❤️×💛
💛視点
「蜂蜜ってさ、なんかえろくない?」
「は、?」
久しぶりの休日。お互いに好きなことをして二人の時間を過ごしていたはずなのに、何故か僕は今元貴に組み敷かれている。
「なんかあの纏わりつく感じとか、甘い感じ。めっっちゃそそられるんだよね。」
「…はあ?」
元貴の下で困惑した声しか出せずにいる僕を他所に、上に乗っかる元貴は楽しそうに蜂蜜について語っている。確かに元貴の感性は何処か人と違うとは思っていたが、ここまでくると流石の僕でも理解できない。
「全然分かんないし、!そもそも蜂蜜は食べるものでしょ?えっちとかないよ!!」
「……」
ついつい声を大きくして反論した僕に、元貴はすっかりと黙り込んでしまった。でもこれに関しては流石の僕も譲れない。蜂蜜は絶対絶対えっちなんかじゃない!
「…そうだよね、蜂蜜って食べるものだもんね。」
そう言った元貴が僕の上から身体を退かした。思っていたよりもあっさりな態度に一瞬身構えたが、何だか先程よりも落ち込んでいるように見えて申し訳なさが湧いてくる。言いすぎたかな、なんて思いが後に引き慰めようとするが、当の本人はそそくさと何処かに出ていってしまった。
「……大丈夫かな。」
扉の閉まる無機質な音の後、1人だけになったリビングには静寂が訪れる。ポツンと呟いた言葉も、静けさに溶けて無くなるだけだ。1度起こしていた身体をまたソファに沈め、真っ白な天井を見つめる。部屋の外に元貴の気配も感じなく、何となく襲ってきた眠気に少しだけ目を閉じようとするといきなりリビングの扉が開いた。
「涼ちゃん!!!」
「っう゛、いきなり何…」
姿を確認しようと身体を起こす前に、勢いよく飛び込んできた元貴の重みを全身で受け止めてしまった。何処行ってたの、と聞こうとすると、僕の視界1面に何かのボトルのラベルが広がった。
「…honey?蜂蜜?」
「おー!涼ちゃん英語読めるんだ。」
「そんなに馬鹿じゃないし…ってか、うちに蜂蜜なんかあったっけ?」
ラベルに描かれていた英語表記を読み上げ、単語を発すると元貴が感嘆した声を上げた。手に握られている見覚えのない蜂蜜に首を傾げ、何故か楽しそうに笑う元貴の表情を観察してみる。
「急いで近くのコンビニで買ってきた。でねでね、さっき涼ちゃん蜂蜜は食べるものって言ったでしょ?」
「うん、食べるものだよ。」
その言葉を聞いた元貴が僅かに口角を上げ、徐に蜂蜜のキャップをあけた。そのまま容器を逆さにし、溢れ出た蜂蜜を口に含む。一連の行動を呆気にとられ見つめる僕の唇に、甘い唇が重なった。
「っ、!?ん゛ッ…う…」
突然のことに身を強ばらせ、僕の口の間を割って入ろうとする元貴の舌を必死に拒む。そんな僕の態度に少しだけ眉を顰めた元貴の冷たい手のひらが服の隙間から肌を撫でる。反射的に開いた唇の隙間から侵入した温かい舌と甘ったるい味が口内を満たす。
「ん゛んッ…♡っは、♡♡」
「…ん、あま。」
散々口内を好き勝手乱したあとやっと離された唇に、荒く肩で呼吸を整える。ずっと舌の上に残るピリピリとした快感と後に引く甘さに頭がおかしくなってしまいそうだ。
「は、ッ…はぁ…急に、なに…?」
「いや、涼ちゃんが食べるものだって言ったから。」
「????」
自信満々に僕の質問に返してくれたが、全くもって意味が分からない。確かに僕は蜂蜜は食べるものだと言ったが、急にキスをする理由になんてならない。しかも蜂蜜付きで。
「蜂蜜って喉に良いんだよね〜俺にピッタリじゃん?」
「、!?ちょ、なんで服捲って、!!ッ、!?」
そう言いながら伸ばされた手が迷いなく僕の服を捲りあげる。突然外気に晒された肌に垂らされた冷たい液体。どろっ、と肌をゆっくりと伝うような感触にすぐに正体を悟った。
「ね、やだ、っ!!つめたいし、!」
「冷たいよね〜すぐ俺があっためてあげる。」
肌に駆け巡る冷たさを上書きするように触れた温かい舌。腰のラインをなぞるよう蜂蜜を舐めとる動作に、ぞくりと快感が背中を走る。
「…ッ〜!?!?♡♡、もとき、っ!!いいかげんにして!!」
「、あー…蜂蜜単体だとなんかくどいね。でも美味しいし辞められなさそ」
顔を上げ、口端についた蜂蜜をペロリと舌先で舐めた元貴が不敵に笑った。本当に意地悪で、最低だ。なのに、
「…っ♡♡」
身体が期待してしまう。
「……りょーちゃん、辞めてよその目。俺歯止め効かなくなる。」
僕の頬に手のひらを触れ、じっと真っ直ぐ見つめるその瞳にはだらしない顔をした自分が映っていた。目の前の快感に溺れるような虚ろな瞳に、完全に緩みきった口元。そんな僕とは反対にギラギラとした瞳でゆっくりと頬を撫でる元貴の手が、僕のズボンに触れた。その動作だけでもじわりと下半身が熱を帯びるのが分かる。
「もとき、♡」
縋るように元貴に手を伸ばすと、優しく微笑んだ元貴の唇が僕に触れた。今度はゆっくりと、味わうように舌を絡め合う。もう蜂蜜は残っていないはずなのに、先程よりも酷く甘く感じた。
「…ね、かわいいよ。」
「、っは…ぁ♡♡、?♡」
口を離した元貴の指先が僕の唇の輪郭をそっと撫でる。何だかその仕草がとても愛おしく、撫でる手を取り、僕の頬にピタリと寄せてくっつけてみる。すぐに感じた手のひらの温かさ。それだけで心がじわりじわりと満たされていく気がした。
「ほんとかわいい、」
優しく頬を撫でてくれる元貴がゆっくりと口を開いた。いつの間にか愛おしそうな笑みを浮かべる口元が、音を立てずに言葉を語った。
H O N E Y .
コメント
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リアルに「ふほっ」という声が出てしまった…最高すぎます‼︎