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ーsideニキー
俺達は月の初め同じ花屋で同じ赤い花を買う。
告白だとか、感謝だとか、そういうものではない。ある人への弔いのためだ。
これは俺達4人で決めた絶対の決まりである。
今日は他3人の予定がどうしても合わず俺1人で来ている。
花屋に着き、ドアを開けると来客を知らせるための鈴が店の中に響いた
「いらっしゃいませ~」
いつものように店員の挨拶が聞こえる。
この店の店員は、お年寄りの女性と3週間前から働き始めたという若い赤毛の男性の二人しかいない。
失礼ではあるが、あまり繁盛はしていない店であった。
いつもの花を選び、会計へと向かう。
担当はあの若い赤毛の男性店員だった。彼は、
「いつもありがとうございます」
と感じの良い笑顔で対応してくれた。
こちらも気分が良くなった。しかし、
「(いつも?あの人に対応してもらったのは初めてだし、先月来た時は確かまだこの店で働いてなかったよな…?)」
と違和感を感じた。
「あのー」
「どうされましたか?」
当然聞き返してくる。
「俺とあなたはどこかで会いましたっけ?」
と思わず聞いてみると、彼は少し驚いた表情で
「何故そう思ったんですか?」
再び聞き返してきた。
「えーっと、あなたに対応されるのは今回が初めてなのに、『いつもありがとうございます』ってお礼を言われたから…」
と若干しどろもどろになりながらも俺が答えると、彼はフッと微笑み、
「なるほど、実はお客様によく似た方を知っているので、つい笑」
と答えた。
「あーーよくありますよね!そういうこと笑」
「(なるほど、それでか…)」
と考えていると、彼は頭を下げ
「紛らわしいことをしてしまって、申し訳ございません。」
と謝ってきた。俺は慌てて、
「いやいやいや笑、謝ることないですよ!
全然気にしてないので!
それに俺に似てるってことは相当イケメンってこ
とでしょ笑」
と冗談交じりに返すと、
「そうですね、お客様に似てとても格好良い方ですよ。」
と予想外の返答が来て、俺は何だか恥ずかしくなってしまった。
相手も恥ずかしくなったのだろう、その後暫く沈黙が場を貫いた。
気を紛らわそうと店の中の時計を見上げると、結構ギリギリの時間になっていた。
俺はつい、
「え!?もうこんな時間?!」
と馬鹿デカい声で叫んでしまった。
彼の肩がビクリと跳ねた。
「あっ、ごめんなさい」
某◯林製薬のコマーシャルの如く接頭語を付けて謝罪をし、足早に店から退出しようとする俺に
「もう行かれるのですか?」
と聞いてきた。俺は
「そうですね、今日は大事な日なので。」
と素早く返事をし外へ出た。彼は
「そうですか、それではまた。」
と見送りの言葉と共に笑顔で送り出してくれた。
俺は急いで目的の場所まで向かった。
ー「もう行かれるのですか?」ー
走っている最中にもあの哀しげな表情と声色が何故か俺の脳裏に焼き付いて離れることは無かった。
ーside?ー
「やっぱ覚えてないよなぁ…笑」