アクアside
目が覚めると、ぐるぐると視界が回っていた。
アクア)っ……
やばい。気持ち悪い、目眩がする。吐き気は…ない。熱は…ダメだ。高かったらもっと辛くなる。
アクア)った……
誰かにぶつかった。ミヤコさんかと思い顔を上げると、そこには冷たい表情をしたルビーがいた。その冷たさに、思わず背筋がぞっとする。前のような笑顔が嘘のように、微塵も感じられなかったからだ。
ルビー)邪魔、どいてよ
アクア)わ、るい……
ルビーは俺の言葉を無視し、自分の部屋に入った。
アクア)……
ごめん、ルビー。謝れば許されることじゃないけど、思うだけなら許してくれ。
時計を見ると、鏑木さんとの約束の時間が迫っていた。
アクア)時間…行かないと……
全身で体調不良を訴えてくるのを無視し、最低限の準備をして家を出た。
アクア)っ、はぁ…いっ、たぁ……
さっきより酷くなってる。周りの人に怪訝そうに見られているのを無視し、歩き進める。鏑木さんの前では隠せるようにしないと。
ぐるぐるとする視界の中歩いていると、誰かにぶつかってしまった。
アクア)っ、すみ、ませ……!?
謝ろうとする為に顔を上げると、そこにはぞっとする程に俺と似ている奴がいた。
カミキ)こんなところで会えるこんて光栄だね。星野アクア
アクア)カミキ、ヒカル……
最悪だ。こんな形で復讐する相手に会うなんて。
カミキ)体調悪そうだね
アクア)っ、お前には関係な……
カミキ)好都合だ
アクア)……は
関係ないと言おうとしたが、不穏な発言に言葉を失う。
カミキ)君を手に入れる機会に巡り会えるとは……今日は運が良いね
アクア)や、めろ…はなせ……
カミキ)そんな弱々しい力で抵抗されても、説得力がないよ
アクア)っ、おれを、どうするつもりだ……
カミキ)それは内緒。君には、少し眠ってもらうよ
アクア)ん……
カミキ)おはよう
アクア)……
前世を含めても最悪の目覚めをした。体調も悪いし、何より目の前にはあのカミキヒカルがいる。これ以上に不快な思いをした事があっただろうか。
カミキ)早速で悪いけど、アクアに決めてもらいたい事があるんだ
カミキヒカルはそう言い、俺の掴んで持ち上げた。
アクア)ぐっ…!
痛い。元々の不調と重なり、さらに苦しくなる。涙が出そうになるのをぐっと堪えながら、相手を睨む。
カミキ)君の不調は僕が治すから良いとして、問題はその後。君は僕に殺されるか、犯されるか選んで欲しい
アクア)っ、は……!?
予想を遥か斜めを超える発言に度肝を抜かれる。
カミキ)それじゃあ、僕は食材を買いに行って来るよ
そう言って、律儀に鍵を掛けてカミキヒカルは出ていった。
そう簡単に『はいそうですか』ってなる訳ないだろ。早くここから出ないと、奴が帰って来る。
アクア)けほっ、けほっ……!
アクア)やっば……
さらに酷くなっている。これ以上酷くなったら最悪死ぬ気がする。
アクア)……
少し、少しだけ休んでも、大丈夫。
それが間違いだとは気づかずに、俺はそのまま意識を手放すように眠った。
カミキside
玄関の前で倒れているアクアを見た時はつい笑ってしまったよ。あまりにも僕の予想通りの行動をしてくれるから、つい虐めたくなる。
カミキ)玄関の前で倒れたのを見た時は驚いたよ……勝手に出ようとするなんて、酷いじゃないか
僕はアクアに聞こえるように呟き、首筋にキスをする。気づいてくれるかな。首筋へのキスは相手への執着心なんだよ。
アクア)っ、やっ……!
カミキ)ふふ、そんなに怯えなくても良いじゃないか。僕と君の仲だろう?
首筋にキスしたのと同じところに、次はキスマークをつける。
アクア)あ、あぁ……!
カミキ)泣いちゃって…可愛いね。復讐がこんな形で終わるのがそんなに嫌なんだ
アクアは可哀想なくらいにガタガタと震え、見てるこっちも苦しくなるくらいに涙が溢れている。
カミキ)そうだよね。10年以上の間、復讐心を燃やしていたんだから
アクア)っ、なん、で…?
ああは、面白い顔。僕が君の事を知らないわけないじゃないか。血の繋がった父親なんだから。
カミキ)あぁ…君は本当に、泣かせたくなる
本当に、アクアは綺麗な涙を見せてくれる。殺してしまうのは勿体ない。
カミキ)君に選択肢をあげたけど、やっぱりなしにしよう
アクア)っえ……?
少しほっとしたような表情をしているアクアに笑いかける。僕の意図に気づいたのか、さっと顔を青くした。やっぱり、君は面白い…手放せないよ。
カミキ)君をぐちゃぐちゃにしてあげる
ルビーside
アクアがいなくなってから、3ヶ月経った。私にはどうでもいい。アイドル活動に支障はないし、困ることなんかひとつも、ない……
ルビー)あんなのお兄ちゃんじゃない…お兄ちゃんじゃないってば……!
なのになんで、こんなに涙が止まらないの。
ルビー)もうわかんないよ…!
アクア)ルビー
ルビー)っ!
ルビー)ア、クア…?
アクア)ルビー、遅くなって悪い
良かった。目の前にアクアがいる…そうだよね。アクアは私を1人にしないよね。
ルビー)…別に、心配してない
でも、もう私の前からいなくならないように、これだけは言わないと。
ルビー)おかえり、アクア
アクア)ただいま
私は知らない。もうアクアに会うことはできないことを。
カミキside
カミキ)…ふふ、面白い。実の妹にも気づかれないなんてね
可哀想なアクア。今頃、泣き叫んでルビーに助けを求めてるって思うと、ぞくぞくするよ。
カミキ)盗聴器を少し改造してまで、ネックレスに仕込んだんだから、ちゃんと最後まで聞いててね
家に帰るのが、こんなに楽しみになる日が来るとは思わなかったな。
カミキ)アイ、君はこの結末をどう思うかな?
終わり
コメント
8件
ありがとうございます。メルアク好きだけど、カミアクもいいなって思いました!
俺もこういう作品作れたらな、
神作過ぎた