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※前アカの読切「夏祭り×浴衣×恋人=⁇⁇」と繋がってる
「夏祭りですって」
「うん?あ、ホントだ」
トラゾーが指差した先、ポスターが貼られていた。
「今年は人が多そうですね」
「そうだね」
去年の今頃、夏祭りに俺は遅れて行ったけどトラゾーと一緒に楽しんだ。
その途中で自分の理性の脆さを痛感したわけだけど。
「(だってトラゾーが無防備すぎるし、全くそんなつもりじゃなくても俺のこと誘ってるようにしか見えなかったから)」
と、責任転嫁をしてしまうくらい俺の恋人は可愛くて疎くて鈍い。
それにどんどん磨きがかかっている。
「みんなと一緒に行けますかね」
「どうだろ」
また気を遣われそうな気もするけど。
親指を立ててウインクしてくるぺいんととしにがみくんが想像できる。
「ぺいんとたちと行くのも楽しそうですけど…でも俺、やっぱクロノアさんと2人で行きたいなぁ…なんて、…?」
外の暑さにあてられて赤らんでる顔が、恥ずかしさで赤みを増した。
可愛いにもほどがある。
「っ……」
あまりにも可愛いすぎて固まってしまった。
「ぁ、っと…!…すみません、贅沢言い過ぎですね!なんか俺、クロノアさんに対してどんどん我儘になってるや…」
両手を振って申し訳なさげに言うトラゾーが歩みを早めた。
勘違いしたのか俺の顔も見ずに。
「そもそも行けるかどうかも分んねぇのに、勝手に浮かれてごめんなさい。クロノアさんやみんなの予定のこと考えずに自分のことばっかで、…ホントに、ごめんなさい…」
早口になるトラゾーの声は段々と尻すぼみになって消えそうなほど小さくなる。
「1人でも楽しめますし、さっきの発言は聞こえなかったことにしてください…」
「はッ…待って待って!俺行けないなんて言ってないじゃん」
慌てて手を掴んで引き留めた。
眉を八の字にして俺を見るトラゾーが小さく呟く。
「でも…あんまクロノアさん乗り気じゃなさそうだから」
「そうじゃなくて」
「…?」
「トラゾーが可愛い過ぎて」
「は…っ⁈…か、可愛くはないです…!」
顔を逸らしても赤くなった耳は丸見えだ。
「その日大丈夫だよ。最初から一緒にいれる」
「い、いんです、か…?」
おそるおそる聞き返すトラゾーに笑う。
全然我儘を言ってることなんてないのに、他人優先で自分のことは後回しにばっかりする。
「トラゾーはもっと我儘になってもいいと思うけど」
「充分我儘言ってるのに……クロノアさんだと、甘えてしまう自分がやです…」
「甘えてほしいし、我儘も言ってほしい。我慢はしてほしくないかな」
「……」
「一緒に行こ?夏祭り。俺もトラゾーとまた2人で行きたい」
掴んだ手に力を少し入れる。
離したら、トラゾーはもうこの話をしてくれなくなりそうだから。
「……」
「トラゾー?」
逸らされた顔を覗き込もうとしたら俺の方を振り返って戸惑いながらも嬉しそうな顔を向けてくれた。
俺のこんな言葉だけでこんなにも嬉しそうに顔を緩ませてくれる可愛いトラゾー。
「あの、…嬉しい、です…ありがとうございます」
トラゾーがよくする(本人はしてるつもりもないだろうし、全くの無自覚だろうけど)へにゃっと無防備な笑顔に何回理性を崩されたことやら。
ただ、他の人たちにもこの笑顔を向けた時に俺がどれだけ嫉妬してるかなんて知らないだろう。
「(外にいるから抑えてるけど、ホントにこの笑った顔を崩して本気で啼かせたくなる)」
なんてことを思ってるってこともトラゾーは分かってない。
表には出さないように気をつけてるし、自分の恋人の前ではかっこよくありたいから。
「うん、どういたしまして」
「ふふっ…楽しみです」
「俺もだよ」
外で本当によかった。
家の中だったら確実に押し倒してる。
「クロノアさんは浴衣着るんですか?」
「んー今年は甚平にしようかな。そっちの方が動きやすいし」
「クロノアさんはなんでも似合うから羨ましいですよ」
「それはトラゾーもでしょ」
「俺?うーん、どうですかねぇ」
「去年の浴衣も似合ってたし。…ま、脱がせちゃったけど」
言われた意味を反芻して、思い出して真っ赤になったトラゾーはぷいっと顔をまた逸らした。
「…助けてくれた時のクロノアさんかっこよかったのに、今のあなたは意地悪だ…」
「自分の恋人は可愛がりたいしいじめたくなるのが男の性ってもんだろ?」
赤くなってる耳に囁くように顔を寄せる。
「思い出して顔赤くしてるトラゾーはやらしいね」
「バッ…あ、あんたバカですか!!」
耳を押さえて顔を離したトラゾーは涙目で羞恥でその目元も紅潮していた。
朱をさしたみたいに。
「俺普通の服で行こうかな…」
「結局脱がされるんなら何を着ても一緒だと思うけど」
「もう!!」
「トラゾーの浴衣姿また見たいな。…だめ?」
「っ、…ぅう、その顔に俺が弱いの分かってしてるでしょッ…絆されないんですからね」
じっとトラゾーを見つめる。
自分の顔の美醜には興味はないけど使えるものは使わないと。
「俺の我儘はきいてくれないの?」
「っっ〜〜!!その顔も声も狡いですっ、分かりました!分かりましたから近いですってば…!ここ外!」
「知ってるよ。知っててやってんだから」
「は…⁈」
信じられないと目を見開く緑はじわじわと恥ずかしさで揺れてる。
「恥ずかしがってるトラゾーを見る為にね」
「腹黒!ドS!!」
「トラゾーにだけだよ」
どんな時だって、いろんなトラゾーを見たいから。
「嬉しくない…っ」
トラゾーはライフ0一歩手前の状態で俺を睨んだ。
全然全くこれっぽっちも怖くない。
可愛い猫の威嚇のようにしか見えなかった。
啼かせる時もたまにこうやって反抗してくるから余計にいじめたくなるのに。
無自覚煽りをする恐ろしい恋人だ。
「嘘つき。いっつもいじめられて悦んでるくせに」
「─────ッ!!!」
そう言ったら肩パンされた。
自業自得だから仕方ないけど、やっぱりトラゾーの肩パンは痛かった。
───────────────、
「去年よりやっぱり多いですね」
「だね」
人が賑わう道の両脇には露店が並んでいる。
「歩きづらいわけじゃないですけど、人とぶつかりそうだ。それに暑いですね…」
去年とは違う浴衣を着てるトラゾーが手で首元を扇いでいる。
「はぐれないようにまた手でも繋ぐ?」
差し出した手と俺を見比べたトラゾーはおずおずと手を重ねてきた。
拒否なくしてくれることが喜ばしく目を細める。
「…じゃあ、もうちょっと我儘になってもいいですか…?」
きゅっと絡められる指。
恋人繋ぎをトラゾーからしてくれたことが嬉しくて暑さと緊張と互いの体温の熱さで汗で触れ合うところがしっとりとしてる。
「クロノアさんになら、俺、甘えてもいいかなって…」
ダメですか?なんて小首を傾げられる。
可愛い恋人の願いを叶えないわけがなくぎゅっと手を握る。
「勿論、いっぱい甘えていいよ」
心臓が痛いくらい早鐘を打っていた。
思わぬ恋人からの可愛すぎる行動に早くも理性が崩れそうだった。
それを笑顔の裏に隠してトラゾーを見返す。
「、うん」
ぽぽぽ、と赤いトラゾーの俯く首筋や耳元、項には俺のつけた鬱血痕が体温の上昇で色濃く浮かび上がっていた。
「(おいしそ、)」
すぐにでも噛みつきたくなる衝動を理性を総動員させて抑え込む。
「…よし。じゃあ花火までまだまだ時間あるし露店見て回ろっか」
「はい!…あっ、そうだ。射撃もあるみたいですし、クロノアさんが撃ち落とすかっこいいとこ見てみたいです」
「……俺に何か獲らせようとしてる魂胆じゃないよね?」
「ナンノコトデスカネー⁇」
吹けてない口笛を吹いて俺を見るトラゾーの短い前髪からのぞく額を小突く。
汗で張り付く黒髪が扇情的だ。
浴衣のせいで体の線が強調されているし、合わせからチラチラ見える胸元もひどく官能的であった。
「…クロノアさん?」
「なんでもない。トラゾーその浴衣も似合ってるよ」
「え、ぁ…ありがとうございます。クロノアさんも甚平似合ってます。すごくかっこいい」
俺の誤魔化し(じゃないけど)に喜ぶトラゾーも笑いながらそう言ってくれた。
夏祭りという高揚感もあってトラゾーのテンションは高い。
はしゃぐ姿は一つ違いでも年下なんだなぁと思う。
わざとボケたり、素の天然ボケをすることもあるけどトラゾーは基本的に真面目で実直で落ち着いてる。
周りをよく見てる冷静さも持ってる。
それを凌駕するくらいとんでもなく抜けてるところがあって面白いし。
「(ギャップ萌えって言うんだろうなトラゾーみたいなのを)」
「あ、クロノアさんイチゴ飴ありますよ」
「食べる?買ってあげようか?」
「そんくらい自分で買えますよ…。子供じゃないんですから…」
「恋人を甘やかしたいだけだよ」
苺みたいに赤くなるトラゾー。
「去年はリンゴだったけど今年はイチゴにするんだ」
「っっ////!!」
「なんて。買いに行こうか」
「クロノアさんはどんどんズルくなっていきますね…」
「トラゾーを手放さない為に必死なだけだよ」
湯気が出そうなくらい赤い顔を俯かせた。
「お面を先に買っとけばよかった…」
「そうだね…トラゾーの可愛い顔見せなくて済んだのに。しくじったなぁ…」
「ちょっと、あなたそういうこと言う人じゃなかったでしょ////⁈」
絶対領域だった人が、と言われたけど首を傾げた。
「暴いてめちゃくちゃにしたいのも、思ったこと口にするのもトラゾーにだけだって言ってんじゃん」
「あば…ッ////!!?」
「可愛い。……イチゴ飴2つください」
トラゾーはわなわなと震えているけど人がたくさんいる外の手前、言葉を飲み込んでいた。
お金を払っておじさんから飴を2つ受け取る。
「はい、トラゾー」
拗ねて唇を突き出すそこにイチゴ飴をくっつける。
「んむっ」
「甘そう」
イチゴ飴の着色料で紅くなってる口元を見る。
「……甘いの得意じゃないじゃないですか」
舌を出して口元を舐めたトラゾーの赤い舌がチロ、とのぞいた。
「んー……まぁ、モノによるかな」
「モノによる…?」
「うん。俺の目の前にある真っ赤になってる子はおいしそう」
「真っ赤…?子?……⁇、、!!……ッな!!?」
にこりと笑って自分の分のいちご飴を齧る。
人工甘味料と苺そのものの甘酸っぱさが広がった。
「ほらトラゾーも食べな。美味しいよ」
「っ、い、言われなくても食べます!」
一粒を一口で食べたトラゾーはもごもごしながら俺を睨みつける。
「(可愛いだけなんだよな…)」
「なにわらっへんれふか」
「いや?別に」
「…くおおあひゃんのばか」
「はいはい」
それでも繋いだ手は離しはしないところを見ればやっぱり照れてるだけのようだった。
「色々見て気になったとこに寄ろうか」
こくりと頷くトラゾーの手を引きながら露店を見て回る。
「いろんなのあるね」
「ですね」
「俺たちが子供の時に比べたら露店も今時って感じだねぇ」
「そりゃあ時は移ろうものですから。流行も取り入れてお客さんを呼ばないとダメですし。露店の人たちも客商売ですから」
トラゾーが俺を見ながら呟いた。
「でも、こうやって変わっていく時をクロノアさんと過ごせて俺は幸せです」
「…俺もだよ。トラゾーといれて幸せ」
笑い返せば嬉しそうに笑ってくれた。
「……////…あ、クロノアさんっ、向こうたこ焼きありますよ行きましょう…っ」
恥ずかしくなったのか俺の手を引っ張って歩くトラゾーの後ろ姿を眺める。
「可愛いな…」
俺の呟きはトラゾーには届いてないみたいで、赤く染まる項を見ていた。
「あれ?」
「うん?…あ」
「ん?あ、トラとノアじゃん。やっほー」
「らっだぁさんもお祭り来てたんですね」
「そそ」
周りを見渡すトラゾーにらっだぁさんがどした、と声をかけている。
「お一人ですか?」
「うんにゃ、他の奴らはそれぞれ買いに行っちゃった」
「へー」
「トラ浴衣似合ってんね。可愛い」
「可愛いのは置いといて、…色々ありがとうございます。らっだぁさんも浴衣似合ってますよ。髪型もいつもと雰囲気違ってなんかかっこいいですね」
身内に向ける笑顔と、他意のない褒め言葉に苛立つ。
社交辞令とは違う純粋な言葉を返すトラゾーに。
俺以外の相手にそんなこと言ってるのを見るのは全くいい気はしない。
「……」
たこ焼きを頼んでいるトラゾーから視線を外すとらっだぁさんと目があった。
「ノアもかっこいいじゃん。イケメンは何を着ても似合うな」
「…らっだぁさんも似合ってますよ」
「……顔、怖いぜ?」
「なんのことですか」
「猫は嫉妬深いもんな。悪ぃ悪ぃ」
トラゾーを見て俺を見るらっだぁさんが目を細めて笑う。
何もかも分かってて言ってくるところも腹が立つ。
「買えましたよ。クロノアさん」
振り向いたトラゾーに笑い返した。
隣で怖ぁと呟くらっだぁさんは無視して。
「?、怖い?何がですか?」
「ん〜?こっちの話」
「はぁ…」
手に待つたこ焼きを見る。
出来立てのそれからは湯気が立っていた
「美味しそう」
「はい、お姉さんに2つおまけしてもらいました」
確かによくよく見れば数が多い。
ちらりと露店のお姉さんを見れば親指を立てて笑っていた。
「そっか。よかったね」
「得しちゃいました」
その露店後ろの長椅子が空いていたからトラゾーを促して座らせる。
人の目から少し外れたそこなら落ち着いて食べれるだろうし。
「ソースで汚れちゃうからね。座って食べよ」
「そうですね。あ、らっだぁさんもどうぞ?みんなまだ戻ってこないようなら」
「いや大丈夫。気遣いありがとな」
らっだぁさんを見上げるトラゾーが首を傾げた。
その顔は心配そうである。
「え、でも…足痛くないですか?」
「気にすんなって。それより冷えるから食えって」
「じゃあ、らっだぁさんひとつ食べます?」
「……トラゾー」
「クロノアさん?」
竹串のような爪楊枝をたこ焼きに刺した状態で動きを止めたトラゾーに口を開ける。
「あ」
「へ…?」
「俺、お腹空いちゃったから食べさせて?」
ちらっとらっだぁさんを見れば肩を竦めていた。
「おっと、あいつら向こうで俺のこと待ってるみたいだわ。んじゃーな」
わざとらしくスマホを見て手を振り、人混みに消えていったらっだぁさんに内心舌打ちする。
「行っちゃった…」
人混みに消えた姿を追うトラゾーの顎を掴んで目を合わせる。
「トラゾー、ほらちょうだい?」
「は、ゎ…っ」
爪楊枝に刺したたこ焼きに息を吹きかけて俺の口元に持ってきたトラゾーの顔の赤いこと赤いこと。
「(茹蛸みたい)」
口元に持ってこられるたこ焼き。
ソースのいい匂いがする。
「んっ」
「おい、しいですか…?」
「、っ…ん」
味は普通に美味しい。
「っ、美味しいよ。ほら次トラゾーの番、あーんして」
「へぁ、あ…あーん…」
目を固く閉じて口を半開きにする赤い顔は違う場面を思い起こす。
「(マジで素直すぎんだよな)」
もぐもぐと咀嚼して飲み込んだトラゾーは俺の方を見る。
「は…恥ずかしいですね、これ…」
裏にいるとは言え人のいるところでしてるから余計にだろうけど。
ただ見ようによれば仲のいい友人に見えるはずだ。
けど、そんなんじゃ俺は満足しない。
すっと顔を近付けて赤い耳を掠めるようにして囁く。
「…もっと恥ずかしいこと、俺といっぱいしてるのに?」
柔らかい耳朶を甘噛みすればびくりと肩が跳ねていた。
「くろ、のあさん…っ!!」
「おっと」
立ちあがろうとしたトラゾーの肩を押さえて座らせる。
幸いたこ焼きは落ちず、浴衣も汚れずに済んだ。
「あなた、外で何言って…ッ」
「らっだぁさんと仲良くしてたトラゾーにお仕置き」
「は、…⁇」
ほらやっぱ鈍い。
疎いし鈍いし、俺はいつも気が気じゃない。
「冷める前に食べろって言われてたから食べちゃお?」
「〜〜っ!………クロノアさんってホントにドSだ…」
「トラゾーにだけね」
「しなくていいですから…っ」
可愛い反応をするものだから笑ってると睨まれた。
猫目っぽいから余計に猫の威嚇にしか見えなかった。
口に出したらまた肩パンされそうだから言わなかったけど。
───────────────、
途中途中で知り合いに出会って楽しそうに笑うトラゾーに苛立ちと嫉妬を募らせていった。
「(早く終わんねぇかな)」
夏祭りを純粋な気持ちで楽しむ恋人に対して、どんどんとよくないことが頭を占めていく。
花火が始まるというアナウンスが流れ、人がそっちに向かっていった。
「花火がよく見えるって穴場教えてもらったんですよ」
「え?いつの間に?てか、誰に」
「きょーさんにです」
「えぇ?」
「らっだぁが迷惑かけてすまんって連絡きてて、そしたら穴場教えてくれて」
保護者かよと思ったけど、実際迷惑だと俺だけが一方的に感じていたからある意味ではありがたいことだった。
「こっちです」
ずっと繋いだままの手をトラゾーに引かれながら奥まった場所まで連れて来られる。
「ここです」
「…あぁ、確かにここからならよく見えそうだ」
「ふはっ!ないしょ、にしとかなきゃですね」
小さな声で呟かれた瞬間、パッと辺りが真っ暗になった。
「「あ」」
ひゅぅうと打ち上がる音の数秒後、体を揺らすような内側に響く重低音と共に夜空が明るくなる。
「ゎ…」
次々に上がっていく大小色とりどりの形も様々な花火が空に咲く。
月なんかが霞んで見えるほどの綺麗な花火たち。
「綺麗ですねぇ…」
「そうだね…」
圧倒されるものの前では語彙力なんてものなくなる。
綺麗だとしか言えないほどの迫力だった。
「今年は花火に力をすごい入れてるって露店のお兄さんが教えてくれたんですよ」
「これは、確かにすごいね…」
「……すげぇ」
去年は花火の途中でトラゾーのこと連れて帰ってしまったから。
色々と重なってダメだった。
「……」
動いてるうちに緩んだ浴衣からのぞく鎖骨や胸元に見える赤い痕。
独占欲、所有欲、執着心。
それ以上の重くて昏い感情をトラゾーに刻みつけてる。
「(…めちゃくちゃにしたいな)」
泣いて縋るほど、気持ちよすぎて助けを求めてくるくらい、俺でいっぱいにしてやりたい。
花火を眺めながら邪なことを考えてる俺の隣で純粋に花火を見て、そのことで頭を占めてるトラゾーを塗り替えてやりたくて。
握っていた手に力を込めたらトラゾーが花火から視線を外して俺を見た。
「クロノアさん大丈夫ですか?音大きすぎて驚いちゃいました?」
音に驚いたと思われたらしくて、それを利用してトラゾーにくっつく。
「うん、ちょっと驚いちゃったからくっついてもいい?」
「俺は構いませんけど……なんか、あつい、ですね…」
赤くなる顔と、そのあつい、という意味が気温のこととかを言ってるわけじゃないと気付いた。
疎くて鈍いと思ってたけどちゃんと俺のことをそういうことで意識してる。
「あ、えっと…俺、体温高いから、…」
「……あついね」
「っっ」
打ち上がっていく花火をまともに見れなくなったトラゾーの緑の目が捉えるのが俺だということに気分がよくなる。
ずっと抱えていたモヤモヤがほんの少し晴れた。
結果的にまた花火をちゃんと見せてあげられなかったけどトラゾーは何も言わなかった。
終始赤い顔のまま無言で俯いている。
お祭りのあと寂しさというものを感じて静かになる人もいるようだけどトラゾーのこれは違う。
「(何を考えてるのか手に取るように分かるな)」
「……あの、」
ぽつりとトラゾーが小さく声を出した瞬間、ポツリ、と上から何が落ちた。
「「?」」
同時に見上げたら、バケツをひっくり返したように突然雨が降ってきた。
「「うわっ⁈」」
天候が崩れるなんてのは天気予報では言ってなかったけど、空の気候は変わりやすいのか痛いほどの雨の降り方に2人して驚きながらマンションに走った。
エントランスを抜けてエレベーターに乗り、ようやく一息ついたと思ってトラゾーを振り返る。
大丈夫ではないだろうけど声をかける為に。
「びしょ濡れだね。トラゾー、大丈、…ぶ、…」
「いやぁ、めっちゃ濡れちゃいましたね。急にあんな雨が降るなんて…浴衣と甚平クリーニングに出さんとダメですねこれ…」
顔を振ったり滴る水滴を手で拭うトラゾーが困った顔で俺に言った。
「クロノアさん?」
トラゾーは濡れて肌に張り付く浴衣を煩わしそうにして胸元の布地を引っ張っていた。
明るい場所でくっきりと見える俺のつけた所有痕。
ぷつり、と自分の中で保っていたなにかが切れる音がした。
「あれ、クロノアさん?大丈夫で………ぁ、っ」
顔を上げた俺の顔がエレベーター内の鏡に映る。
「(俺、こんなカオしてトラゾーのことめちゃくちゃにしてんだ)」
その鏡の方へ後退りしたトラゾーに近寄る。
狭い空間の中じゃ逃げ場なんてないから簡単に角に追い詰めれた。
「トラゾー、さっきの帰り道、俺に何言おうとしたの」
不自然にならないように囲って赤い顔で困惑するトラゾーを見る。
「そ、…それ、は…ッ」
「俺さ、トラゾーにはもっと甘えて欲しいし我儘になって欲しいんだ」
「じゅ、充分我儘聞いてもらってます…っ」
濡れて張り付く浴衣の合わせの上からお腹を撫でた。
びくりと強張る腹筋をとんとん、とノックする。
「ひ…ッ、ぅ…!」
「さっき言いかけたこと教えて、…トラゾー」
声を落として囁くと顔を手で覆って消えそうな声でぽつりと言った。
「、……ッ、ぁ…の、っ………め、ちゃくちゃ、に、して、…ほしい、です…」
ポーン、と目的地に着いたエレベーターの扉が開く。
スマホを操作して遠隔で鍵を開ける。
カギを使ってドアを開ける時間さえ惜しいから。
「ぁ、あの、クロノアさんッ…や、やっぱ、待っ…!」
「ダメだよ。俺、ずっと我慢してたんだから」
手首を握る手を引いてドアを開け、それに押し付ける。
「ぅわっ…、くろ、んンッ!」
無意識なのか僅かに抵抗しようと動いた両手を上から押さえ込むようにして縫い付け口内を犯す。
「っふ…ン、ぅ、んん…っ」
トラゾーの濡れた浴衣に落ちたのは雨に降られて俺の髪から落ちた水滴か、浮かされて理性の箍が外れた俺の汗か。
「、…ッ、ぅ…ンく、ッ…っ!」
足に力が入らなくなったトラゾーはドア伝いにずるずると座り込んでいく。
だからと言って口は離さなかった。
息を奪うようにして。
「っ、は、ぁ…ッ!」
口を離した時にはトラゾーは完全に溶け切った顔をしてぼんやりと俺を見上げていた。
「は…ッふ、…ぁ、はァ…っ」
肩で息をするくらい苦しかったみたいでなかなか息の整わないのを見て加虐心が湧く。
「トラゾー」
「ふ、ぁ、⁇ぇ、っんぅぅ!!」
座り込んで囲われたトラゾーの後頭部を引き寄せてまた口を塞いだ。
逃げようとする舌を追いかけて絡めれば肩が大きく跳ねて鼻から抜ける声に変わる。
「ン、ふッ…は、ぅ…ゃ、く、ぅん…!」
「(もっとぐちゃぐちゃにしてやりたい。身体も、心も、全部)」
「んッ、ン…!、ぅ…ん!…ぷ、ぁ…っ」
閉じれずに半開きの口から見える吸われて赤くなってる舌。
飲み込みきれずに口の端から垂れてるどっちのか分からない唾液。
「……」
乱れた浴衣をずらして上裸にする。
「誰かに見られてたかもね、俺のつけた痕」
心臓のある辺りにつけた鬱血を撫でれば口を押さえたトラゾーが首を振った。
「違うの?てっきり俺は見せつけてくれてるのかと思ったよ。周りの人たちに、自分はこの人のモノなんですよって」
ぢゅっと重ねるようにして鬱血を濃くする。
汗ばんでるから少ししょっぱい。
「だ、ダメですッ…俺、汗かいて…っ」
「俺もだから。それに雨で流されてるから大丈夫だよ」
ツンと勃ってる乳首を擦れば肩を押してきた。
「んゃ、!ぁっ…ん、ンッ!だめ、だ、めッ!」
「ダメじゃないでしょ。トラゾーはここ弄られるの好きじゃんか」
爪先でカリカリと引っ掻きながら、もう片方は周りを優しく擦り上げる。
「ひっ♡」
「こんなえっちな身体になっちゃって…俺は心配だよ」
硬くなってきたのを摘んだり、クリクリと捏ね回す。
「ふぁあっ♡♡」
びくびくと身体が跳ねたトラゾーの下半身を見れば、薄い浴衣の合わせを押し上げるようにしてソコが勃っていた。
チラチラと見える太ももが俺を煽る。
「こんな刺激だけでどっちも勃たせてさ、」
「ゃ…だめ、で、す…ッ♡」
肩を押してた手を掴んでまたドアに押し付けた。
「かわい♡」
勃ってピクピクと震えてる乳首を強く吸えば快楽に弱くなったトラゾーは簡単にイく。
「んく、ぅううっっ♡♡♡!!!」
甘噛みして先端を舌でつつけば、嫌々しながら首を振る。
更に濡れた浴衣の中で、脚を閉じようとしていたから割り開かせる為にその間に自分の体を差し込んだ。
「ひぅんんッ♡♡!!」
いつもより着てる物の布が薄いせいで刺激が余計に伝わるらしい。
「ははッ乳首だけでこんなにイッて淫乱な身体だね♡」
「ちがッ♡ちぁぅ゛うっ♡♡」
「違わねぇだろ♡」
先端を潰しながら強めに引っ張れば顔を仰け反らせてイッた。
「ほら♡」
「も、っ♡もぉ♡、そこ…ばっか、やだぁ…っ♡♡」
「トラゾーは俺にめちゃくちゃにして欲しいんだもんね?だからめちゃくちゃにしてんだよ。…頭がばかになるくらい気持ちよくしてやるから、我慢ね♡」
丁度いい弾力のある胸を揉みながら乳首をすりすりと撫でる。
「ん゛ッ♡♡」
「こんなふうに焦らされるのもトラゾー好きだろ♡」
優しく撫でたり指で弾いてあげれば、割り開かれた脚が気持ち良さに開いては我に返るかのように閉じようとしていた。
自分から俺に擦り付けるようにして。
「トラゾー腰揺れてる。そんなに乳首気持ちいい?」
「ち、違い、まぁんんン゛ッッ♡♡!!」
爪で引っ掻けばまたトラゾーがイッた。
ぐったりとドアに寄りかかるように肩で息をしてる。
肌蹴させて露わになる上半身は上気して紅潮してた。
「トラゾー」
「は…ぃ、ッ♡♡?」
「ココに俺の欲しい?」
下腹部を押さえながら撫でれば硬直する身体。
腹筋をなぞれば、擽ったさだけじゃない感覚にトラゾーは困惑気味にきゅっと眉を寄せていた。
「めちゃくちゃにして欲しいの胎ナカのことだろ」
自ら誘うように開かれる脚をもっと開く。
最早、浴衣は結ばれてる帯のお陰であるだけのような状態だ。
「だったらどうして欲しい?トラゾーの我儘聞きたいな」
太ももの腹側を撫でて揉めばぴくりと腰が跳ねる。
パンツはトラゾーが射精したモノで濡れていた。
ドア一枚隔てた向こうで誰がいつ通るか分からないのに、こんなとこじゃ体を痛めさせるのも分かってるのに。
でも柔らかいベッドに押し倒す時間が惜しい。
一刻も早く、めちゃくちゃにしてやりたいから。
「く、…ッ、♡…くろのあさん、の♡♡…で…俺をっ♡、いっぱ、い、♡ばかに…♡してくだ…さぃ♡♡」
「ばかになる為に、トラゾーは何をしたらいいのかな?」
膝裏を持ってドアに身体を押し付ける。
浴衣が完全に肌蹴て下半身も露わになった。
「………は?」
眼下に晒されるトラゾーが履いていたのは普通のパンツじゃなかった。
「ぇ…、なん、ですか…♡?」
「(なんつーモン|穿いてんだこいつ…っ!)」
トラゾーが穿いてるもの。
所謂Tバックというもので、確かに浴衣や着物とか体の線が浮き出る服の時に穿くけど。
まさか穿いてるだなんて思わなかった。
後ろの紐みたいになってるところから見える、挿れて欲しくてヒクついてる場所が丸見えになっている。
「……こんな下着つけて、平気な顔して俺と歩いてたの?」
「へ、ッ♡…だ、だってっ!浴衣の時とかって、こういうの穿くって…♡♡」
「誰の入れ知恵」
下をずらして、自分のモノをトラゾーのソコに擦り付ける。
「ひぅんっ♡♡」
ちゅぷ♡ちゅぷん♡と湿った音がする。
早く欲しいと咥え込もうとするナカに先っぽだけを挿れては抜き、軽く突くように擦り上げた。
「あっ♡ゃ♡♡は、ッ、はゃく、ぃれ、っ♡♡」
「こんなもの穿いて、誰のこと誘おうとしてた」
屈めばお尻の形がはっきりと分かってしまう。
人によっては何も穿いてないのではと勘違いされてるかもしれない。
「そんなに変態趣味があるって思われたかったの?」
「ひ…ッ♡ん、ぁぅっ♡♡やン、ぅんんッッ♡!」
じゅぷぷッ♡じゅぷっ♡♡と少し挿れるのを進めれば嬉しそうにヒクつくナカにムラつき、誰の入れ知恵かも分からないそんなことをするトラゾーにイラッとした。
「それとも俺に襲われるの待ってた?何もしてねぇのにこんな濡らして」
先端だけ埋めてぐっ♡と前立腺を抉ると大きく喘ぐトラゾーの口を片手で塞いだ。
「ここ玄関だよ?トラゾーのえっちな声誰かに聞かせる気?んなことしたら俺許さねぇから」
右脚を俺の肩に掛けるように乗せて、左脚はそのまま膝裏を押さえ込んで大きく開かせた。
自由な右手でトラゾーの口を塞いで見下ろす。
「それで?この下着は誰の入れ知恵かな?」
塞いだ手の中で答えようと開いた口が”あ”の形をとった瞬間に、祭り会場で会った青い人だと判断した。
トラゾーが色々ありがとうございますと言った理由も理解して、切れた糸が焼けて消え去った。
「妬けるな…俺の方が和装の知識あんのに」
「くぉおあひゃ…!」
「俺もトラゾーをめちゃくちゃにしたい。トラゾーも俺にめちゃくちゃにされたい。利が一致してるからいいか…………ぶち犯す」
見開かれた緑が揺らいだと同時に最奥まで自身を埋め込んだ。
「〜──♡〜゛!_~〜~゛♡♡!!?─~゛~゛〜〜♡♡゛!!─、__゛~〜♡゛!!!」
口を塞がれたトラゾーのくぐもった声が俺の手のひらに振動として伝わる。
いいザマだと、にこりと笑えば肩に乗せていた脚や押さえ込んでる膝裏がびくびくと痙攣した。
「あれ?潮吹く前にメスイキしちゃった?あは、えっちな身体だね♡やっぱ、トラゾーは正真正銘俺の雌だよ」
「~〰︎〰︎゛_♡♡!_♡゛〜〰︎!~─゛─〰︎〜゛♡!!_、゛!~゛♡〰︎〜゛〜~~〰︎゛♡♡゛♡♡!!!」
ナカがきゅぅう♡と締まって俺のを離そうとしないトラゾーを押し潰すようにして上から打ち込む。
「鈍いくせにこういうことするからだよ。ま、頭ばかになるくらいぶち犯すから。トラゾーの我儘だもんね♡」
無理矢理犯してるみたいで、しかも場所が場所なだけに興奮と背徳感がすごい。
それはトラゾーも同じみたいで。
「夏祭りなんてのも口実で俺にこうされたかったんだろ?トラゾードMだもん、いじめられる方が好きだからね」
結腸を抜いてやると、ぼろっと涙がトラゾーから落ちていく。
でも嫌がってるやつじゃない。
「悦んでるじゃん♡」
ハートの浮かぶ緑は完全に蕩けている。
肩に置かれた脚で引き寄せられて、ぐちゅっ♡と繋がった部分からやらしい音が狭い空間に反響する。
奥を責められて小刻みに震えながらメスイキをずっとしてるトラゾーが俺を見上げた。
「…?」
塞いでる手のひらをトラゾーがチロ、と舐めたのだ。
「……いつからそんな悪いことするようになったのかな?こんな誘い方教えた覚えねぇけど?」
目を細めながら手のひらの中で、”ないしょ”と呟かれる。
分からずこういう挑発をしてくるのはトラゾーの悪いところだ。
「じゃあ、俺が手で塞がなくてもいいくらい声が出なくなるまで犯すから。ドMのトラゾーは嬉しいでしょ」
奥を叩きつけるようにして突いてやれば嬉しい嬉しいときゅんっ♡とナカが締まっていく。
「♡♡♡」
「来年はどうやって俺のこと誘ってくれるか楽しみにしてるね、可愛い俺のトラゾー♡♡」
食べたイチゴ飴も、射的で獲った物も、たこ焼きも、他のことも、最後に見た花火も。
俺の下で犯されて悦ぶ可愛い可愛い恋人によって全ては霧散した。
コメント
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ポン酢さんのおかげで夏最高。(アリガトウゴザイマス‼️)
ポン酢2さん、新作読ませていただきました🥀 クロノアさんの嫉妬、独占欲、執着…全部が重くて美しくて、胸がギュッとなりました。トラゾーくんが無自覚に可愛いから余計にそうなるんですよね。夏祭りの賑わいと、雨、玄関っていうシチュエーションの対比もすごく印象的でした。俺だけのものって感じ、たまらないです。 2人の歪だけど確かな愛情が伝わってきて、読んでて切なくも温かくなりました。次も楽しみにしてます🌙