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桃色青春高校の合宿先に、1台のバスがやってきた。
おそらく、練習試合の相手となる高校の選手たちが乗っているのだろう。
そのバスから、1人の選手が降りてきた。
目つきの悪い、短髪少女だ。
「へへっ。オレは覇闘峯山(はとうほうざん)高校の頭目・獅堂! お前らが桃色青春高校だな?」
「ええ。俺がキャプテンの龍之介です」
「へっ、弱そうな学校だな。くれぐれも気をつけるこった」
「気をつける……? 何をですか?」
龍之介が眉をひそめる。
すると、獅堂はニヤリと笑った。
「ああ。うちの連中は喧嘩っ早くてね。もしもの話だが……デッドボールでもぶつけられたら、どうなるかわからねぇぜ?」
「……ふむ」
凄む獅堂。
だが、龍之介は冷静だった。
「分かりました。なら、今日はド真ん中のストレートで勝負します」
「あ?」
「デッドボールなんて、絶対に投げませんよ。それで文句はないですよね?」
「おいおい、それじゃオレが脅したみたいじゃねぇか。オレはあくまで、可能性について忠告しただけだぜ?」
「大丈夫ですよ。むしろ、ちょうどいいでしょう。実力差を考えるとね」
「……ちっ! 言ってくれるじゃねぇか。なら、見せてもらおう! その実力差とやらをな!!」
獅堂は舌打ちすると、仲間の元へと戻っていく。
彼女の言葉通り、覇闘峯山高校の野球部員たちは喧嘩っ早そうだった。
野球のユニフォームを着ていなければ、『どこかの不良がグラウンドに乗り込んできた』と勘違いしていただろう。
「っしゃあ! てめぇら、試合前に軽くノックするぞ!!」
「「おうっ!」」
覇闘峯山高校の野球部員たちは、一斉に守備練習を始めた。
意外と言うべきか、守備はしっかりしている。
「へぇ、やるじゃないか」
龍之介が感心する。
そんな時、1人の少女が近づいてきた。
「あの……りゅーさん?」
「どうした? マキ」
「だいじょうぶでしょうかぁ? なんだか、とっても怖そうな人ばかりですぅ。初めての試合ですし、ちゃんとできるか不安で……」
「心配するな。マキの実力なら大丈夫さ。打撃も守備も、しっかり練習しただろう」
「でもぉ……」
「それに、何かあっても俺がいる。君は、俺が守るから」
「……っ! りゅーさん……!!」
龍之介の言葉に、頬を赤らめるマキ。
そんな2人の間に割って入るように、アイリとノゾミが顔を出す。
「はいはいはーい! 2人の世界を作らないでね!!」
「龍先輩! わたしたちもいるってことを忘れないでもらいたいです!!」
「ごめんごめん。忘れてたわけじゃないんだ。みんなのことは頼りにしているし、守ってみせるさ。だから、安心してくれ」
「ふふ……。頼りにしますよ、龍様」
最後にミオが声をかけてきた。
彼女はウェイトリフティング部を掛け持ちしており、ずば抜けたパワーを持つ。
喧嘩において助けなんて要らない気もするが、龍之介はあえてそれを口にしなかった。
「それじゃ、オーダーを確認しておこうか」
2099年の今、AIや機械の技術が向上し、練習試合でも電光掲示板を活用するようになっていた。
手間も費用も、100年前とは比べ物にならないくらいに抑えられている。
彼は仲間と共に、電光掲示板に視線を向けた。
先攻・桃色青春高校
1番左・セツナ・BBCDF*
2番中・ノゾミ・CEADB*
3番投・龍之介・BCCCB*
4番一・ミ オ・BADCE
5番捕・ユ イ・ECEAB
6番遊・アイリ・EDBCA*
7番二・マ キ・DECEB
8番右・ロボ0・EEFFF
9番三・ロボ9・FFFEE
*は左打者
先発投手・龍之介
最高球速145km 制球力B 持久力C 変化球B
チーム全体評価
打撃D 走塁D 守備D 投手B 控え選手F 総合力D
後攻・覇闘峯山高校
1番左・鷹野・ECDCE
2番右・獅堂・EBDBE
3番三・竜崎・FCDCE
4番一・虎牙・ECDCE
5番捕・熊村・FCECE
6番遊・鹿丸・FDECD
7番中・鷲尾・FDECD
8番投・猿渡・FEECE
9番二・猫宮・FEECD
投手・猿渡
最高球速130km 制球力E 持久力E 変化球E
チーム全体評価
打撃E 走塁E 守備D 投手E 控え選手G 総合力E
「……2番に強打者? ヤンキーみたいな連中なのに、ちゃんとしたオーダーを組んでいるじゃないか」
龍之介が呟く。
2099年の今、プロ野球にはセイバーメトリクスが浸透している。
だが、高校野球は必ずしもそうではない。
1番が出塁して2番が送り、3~5番が帰す。
それが、高校野球のセオリーだと考える監督や選手も少なからず存在していた。
「油断できないね、龍之介」
「そうだな、アイリ。……しかしそれはそれとして、この試合は是非とも勝ちたいところだ。合宿の成果を試すには、絶好の相手だしな」
「うん。ボクもそう思うよ。だから……勝とうね」
「ああ!」
2人は頷き合う。
そして、7人全員で円陣を組んだ。
「俺たちの力を見せる時が来た! 全力で挑もうぜ!」
「「「おーーっ!!」」」
桃色青春高校野球部の部員たちは、気合いの入った返事をするのだった。