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駅前のベンチに座るチー牛君は、いつもより落ち着かない様子でスマホを何度も確認していた。

手の中の時計は、約束の時間を三分過ぎている。

チー牛君(心の中)「……遅いな。まぁ、あいつのことだから寝坊してるんだろ」

そう思った瞬間、後ろから聞き慣れた声が響いた。

ボクっ娘「チー牛君っ!おまたせ〜〜っ!」

振り返ると、そこには普段とまるで違う姿の彼女が立っていた。

いつもの制服じゃなく、薄い水色のワンピース。

肩まで下ろした髪がゆらゆら揺れて、少しだけ香る甘いシャンプーの匂い。

チー牛君「……誰だお前」

ボクっ娘「ひどっ! ボクだよ、ボク!似合ってない……?」

チー牛君「いや……似合ってる、けど。思ってたよりちゃんとしてるな」

ボクっ娘「“思ってたより”は余計!これでも頑張って選んだんだからねっ」

頬をふくらませるボクっ娘に、チー牛君は小さく笑った。

その笑顔を見て、ボクっ娘も少し照れくさそうに目をそらす。

モールへ

二人は駅を出て、少し歩いたところにある大型ショッピングモールへ向かった。

休日のせいか、入口は人で溢れている。

ボクっ娘はその光景に少し圧倒されながら、チー牛君の袖をつまんだ。

ボクっ娘「ねぇ……人多いね。ボク、こういうのちょっと苦手かも」

チー牛君「……じゃあ、離れんなよ」

そう言って、チー牛君はそっと手を差し出した。

ボクっ娘は一瞬きょとんとして――それからゆっくり、手を繋いだ。

ボクっ娘「チー牛君……手、あったかいね」

チー牛君「……冷たいよりマシだろ」

照れくさそうに顔を逸らすチー牛君。

その横顔を見ながら、ボクっ娘は小さく笑った。

ゲーセンにて

モールの中をぶらぶら歩いているうちに、二人はゲームセンターに辿り着いた。

ボクっ娘が目を輝かせて指を差す。

ボクっ娘「あ!見てチー牛君!このクレーンの中の猫ぬいぐるみ、めっちゃ可愛い!」

チー牛君「取れるわけないだろ、あんな確率低いやつ」

ボクっ娘「ふふふ、チー牛君、ボクが挑戦してみせる!」

勢いよく百円玉を投入して、レバーを握る。

……が、アームはぬいぐるみにかすりもせず。

ボクっ娘「む、むずかしい……!」

チー牛君「だから言ったじゃん」

ボクっ娘「チー牛君、やってみてよ。アニメのフィギュアとか取るの得意そうじゃん」

チー牛君「……そういう偏見やめろ」

そう言いながらも、チー牛君は代わりにレバーを握る。

集中した顔でタイミングを見計らい、アームを動かす。

そして――

“ガシッ”

猫のぬいぐるみがアームに掴まれ、箱の中へ落ちた。

ボクっ娘「うそっ!?すごい!!チー牛君神!!」

チー牛君「……しゃーなし」

ボクっ娘「いやいや、これしゃーなしのレベルじゃないよ!?ほんとに取ってくれるとは!」

チー牛君「欲しかったんだろ、これ」

彼が差し出したぬいぐるみを、ボクっ娘はぎゅっと抱きしめた。

少しだけ顔を赤らめながら、小さな声で呟く。

ボクっ娘「……ありがと、チー牛君。今日いちばん嬉しいかも」

チー牛君「……別に」

照れ隠しに視線を逸らすチー牛君の耳が、ほんのり赤く染まっていた。

映画館

昼を過ぎ、モールの上階にある映画館へ。

二人が選んだのは、人気アニメ映画の最新作。

ボクっ娘「あ〜〜、この作品ずっと見たかったんだよね!」

チー牛君「前作、俺の家で一緒に見たやつだろ」

ボクっ娘「そうそう!チー牛君、泣いてたやつ!」

チー牛君「泣いてねぇよ」

ボクっ娘「うそー、あの時ティッシュ二枚使ってた!」

チー牛君「細かいな……」

くだらない会話をしながら、映画が始まる。

スクリーンの光が二人の横顔を照らす。

クライマックスのシーンで、主人公が仲間を守るために立ち上がる。

――ボクっ娘は横目でチー牛君を見る。

彼は真剣に画面を見つめていた。

その横顔に、心臓がどくんと鳴る。

ボクっ娘(心の中)「チー牛君って、こういうときほんと真面目なんだよね……なんか、好き」

スクリーンの光の中、ボクっ娘はそっと微笑んだ。

デートの終わり

映画が終わると、二人は駅前のカフェに入った。

アイスコーヒーとショートケーキを前に、ボクっ娘が満足げに笑う。

ボクっ娘「今日、すっごく楽しかった!ありがと、チー牛君!」

チー牛君「別に……しゃーなしで付き合っただけだし」

ボクっ娘「ふふ、またそれ言う〜。でもね、ボク、嬉しいんだよ」

ボクっ娘はストローをくるくる回しながら、少し真剣な表情になる。

ボクっ娘「チー牛君がボクのこと“しゃーなし”ででも見てくれてるの、なんか安心するの」

チー牛君「……安心?」

ボクっ娘「うん。チー牛君って、言葉はツンツンしてるけど、ちゃんと優しいじゃん」

チー牛君「……そんなことない」

ボクっ娘「あるよ。今日だってボクのためにぬいぐるみ取ってくれたし、手も繋いでくれたし」

チー牛君「……それは、その……人多かったし」

ボクっ娘「うん。だから“しゃーなし”でいいの。ボク、それが好きだから」

その言葉に、チー牛君は何も言えなくなった。

顔を少し伏せて、冷めかけたコーヒーをひと口飲む。

チー牛君「……お前、変わってるよな」

ボクっ娘「よく言われる〜」

チー牛君「でも……まあ、俺も嫌いじゃない」

その一言に、ボクっ娘の頬が一気に赤く染まる。

思わず笑みをこぼしながら、小さく呟く。

ボクっ娘「……ありがと、チー牛君」

夕暮れ

駅の改札前。

空はオレンジに染まり、街のざわめきが少しずつ遠ざかる。

別れ際、ボクっ娘がチー牛君の袖をそっと掴んだ。

ボクっ娘「ねぇチー牛君」

チー牛君「ん?」

ボクっ娘「また“しゃーなし”で、デートしてくれる?」

チー牛君「……しゃーなしな」

ボクっ娘「ふふっ、約束ね」

そう言って、ボクっ娘は小さく手を振り、改札をくぐっていった。

彼女の背中が人混みに消えていく。

チー牛君はその姿をしばらく見つめ、ぽつりと呟いた。

チー牛君「……しゃーなし、な」

その言葉にはもう、少しの“本音”が混じっていた。

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