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第一章 その一
アムスは孤児だった。親の顔も知らず、ただ街をさまよっていた。何をすればよいか分からず、自分がどこにいるのかもよくわからない。どこにでもいる孤児。それがアムスだった。運悪く人に食べ物を恵んでもらえなかったアムスは、飢餓状態に陥った。
この魔国では、人々は必ず100ポイントの魔力を持って生まれてくる。いかに強くても、弱くても、その量は変わらない。しかし、魔力を使った後や飢餓状態だと魔力は減ってしまうのだ。そして、魔力がなくなると死んでしまう。魔力は勝手に回復する。魔力は養分と引き換えに倍増する性質を持っているからだ。
アムスの魔力は今23ポイント。持って3日というところだろう。魔力が尽きない限り死ぬことはなく、疲れも感じないが、危険信号である空腹という概念は存在する。そして、空腹である限り確実に魔力は消費されていく。しかし、食べ物を食べる以外に生き残る道はもう一つある。魔力を供給してくれる「魔石」を探せばよいのだ。秘境にしかない魔石はとても貴重であり、持っている人は殆どいない。周りに食べ物を恵んでくれる人は現れそうにない(正確に言うといるのだが、食べる前に他の人が取ってしまう)アムスは秘境に行こうと決意した。
しかし、そう簡単に秘境に入れるのなら、もう魔石は取り尽くしてしまっているだろう。秘境には魔物がおり、魔石を守っていると言われている。切りの悪い言い方になってしまうのは、帰ってきた人がほとんどいないからだ。しかし、地方の伝説に魔物の存在はきちんと記されている。それによると、魔物は一つ必ず魔石を持っており、魔石から魔力が供給されるので魔力が尽きることがないそうだ。人間が5人でかかっても倒せないらしい。
そんなことを思ってもしょうがないと、アムスはただひたすら歩いた。