テラーノベル
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「…いい、…ここでいい、から…」
「………いいのか?」
確認するような声。 路地裏を見回す。 ゴミ箱、 室外機、 錆びたパイプ。 ロマンチックとは程遠い背景だったが、 そんなことはどうでもいいとばかりに、クラピカはクロロの首にしがみつくように腕を回した。
その行動はクロロの質問への肯定でもあった。
クロロは空いた手でクラピカの後頭部に触れる。 指が綺麗な金髪に沈む。目を閉じたクラピカに、今度はさっきより深く口づけた。路地裏の冷えた空気に、二人の吐息だけが白く混じる。
クロロの指がクラピカの髪を梳くように動く。 後頭部を支える手つきは丁寧で、けれど逃がす気は微塵もない力加減だった。壁際に押し込むように半歩詰め、クラピカとの隙間がなくなる。
息継ぎの一瞬、唇の先で囁いた。
「…はぁ…本気で帰りたくなくなるな、これ」
自分から連れ込んでおいて何を言っているのか。 しかしその声には冗談の色がなかった。路面に転がった買い物袋の中で、小包の甘納豆が傾いている。
もう一度、今度はクラピカの下唇を軽く噛むようにして口づけをする。 暗い路地に、湿った音が小さく落ちた。
段々と激しくなるキスにクラピカの口からは甘い声が漏れ始める。
「っあ、…ん、」
声を聞いた瞬間、クロロの目の奥に灯った光が変わった。
クラピカの腰を引き寄せ、 体ごと密着させた。 空いていた左手がクラピカの顎を捉え、 角度を変えてさらに深く。 舌先で歯列をなぞるように侵入しながら、 壁際のクラピカに逃げ場を与えない。
背中がコンクリートの壁に押し付けられる。 冷たい壁面とクロロの間に挟れて、温度差が肌を刺したけれどクラピカ自身の体は、もうそんなものを気にする余裕を失いつつあった。 漏れ出る声が路地の暗闇に吸い込まれていく。
「っん゙、んぅッ…‥は、ふぅ……」
しばらく息継ぎをさせてもらえず、意識が飛びそうだったクラピカはクロロの肩を思いっきり叩く。
反応は全く無かったが、何度目かでようやく唾液の糸を引きながら顔を離した。 荒くなった呼吸を一つ整え、潤んだクラピカの目を至近距離で見下ろす。
「…ぁ、悪い、苦しかったな」
口では謝っているが顔は全然悪びれていない。
クラピカは必死に息を整え、クロロの首にまわしていた腕に力をこめる。酸素を失いかけていた身体だからかビクビクと痙攣を続けている。
「……へぇ…キスでこんなになっちゃうんだ」
「…はぁ…ぁ、…うる、さい…」
クラピカを抱え上げるように壁と自分の間に閉じ込めた。片膝がクラピカの脚の間に割り込む。
「…もっと聞かせて」
低く落ちた声がクラピカの耳朶を震わせた瞬間、 再び唇が塞がれた。 先ほどまでとは比べものにならない深さで。 路地裏の湿った空気に、濡れた音と押し殺しきれない声だけが満ちていく。 遠くの踏切が鳴り始めた。
キスの合間に、 首筋に歯を立てた。 甘噛み。 それから舐め上げるように鎖骨まで唇を滑らせる。
「….んっ、……あ…」
甘い息を吐きながら背中を反らせ、声が出ないよう手で口を塞ぐ。クロロはその様子を見て、目を細めた。 その手首を掴み、ゆっくりと引き剥がす。手首を壁に縫い止めるように押さえつけ、空いたクラピカの口から零れるものを全部、聞くつもりだった。
シャツの裾から手を入れた。 素肌に触れた指が、脇腹から肋骨を辿るように上へ這い上がっていく。 冷えた指だった。 外気に晒されていた手と、クラピカの中の温度差。
クラピカの背が跳ねた。 声を殺そうとしても、 指の動きに合わせて喉の奥から勝手に音が漏れた。
「…ん、いいこ」
その一言が褒め言葉なのか煽りなのか、判別がつかない。 どちらにしてもクラピカにとっては毒だった。 膝が震え始めたクラピカの体重を、クロロは片腕で難なく支えている。
「ぁ、ふぅ…」
支えていた膝をさらに押し上げる。
もう自力で立っているのが難しい状態だった。それを分かっていても尚クロロは手を止めない。肌を這っていた指が胸の突起に辿り着き、 爪の先で掠めるように触れた。円を描くように、焦らすように。何度も触れてきた場所だ。反応の仕方も、どの程度で声が裏返るかも、全部この手は記憶している。
壁に抑えていた手を解放したかと思えば、その指でクラピカ自身のベルトに手をかけた。 金具の音。 かちゃり、 という小さな音が路地裏に反響する。ベルトを緩め、布越しにその場所を手のひらで押さえた。 まだ直接は触れない。体温だけを伝えるように。
クラピカが息を呑み、羞恥心からか、目をそらす。
熱を持った顔を上げさせて、潤んだ緋色の瞳を正面から見据えた。
「ちゃんとこっち見て」
「…ん…ぁ、…」
言われるがままに開かれた目。焦点が揺らいでいる。路地裏の暗がりと、それを覆うクロロの輪郭だけを映して。
その目を見た瞬間、布の上から抑えていた手にゆっくりと圧をかけた。形を確かめるように親指の腹が先端を擦る。クラピカの膝から完全に力が抜けた、それを支えるクロロの腰が、ぐっ、と密着する。お互いの体の熱が布一枚を隔ててぶつかった。
クロロは顎をクラピカの肩口に落とし、耳元で囁いた。
「もうこんなになってる」
布地が既に湿り始めていることを、この手は正確に感じ取っている。
今度は直接、ベルトの内側に指を滑り込ませた。
「ん゙、ッ…ぁ…」
指が包み込むように動いた。根本から先へ、一度だけ。それだけでクラピカの体が大きく震えたのが、密着した胸越しに伝わってくる。
──綺麗。
自分の手の中で崩れていく恋人はこの世界で何よりも美しく、愛おしかった。
先走りを塗り広げるように親指で先端を撫でた。静寂の中でひどく淫靡に響く。緩急をつけて、裏筋を爪先でひっかくように刺激し、また全体を包んで握り込む。もう一方の手でクラピカの頬を包んだ。涙が滲み、妖艶な姿にクロロは熱情した。
「ぅ゙…ぁ、ッ…」
動かす指の速度があがった。根元から指先までを一息に扱きあげる。
ぐちゅ、ぐちゅ、と粘ついた音がする。
クラピカはクロロの肩に顔を埋めることしかできない、声を抑えることなど、とうに諦めていた。
手のひらの圧が強くなる。先の膨らんだ部分を重点的に、執拗に。もう片方の手の指先が後ろにまわった。布の隙間から、その奥の窄まりに指の背が触れる。挿れはしない。ただ、そこにあると知らせるだけ。
前から後ろ、両方からの刺激。クラピカの思考が白くとびかける。腰が勝手にビクビクと跳ねて、クロロに擦り付けるような動きになった。
「…我慢できず自分で動くとは…とんだ淫乱だな」
「あ゙ぁ…ッ♡」
クラピカが体を震わせ、達しそうになったとき──クロロは唐突に指を止めた。
あれだけ容赦なく追い立てていた手が、ぴたりと動きを止める。
クロロが顔を挙げさせると、快楽の波が突然断ち切られ、縋るような目をしているクラピカと目が合った。
「まだ」
それだけ言って、手を離した。濡れそぼった指先をクラピカの目の前に持ち上げ、見せつけるように舐めた。
目が据わっている。獣の目だ。
「イキたいならちゃんと名前を呼べ」
路地裏に風が吹いた。表通りでは何も知らない人間たちが家路を急いでいる。 その日常のすぐ裏側で、 こんなことが起きているとは誰も思うまい。
「ん゙ぅ、ぁッ♡♡」
名前ではない。呼んだのはただの嬌声。
濡れた手でクラピカの唇に触れた。
「だめ。やり直し」
意地が悪い。限界まで煽っておいて、最後の一線だけは渡さない。クラピカの身体はとっくに壊れかけているのに、あと一押しが与えられない。
腰を押し当てた。布越しに硬くなった自身をクラピカの太腿の付け根にわざとぶつける。自分も余裕がないくせに、それでも待っている。
「ほら」
催促の声が掠れていた。クロロ自身も息が乱れている。額に薄く汗が滲んでいた。
「あ゙ッ…はぁ、ン……く、ろろぉ、…も、はやく‥」
──名前が耳に届いた途端、唇の端が上がった
「よくできました」
ご褒美とばかりに、止めていた手が再び動いた。
今度はさっきまでの比ではない。3本の指で根本を固定し、残りの指で先端の裂け目を抉るように刺激する。同時に、後ろに添えていた指がずるりと中に沈んだ。
第一関節まで中の指を曲げる。前立腺の位置を知り尽くした指が、そこを的確に圧迫した。
クロロは指を器用に動かしながら、肩口に顎を押し当てる。
「…全部出していい」
クラピカの視界が弾けた。
「‥ぁ‥‥〜〜〜ッッ♡」
背中が弓なりに反り、クラピカはクロロの手の中で果てた。びくびくと痙攣する身体を両腕で抱き留める。白濁が指の間から溢れ、路地の地面を汚した。
余韻に震える体を支えたまま、額に静かにキスを一つ落とす。
しばらくふたりとも動けなかった。
汚れた手を見下し、それからクラピカの蕩けた顔を見て、満足そうに笑った。
「帰れる?」
「…はぁッ‥ぁ、…かえ、れる…」
言葉とは裏腹にクラピカの膝はがくがくと笑っていた。クロロが腰に回した腕だけが、今この身体を繋ぎ止めている唯一の支柱だ。
「…ふはっ、」
「なに、笑っている」
──力が抜け、一人では立てなくなった人を見て笑うとは…。
力強く睨みつけるがクロロから見れば弱々しく見上げてくる、可愛らしい子犬にしか見えなかった。
睨みつけてくるクラピカの顔を両手で挟んだ。ぐに、と頬を潰 すように。
「かわいいなって思って」
「‥ッ、かわッ…」
紅潮していた顔がもっと真っ赤になったクラピカの頬から手を離し、代わりに目の前にしゃがみ、背を向ける。
「ほら、乗れ。 おぶってやるから。」
おんぶ。お姫様抱っこではなく――いや、 どちらにしてもこの路地を出るところを誰かに見られたら大惨事である。
しかしクラピカは動こうとせず、クロロの背中に名残惜しそうな視線を送る。
「……ッ…つづきは…?」
「…お前バカか。今ここで全部やったら、風邪引くだろ」
十一月の夜風が路地を吹き抜けた。 確かに、クラピカは薄着のまま汗をかいた体で外気に晒されている。 このまま放置すれば確実に冷える。 そこだけは本当に、まともな判断だった。
クラピカは諦めたようにクロロに体を預けたが、預けた場所は背ではなく、肩だった。
「おぶらなくていいから…肩を貸してくれ」
はいはい、と適当に返事をしたクロロだったが、クラピカを支える腕にはしっかりと力がこもっていた。
コメント
2件
こうゆうのホント好きです💞