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服を作る上で大切なことは着る人のことを考えながら作ることと着る人のことをよく知ることだとミノリ(吸血鬼)は言った。
たしかにそうだな。『ラ○ウェイで笑って』でもそんなこと言ってたから、それは分かる。
しかし……。
「わざわざ俺が採寸しなくてもいいんじゃないか?」
ミノリの作業部屋に呼んだのはルル(白魔女)とニイナ(殺し屋の中の殺し屋)とメルク(ハーフエルフ)の三人。
色々あって、この三人に似合う服を作ってプレゼントすることになったのだが、いくら俺の見た目が子どもだからって異性には変わりないんだから、そこはミノリ(吸血鬼)がするべきだ。
そんなことを俺が言うと、ミノリ(吸血鬼)は俺にこう言った。
「ナオト。服作りはもう始まってるのよ? そんなこといちいち気にしてたら、キリがないわよ」
「けどさー、俺が採寸してもミノリが採寸しても結果は変わらないだろ?」
「分からないわよー。あんたに体の隅々まで採寸された方が出来上がった服を着た時の印象が違うかもしれないんだから」
「そうかな?」
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)が小首を傾げるとミノリ(吸血鬼)は彼にメジャーを手渡した。
「はい、それじゃあ、頑張ってねー」
「あっ! ちょ、おい! ミノリ!!」
スー、トン。
ミノリ(吸血鬼)は彼の言葉が聞こえていないかのようにその場を去ってしまった。
しばらく沈黙が流れた後、彼は三人の方を向いた。
「あー、その……えーっと……まず誰から……」
その時、三人とも勢いよく手を挙《あ》げた。
「えーっと、いっぺんには無理だから、一人ずつにしてくれないか?」
その直後、三人は円陣を組んだ。
何やらヒソヒソと話をしている。
彼はその間、その場からいなくなろうとした。
彼が襖《ふすま》を開けると、ニコニコ笑っているミノリ(吸血鬼)が目の前にいたため、彼は苦笑しながら襖《ふすま》をゆっくり閉じた。
彼が振り返ると、ルル(白魔女)が服を脱いでいる真っ最中だったため、彼はすぐに彼女に背を向けた。
「ナオトー、服脱いだから、こっち向いてー」
「え? あ、ああ、そうだな。けど……」
「けど?」
「お前は今、その……裸《はだか》なのか?」
ルル(白魔女)は彼を後ろから抱きしめると、彼の左耳の耳元でこう囁《ささや》いた。
「さぁ? それは見てからのお楽しみだよー」
「お、俺は別に採寸するだけだからいいんだけどよ、お前が異性に体を見られるのが嫌《いや》なら、ミノリに頼んでもいいんだぞ?」
ルル(白魔女)は彼の頬に手を添える。
「別に私は嫌《いや》じゃないよー。というか、少し前に一緒にお風呂入ったじゃん」
「あ、あの時は湯気とか泡《あわ》でよく見えなかったから大丈夫だったというか、なんというか」
「大丈夫だった? 何がー?」
「そ、それは……」
彼女はニヤニヤ笑いながら、彼にこう言う。
「ねえ、ナオトー。もしかして、私の体を見たら興奮して狼《おおかみ》になっちゃうかもしれないから、採寸したくないのー?」
「そ、それはその……ま、まあ、そんな感じかな?」
「へえ、そうなんだー。まだ出るとこ出てないのに私を一人の女の子として見てくれるんだー」
ルル(白魔女)はニコニコ笑いながら、彼の心臓の音を聞いている。
「な、なあ、ルル」
「んー? なあにー?」
「お前はさっき、俺に採寸されても嫌《いや》じゃないって言ったよな?」
「うん、言ったよー」
「それは俺以外の異性でも大丈夫って意味か?」
「んー? どういう意味ー?」
「だからその……俺以外の男に採寸されても、なんとも思わないのかなーって」
「あー、なるほど。つまり、ナオトは私が他の男の人に取られるのが嫌《いや》なんだね?」
「いや、別にそういう意味じゃ……。いや、今のはそう解釈されても仕方ないか」
「あはははは! 変なナオトー」
「わ、笑うなよ。こっちは真剣に……」
ルル(白魔女)は彼をギュッと抱きしめると、静かにこう言った。
「ナオトだけだよ。私の全てを知られても構わないって思ってるのは」
「そ、そうなのか? けど、どうしてだ? 俺って、お前に何か特別なことをした覚えはないんだけど」
「それだよー、私がナオトのことを好きな理由の一つは」
「えっと、つまり、俺はお前のそばにいるだけでいいってことか?」
「その言い方は気に食わないなー。私はねー、困ってる人を助けたり、私たちのことを心配くれるナオトが好きなんだよー」
ルル(白魔女)はそう言いながら、彼の背中にしがみついた。
「そ、そうなのか? というか、離れろー」
「えへへへ、嫌《いや》だよー。採寸するって言うまで離してあげなーい」
「あー! もうー! 分かったよ! 採寸すればいいんだろ!」
「よくできましたー。じゃあ、こっち向いてー」
「お、おう」
彼がゆっくりとルルの方に目をやると、真っ赤なハーフトップと真っ赤なスパッツを身に纏《まと》った美幼女が立っていた。
「残念でしたー。ちゃんと下着は付けてまーす。ミノリちゃんの血でできてるから洗濯しなくていいんだよー。便利でしょー」
彼は顔を真っ赤にしながら、彼女から目を逸《そ》らした。
「あれれー? どうしたのかなー? 顔が真っ赤だよー」
彼女は彼の周囲でぴょんぴょん跳ねる。
「う、うるさい! ほら! 採寸するから、俺の指示に従え!」
「はーい」
ルルは嬉しそうに彼の指示に従い始めた。
その様子を見ていたニイナとメルクは自分たちもルルのようなことをしてみようと決心したのであった。