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てことで!!
hima72 side
「なつ〜?」
「うるさいあついくっつくな」
授業が終わり、寝ていた俺を起こすためからんが俺に飛びついてくる。
7月中旬、全身が少しずつ溶けていきそうなだるい暑さに俺は正直イライラしているが、こいつだけはどうも違うようだ。
「なっちゃ〜んカラオケ行こーよー歌おうよ夏曲〜」
「えぇ…」
なんでこいつは元気なんだよ。1人で歌ってろよそこで。
あーあ鼻歌が聞こえてくる。男のくせにキンキンたっかい声出しやがってよ。
「ジュース奢れよ」
「うん!!いくらでもどうぞ!!!!」
…で、来てしまった。
「ほら〜なっちゃんも歌おうよ〜」
「いや、別に…」
「入れるね!!これなら歌えるっしょ!!」
「は??」
いや、なんでアイドル曲なんだよ。流行ってるけどね?エ〇い女が踊ってるの見たけど。
「スマホのカメラロールなんて〜🎶」
俺は絶対歌わんからな。
2時間はあっという間に過ぎて、太陽も西に傾いてきた頃。
らんが「最後に1曲だけ!」と言うので、仕方なく聞いてやることにした。
らんが最後に選んだのは、ライブで感動のMCの後に歌うような儚い夏曲だった。
それはいつもらんが歌う曲。理由も教えてくれないくらい、らんの中で大切な曲。
間奏の間、いつも静かにしているらんが口を開いた。
「俺はこの曲嫌いだよ。父さんが好きだった曲だから。」
マイクを通さないらんの声は、少しだけ震えていて、でも落ち着いた声だった。
俺は、らんの父さんに何があったのかは知らない。
「ちょっと…トイレ行ってくるわ」
今まで見たことのないらんの雰囲気に、いてもたってもいられなくなった。
部屋に戻ると、歌い終わったらんが帰る準備をしていた。
「なっちゃんおかえり~🎶帰ろっか!!」
あ〜すっきりした、ありがとね。とか言ってるらんの頬には、乾いたなにかの跡が残っていた。
俺は見て見ぬふりをしてらんを一蹴する。
「聞き飽きたわ!!帰ろーぜ」
あ、それと。
「今回は俺が奢るわ」
「え?無理だよ付き合わせちゃったし」
「いや、いいよ」
お前の歌、悪くねーし。
なんか最初に写真載らなかった( ᐛ )