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タイトル:頼もしくて
うちは中学三年生。名前は弥生。どこにでもいる普通の女の子。だけど、最近は心がドキドキする。原因は隣の席の大雅くんだ。大雅くんは、サッカー部のエースで、ちょ〜〜っと無愛想だけど、誰にでも分け隔てなく接する優しい人。そんな彼と同じ班になったのは、二学期が始まってすぐのことだった。
最初は話しかけることすら緊張して、大雅くんの顔色をうかがうだけの日々。そんな中、ある日の放課後、班の活動で教室に残って掲示物を作ることになった。みんなが雑談しながら作業をしている中、うちは作業に没頭していて、つい手を滑らせてカッターで指を切ってしまった。
「いった…!」思わず声を上げると、近くにいた大雅くんがすぐに気づいて駆け寄ってきた。「大丈夫か?」そう言って、彼は自分のポケットからハンカチを取り出し、うちの手をそっと包んでくれた。その瞬間、心臓がドキンと大きく鳴る。「これ、ちゃんと止血しないといけないから、保健室行こう。」彼はそう言って、うちの手を引いて教室を出た。
保健室までの短い距離が、すごく長く感じた。彼の手は思ったより大きくて温かいくて。ドキドキしっぱなしのうちは、まともに言葉を返すこともできなかった。
保健室に着くと、先生が優しく手当てをしてくれた。「これくらいなら大丈夫よ」と言われて安心した。
教室に戻るとき、うちは意を決して口を開いた。「ありがとう、大雅くん。助かったよ。」すると大雅くんは少し笑い、「気にすんなよ。同じ班なんだから、当たり前。」と返してくれた。その笑顔が、どうしようもないくらいかっこよくて、うちは目をそらすしかなかった。
その日から、うちは少しずつ大雅くんと話せるようになった。朝の「おはよう」や、授業中のちょっとしたやりとり。進展、進展。特に特別な言葉じゃないのに、彼と話すたびに胸がキュンとする。この気持ちはなんだろう? 好きなのかな? でも、彼にはきっと他に好きな人がいるんだろうな…。私は、多分クラスメートのひとり。そんなふうに思って、気持ちを伝える勇気なんてうちにはなかった。いやいや、まず無理っしょ。
ところが、卒業式が近づいたある日、大雅くんが突然、うちを呼び止めた。「弥生、ちょっと話がある。」放課後の誰もいない教室。緊張で心臓が爆発しそうだった。これは…………………もしや……?
「…何?」と小さな声で聞くと、大雅くんはまっすぐうちの目を見て言った。「俺、弥生のことが好きだ。」その言葉が信じられなくて、うちは固まってしまった。「急にこんなこと言われても困るかもしれないけど。」
涙が出そうだった。私はクラスメートのひとりとして見られてるんじゃなくてちゃんと特別って思われてる。嬉しい。嬉しい、!嬉しくて、胸がいっぱいで、どう言葉にしていいかわからなかったけど、気づけば「うちも…好きだよ。」と答えていた。大雅くんは驚いた顔をして、それから安心したように微笑んだ。「よかった…。これからよろしく。」その言葉が、今までで一番の宝物になった。
こうして、うちらは始まった。今も頼もしい彼の手の温度はちゃんと覚えてる。