してしまっていた。
今の兄相手なら間違いなく殴られていた。
そう考えるとやはりこの兄らしき子供は似ても似つかないな…
「あー…えっとぉ…」
どう接するべきなのだろうか。
まずはこの子供に名前を聞いてみてから名乗った方がよさそうだ。
「お前、名前は?」
「…」
「?名前。」
「…」
しばらく子供は俯いたまま黙りこくっていた。
先程まで質問してきていたから恐らく喋りたくないわけではない。
そうだとすれば名前を教えたくないのだろう。
でも何故?
子供ってそういうモンなのか?
「…名前、教えたくねぇ?」
「え…あ…ちが、くて…」
「…あ」
よくよく子供を見てみれば小刻みに震えており、立っているのもやっとのようだった。
そりゃ2月なんだから子供にとってはこんなとこいたら寒くて仕方ないよな…
もしこの子供が兄だったなら尚更そうだろう。
ひとまず家にあげて暖かいものでも飲ませようかと考えたが、この子供がそう易々とついてくるとは思えないな…
でもこのまま熱でも出したりしたらなんだか罪悪感が生まれそうだし…
そこらの子供だったら絶対そんなこと思わないだろうが、やはり容姿が兄そっくりのため情が湧いてしまうのだろう。
「とりあえずさ、俺の家くる?」
「ぇ…」
「やっぱイヤ?」
「ぁ…」
「正直に言っていーよ。どうしたいの?」
「えっと…」
子供はしばらく考えた後、確認するようにこう言った。
「迷惑じゃない、ですか…?」
こちらから提案しているのだから迷惑なわけないだろう。
そう言いたかったが我慢した。
これ以上怯えて欲しくなかったからだ。
「大丈夫だよ。気にすんな。」
そう口にすれば、子供は安心したようにホッと息をついた。
でもやはり、迷惑ではないかと心配する辺りからして兄ではなさそうだな。まず敬語なんて使ってるの商談の時しか見たことないし…
それに兄ならばこんな見ず知らずの男の家にあがるなんて軽率な真似はしないだろうから。
「じゃあ、ついてきて。」
「は、はい…」
「…歩ける?」
「だい、じょうぶです…」
子供の足はガタガタ震えていて、どうやら立っているのもやっとの様子だった。
大丈夫じゃないのに大丈夫と嘘をつくのは兄と同じだな。
「…ほら、おぶってくから乗って」
「え、でも…」
「いいから。」
「あ、ありがとう、ございます…」
「ん。」
こうして竜胆は兄に似た子供を家にあげることにした。
再び家路を辿り始め、そういえば今何時だろうと時計を見れば夜中の2時だった。
「なぁ、お前こんな時間に外出てて大丈夫?つーか帰んなくてもよかったの?」
「あ…それは大丈夫、です…」
「そ?ならいいけど…」
俺達の両親ならばこんな時間に出歩いていたら1時間は説教だっただろう。
またこの子供が兄である可能性が低くなった。
現実的に考えたら幼少期の姿の兄がいるなんて有り得ないので、少しでも可能性を抱いていることがまずおかしいのだが。
「寒くねぇの?」
「は、はい…」
「嘘でしょ?」
「え…その…」
「この季節にそんなカッコでいたら寒くねぇわけねぇだろ。我慢しなくていいから。」
「ごめんなさい…」
「ンで謝んの?俺怒ってねぇけど」
「え、あ…」
「そう緊張すんなって。あ、もしかして俺怖い?」
「そんなことない、です…」
「ふーん?」
ようやく我が家に帰ってくれば、つけっぱなしにしていた暖房が暖かくて良かったと思った。
「とりあえず適当に座りなよ。俺飲み物いれるけど何がいい?」
「…?いいんですか…?」
「え、何が?家あげたのに飲み物はあげないとかおかしいでしょ。ココアにする?」
「は、はい…」
ココアを淹れるのも久しぶりだった。
いつもは兄がココアを飲みたいと言ってくるので毎日のように淹れていたのに。
「はい、熱いから気ィつけろよ。」
「ありがとうございます…」
一口、二口と口にした頃に、子供に再び同じ質問を投げかけた。
「…で、お前の名前は?」
「…えっと…」
もじもじとしている様子を見て、何故家にはついてきたのに名前を教えたがらないのか不思議でならなかった。
兄じゃなければ明日辺りに追い出すしかないのだが、兄であろうとなかろうと今日は一緒にいることにしたので名前がわからないと不便だ。
「…なんで教えたくねぇの?」
「…名前、色んな人達が知ってるので…」
ここらで有名ってこと?そうだとしても俺は子供に興味なんてないから知らないだろうけど。
ああそうだ。
名前を教えたくないのなら兄弟がいるのかだけでも聞いてみよう。
「じゃあさ、弟いる?」
「え…」
突然、子供は顔を青ざめた。
「…?どうした?大丈夫?」
「なんで…」
「え?」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「ちょ、どうしたの?大丈夫だって…」
「名前、教えるので…弟は…ッ」
「…」
「俺は…」
「言わなくていい。」
「え…?」
「お前がそんなに辛そうな顔して、弟のために言いたくないこと言うとかイヤだし。」
「で、でも…」
「俺は交換条件がしたいわけじゃねぇの。お前の名前知ったからどうするとかも無いし、お前の弟に手出したいわけでも無い。」
「ホント、ですか…?」
「うん。第一なんで何の罪もねぇヤツに手出さなきゃいけねぇの。意味分かんねぇ。」
「よか、った…」
弟がいることは明らかになった。
ついでに年齢も教えてくれた。
でもこの調子だと名前聞き出せそうにないな。
諦めて風呂でも沸かしてくるか。
子供用の服なんて持ってねぇんだけど…
俺のでもデカいだろうしこの時間だと店も開いてねぇよなぁ…
もしかしたらタンスの中に昔の服あるかも。
ダメ元で探してみるか。
「あった…」
多分俺のだろうけど、サイズ的には多分着れるな。
そろそろ風呂も沸いただろうし呼んでこよう。
「おーい。」
「あ、はい…」
「ほれ、こっち来て。」
「何でですか…?」
「風呂。ついでに服も洗っちゃうから貸して。」
「え…」
「え、なに?」
「そこまでしてもらうなんて…何も返せるものなんてないです…」
「いや、何も求めてないから。俺が勝手にやってる事だし。」
「なんでそこまで…」
「別に。なんとなくだよ。ほら、脱いで。」
仮にこの子供が兄で、今の時間が元いた世界と同じなのだとすれば刺青を入れる前ってことになる。
俺達が刺青をいれたのは俺の12歳の誕生日だったから。
「は…」
服を脱いで顕になった身体はアザだらけで、13歳の子供にしては非常に肉付きが悪かった。
「にい…お前コレどうしたの…?」
「…なんでもないです…」
虐待されているのだろうと思ってはいたが、いざその跡らしきものを目にしてしまうと見ていられなかった。
これもきっと容姿が兄に似ているから。
痛々しい傷なんて今まで嫌という程見てきた。だから知らないヤツの傷跡なんて見ても何も感じない。
でも兄だけはトクベツだから、兄の身体にできた傷は見ていてとてもイヤだった。
それと同じだ。
「…1人で入る?それとも一緒に入る?」
答えなんて分かりきっているが、多分俺が一緒に入りたかったのだと思う。
兄の温もりを、本物じゃなくてもいいから感じたかったのだ。
「…アザ、見てたら多分不快だと思うので大丈夫です」
そこは見られるのが嫌だからじゃねぇの?
なんでそこまで人のこと考えてんだよ。
「俺はそういうの無いよ。お前が嫌だってんなら無理強いはしねぇけど。」
「ありがとうございました…」
「お、キレーになったじゃん。」
「あ、あの…」
「んー?」
「なんでここまでしてくれるんですか…?」
「敬語使わなくていーよ。」
「え…」
「ごめん、こっちの都合。俺のわがままだよ。」
「わかり…わかった…?」
「慣れなかったら無理しなくてもいいから。」
もうこの子供は俺の中で勝手に兄に変換されていたのだろう。
だからか敬語を使われることの違和感が大きかった。
「あ、ちなみに俺がこうやって色々やってんのも俺の勝手だからね。余計なお世話だって言われたとしても関係ねぇの。だからそっちが迷惑かもとか考えなくていいから。」
「…!!ありがとう…」
「あ、それよりさ、服のサイズどう?デカい?」
「ちょっと大きい…」
「それしかないから我慢してな〜」
「大丈夫…」
「つーかお前眠くねぇの?」
「うん」
「無理すんなよ〜」
「大丈夫…」
「そ。じゃ髪乾かすからこっちおいで」
「え、自分でできるよ…?」
「いーの。」
こうして長い髪を乾かしていると、なんだか懐かしい気持ちになってしまう。
俺は一体何をしているのだろうか。
名前も知らない子供の世話をして、勝手に兄と重ねて…
「はい。完璧。」
結局あれもこれも全ては自己満足でしかない。
この子供が兄だったなら良かったのに。
兄が帰ってきてくれればいいだけなのに。
「…灰谷蘭」
「…は?」
なんで、この子供の口から兄の名が出てくる?
なんで知ってる?
まさか敵の罠だったのか…?
でも…
「俺、名前。灰谷蘭…」
「え…?」
嘘だろ?
まさか本当に兄だったなんて、有り得ない。
でも確かにそう言った。
「色々してもらったのに、何もしないのは最低だから…できることはしたい…」
「…じゃあさ、お前の弟の名前、教えてもらえたりする?」
「…」
やっぱりダメだよな…
でもなんでそこまで弟の情報は隠すのだろう。
「お兄さんの名前、知りたい…」
マズイな。
ここで俺が名前言ったら絶対混乱を招く。
なんとか冷静に…
「…驚くなよ?そして敵意を向ける必要も無い、それだけは覚えといて」
「?う、うん…」
「…灰谷竜胆」
「え…?」
「俺、アンタの弟なんだよ。」
「ウソ…そんなワケ…」
「信じらんねぇよな。俺もだよ。」
「り、んど…?」
「うん。そうだよ、兄ちゃん」
「…俺のこと兄ちゃんだっていつ気付いたの…?」
「なんとなく初めて見た時から兄ちゃんみたいだなって思ってたよ。でも俺が知ってる兄ちゃんとは似ても似つかないとこが多かったから兄ちゃんなわけないって諦めてた。」
「質問、してもいい…?」
「うん、いいよ。」
「りんどう、は…」
「うん。」
「…りんどうは、俺のこと嫌い…?」
「は?なんで?」
「俺、ちゃんと兄ちゃんできてるかな…」
「なんでそんなこと心配してんの。」
「…」
「…とりあえず今日は一緒に寝よっか。」
「りんどう、りんどう…」
「大丈夫大丈夫。一緒にいるよ。」
「ん〜……夢じゃなかったの…?」
「ん…」
「兄ちゃーん、兄ちゃん、」
「んぁ…りんどぉ…?」
「そうだよ。兄ちゃん、朝ご飯にしよ。」
「あ…りんどう…」
「なに?」
「ごめんなさい…」
「なにが?」
「俺、兄ちゃんなのに何も出来なくて…」
「料理なんて13だったらできなくても普通だろ。気にすんな〜」
「うん…ありがとう…」
「兄ちゃん、食べ終わったら皿こっち持ってきてくれる?洗い物やっちゃうから。」
「はい、これ…」
「ん。ありがとね。」
「俺にできることとか、ある…?」
「なんで?」
「俺も役に立たなきゃ…」
「…何。もしかして兄ちゃん12歳の俺と喧嘩でもしてたの?」
「え、うん…」
「…偶然だね。俺達もだよ。」
「え…?」
「喧嘩して、顔も見たくねぇって。久々に喧嘩したんだよ。兄ちゃんわがままだし自己中だからさ、俺もカッときちゃって。俺兄ちゃんに酷いこといっぱい言っちゃって、兄ちゃんは何も言わなかったけど多分怒ってたと思う。そのまま口聞かないでいたら兄ちゃん仕事入ってさ。…そのまま帰ってこなくなっちゃった…」
「…りんど…」
「…兄ちゃん、生きてるかもわかんねぇの。もしかしたらもう二度と会えないかもしんねぇ。せめて最後ならもっと、ありがとうとか、そういうこと言いたかったのに。俺、兄ちゃんに最後言った言葉なんだと思う?」
「わかん、ない…」
「『お前の弟になんてなりたくなかった。お前なんていなければ良かった。どっか行け。消えろよ。』って。…言っちゃったんだよ、俺…兄ちゃんのこと大好きなのにさぁ…そしたら本当に、どこだかもわかんないとこ行っちゃったの…」
「りんどう…」
「兄ちゃんって強がりだからさぁ、多分部屋で泣いてたと思うのね、俺ちゃんと謝んなきゃって思ったのに、謝れもしなくて…兄ちゃんにだって非はあったけど明らかに俺が言い過ぎたの。なのに兄ちゃんは俺に『ごめんね』ってメッセ残してさ…」
「りんどう…大丈夫…泣かないで…」
「兄ちゃんいっつも俺のこと考えてくれてるのに、俺は全然兄ちゃんの気持ち考えてなくて…きっと兄ちゃん怒ったんだよね、俺がこんな弟だから…」
「大丈夫だよ…大丈夫だから…」
「兄ちゃんのことばっか考えてたら寝れなくてさぁ、そんな日が続いて1人で帰り歩いてたらなんか、惹き込まれたみてぇに路地裏行って。そしたら兄ちゃんがいたんだよ。でもいざ話しかけてみればさ、俺が見てきた兄ちゃんとは全然違くて。ちゃんと年相応な反応するし、ちゃんと”怖い”って感情だってあったんだって気付いたの。」
「…?」
「兄ちゃん今までずっと俺に弱いとこ見せないようにしてたんだなって。俺のこと守るために頑張ってくれてたんだなって。兄ちゃんだって怖いことも辛いこともあるよね…俺いっつも余裕なかったんだと思う。いつもごめんね。いつもありがとう。兄ちゃん…」
「りん、ど…」
「ごめんね…ごめん…俺が、俺がちゃんと兄ちゃんのこと考えてあげられてれば良かったのに…思ってもないことばっか言って傷つけてたよね…ごめんね…」
「謝んないで…それに俺は…りんどうの謝りたい相手じゃないよ…」
「…ごめん、落ち着いた…俺より年下なのにごめんな…」
「大丈夫…それよりこれからどうするの…?」
「…これからって言われてもな…兄ちゃんは家帰んねぇと親がうるせぇだろ?そろそろ帰った方が…」
「…帰るとちょっと…」
「え?…そういえば弟は?家にいんの?」
「いる…とは思う…」
「弟に会いたくねぇから帰りたくねぇの?」
「ちがう…」
「?…あ」
そういえば、風呂に入る時全身にアザがあったんだった。
兄だと確信していなかった時は虐待されてるんだろうなんて簡単に思っていたけど、その対象が兄だと確信できれば話は別だ。
最低だけどそれが人間ってものなんだろう。
でもおかしい…俺達は子供の頃虐待なんて受けていなかったハズ…
ならば何故、目の前の兄は虐待されているのだろうか。
「り、りんど…?」
「ああごめん…こんなこと聞くのも申し訳ないんだけどさ…」
「なに…?」
「兄ちゃんってもしかして…虐待されてたりする…?」
「え…あ、…」
「ごめんね。聞くまでもないよね…」
「あ、えと…されて、ない…」
「…」
「…相手が俺だから本当のこと言いたくないかもしれないけどさ…大丈夫だよ。兄ちゃんだからって我慢しなくていいし、辛かったら辛いって言って?俺バカだから多分言ってもらえないと気付けないからさ…」
「ぁ…」
「…されてたんでしょ?」
「ぅ、ん…」
「…ごめんね…ずっと我慢してきたんだね…弟なのに何もわかってなかった…」
「りんど、わるくない…大丈夫…」
「…両親って今どこにいるかわかる?」
「多分…」
「じゃあちょっとまっててね。この家は誰も来ないから大丈夫だよ。すぐ帰るから」
「…?わかった…」
「じゃあ、家から出ないでね」
「うん」
この後すぐ竜胆は両親の元へ向かい、殺害した。
このことは蘭に黙っておくか悩んだが、話さないでいれば後々混乱することに変わりはないだろうと考えたため打ち明けた。
蘭は少し驚く程度で、悲しむ様子を見せることは無かった。
むしろ、少し喜んでいたような気さえした。
蘭はこうでも、果たして12歳の竜胆はどう思うのだろう。
蘭が適当に事故だったと伝えるのだろうか。
恐らくだが、昔の自分も両親が死んだと聞いても悲しまないだろう。
幼い頃から竜胆は、蘭さえいればそれで良かったから。
帰宅するなり、蘭が酷く急ぎ足でこちらに駆け寄ってきた。
「わっ!…どうしたの?兄ちゃん」
「…このまま帰ってこないのかと思ってた…」
「そんなわけねーじゃん。大丈夫だよ。」
「ありがと…」
「ん。…それよりさ、」
「なに?」
「弟…本当に家にいる?」
「え…?なんで…?」
「…」
“家にいなかったから”
そう答えたら蘭はきっと探しに行くと言って聞かないだろう。
蘭が外に出たからといって特別何か問題がある訳では無いが、単に竜胆がそれを良しと思えなかった。
恐らくそれは、自分の元から離れていってしまった兄と重ねてしまっているからだろう。
もう絶対に手放したくない。
そんな思いでいっぱいだった。
「りんどう…?」
「…なんでもないよ。今日ご飯何にする?」
「…りんどうのオススメ」
「ん〜…ハンバーグは?」
「いただきます」
「…りんどう」
「なに?兄ちゃん」
「やっぱり、なにかあったんでしょ。」
「え?」
「俺になにか隠してるでしょ。」
「そんなことないよ?」
「…なんで嘘つくの?」
「嘘じゃねぇって。」
「じゃあなんで竜胆の話したの」
「…ちょっと気になっただけだよ。」
「…竜胆、家にいなかったんでしょ。」
「…」
「…黙んないでよ」
「…俺、一人はイヤだよ。」
「え?」
「29の男が何言ってんだって言われてもしょうがないけど、俺は今までずっっと兄ちゃんと一緒だった。…だから、急にいなくなられると俺ダメなんだよ…」
「…」
「なんでか小さい頃の兄ちゃんが現れて、こうやって一緒にご飯食べて、風呂入って、テレビ見て寝て、今まで当たり前にしてきたことが急に特別なことに感じちゃってさ。幸せだなって、思うの。…兄ちゃんがいないとダメなの。」
「…それと竜胆の件、何が関係あんの…?」
「…弟、見つけちゃったら兄ちゃんは俺から離れてっちゃうでしょ。兄ちゃんよりも、もちろん俺よりも小さい弟のこと放っておくワケないんだから。」
「…」
「…だから、弟に会わなければ兄ちゃんとずっと一緒にいられるって、思ったの。」
「…それって、俺と竜胆を離そうとしたって解釈でいいの?」
「…そうだね。…でも、俺だって兄ちゃんの弟の竜胆だよ。ねぇ、俺だけじゃダメ?」
「そう、だけど…」
「もう弟のことほっといてさ…俺とずっと一緒にいようよ…ねぇ、お願い…」
「りんど…」
「なんでダメなの…?俺だって兄ちゃんの弟でしょ…?また1人にするの…?」
「…ッ、でも…りんどうの兄ちゃんだってまだ生きてるかもしれないんでしょ…?だったら探してあげなきゃ…」
「…」
「ね、ねぇ、りんどう…」
「…なに」
「じゃあ、さ…俺の弟とりんどうの兄ちゃんが見つかるまで2人で探せばいいんじゃない…?」
「…先にどっちかが見つかったら残った方はどうなるの」
「2人が見つかるまで!…だから、絶対1人にはならないよ。…ダメ?」
「…いいよ」
「よかった…」
「…でも、俺の兄ちゃんは生きてるかなんてわかんないし…」
「だいじょーぶ。…もし生きてなかったら俺たちと一緒に暮らそ?」
「…うん」
「ね、もう怖くないでしょ?」
「…うん。」
「…ご飯食べよ?」
「…そうだね」
もし、兄が死んでしまっていたとして、蘭と小さい自分と共に暮らすことになったとしたら、俺はきっと__
「…俺を殺しちゃうだろうなぁ」
「え?」
「なんでもないよ。」
「そっかー」
「うん、お風呂入って寝よっか」
「うん」
「兄ちゃんの服買ってくればよかったね」
「大丈夫だよ。」
「明日買いに行こっか」
「明日…明日、竜胆達探しに行ける…?」
「…そうだね。明日行こっか」
「ほんと…?!やった…!」
「だから今日は早く寝よっか」
「うん!」
俺と兄ちゃん以外誰も要らないよ。
それが例え、小さい頃の自分だって。
だから、俺が1人になっちゃったら、兄ちゃんも1人になってね。
大丈夫だよ。
だって、2人なら寂しくないでしょ?
絶対に離してあげないよ。
兄ちゃん。
ここまでです〜!!
長かったですがここまで読んでくださった方々、本っ当にお疲れ様でした🙇♂️💕
えーっとですね、10000文字を超えました笑
自分でもびっくりです笑
一応続きは考えてありますが需要ありますかね…
希望者さん5人以上いれば書きます🙌
そんなにいなくても私が書きたくなったら書くかもしれない()
それと、前回投稿したバグの件治りました〜!
情報くださった方々ありがとうございました!!
余談なのですが、この話のそれぞれの呼び方が色々ありすぎて分かりずらいかなと思ったので適当にまとめておきます↓
「兄ちゃん」…梵竜視点の13蘭(最後は両方)
*13蘭視点の梵蘭も含む。
*所々梵竜視点の梵蘭もある。
「兄」…梵竜視点の梵蘭
「りんどう」…13蘭視点の梵竜
「弟」…梵竜視点の12竜
これで伝わりますかね…
伝わらなかった分は皆様の中でなんとか解釈して頂ければと思います…!
いつも通り即興で書き始めた話でしたが何気に少し気に入ってます笑
それと、だいぶ前に二重人格な蘭の話を書いていたのですが途中で書くの保留にしたんですが需要ありますか!
あればそのうちちゃんと書いて投稿します👍
(これも主の気分次第で投稿するかもです)
長くなりましたがここまで読んでくださって本当にありがとうございました〜💕🙌
それとフォロワー様770人ありがとうございます💕🙌
このまま800人までいけるといいなぁ…😌
ばいばい(*´˘`*)ノ゛
コメント
16件
やっべぇ、、、見るの遅くなっちゃった...💦💦💦 こんな最高な作品をなぜ放って置いてしまったのか、、、😭 紫雨ちゃん.ᐟ.ᐟ.ᐟ今回も最高すぎるよぉぉぉぉ.ᐟ.ᐟ.ᐟいや、ガチで尊敬😭🙏✨✨💞 これからもめちゃくちゃ見させて貰うねっ.ᐟ.ᐟ💕💕💕💕