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鈴木灰音🐬🥞
#東京グール
1. 予感
カネキが去った後の廊下で、神くんはふと足を止めた。 「……出てきたらどうだ、壱番。お前の鼻なら、さっきの『旨そうな匂い』を嗅ぎ逃すはずがないだろう」
神くんが誰もいない空間に向かって冷たく言い放つ。 すると、天井の影からするりと、一人の少年が降り立ってきた。 壱番・阿良々木暦。 寝癖のようなアホ毛を揺らし、どこか飄々とした、それでいて底知れない瞳をした少年だ。
「やれやれ、相変わらず冷たいねリーダー。少しは『お疲れ様』とか、可愛い助手の葵ちゃんみたいに労ってくれてもいいんじゃないかな?」 阿良々木は、神くんの横を通り過ぎながら、カネキがいた場所の空気を深く吸い込んだ。
「……なるほど。確かにこれは、普通の怪異じゃない。人間でもない。……あっち側の『バケモノ』だね」
神くんはアクアさながらの冷徹な表情で、阿良々木を見据える。 「……阿良々木。お前が面白がって首を突っ込むのは勝手だが、アイツには手を出すな。アレは俺の……『計画』に必要なピースだ」
「計画? 嘘をつけよ」 阿良々木はニヤリと笑い、神くんの顔を覗き込む。 「君の心臓、さっきから吸血鬼の僕にも聞こえるくらい、うるさく鳴ってるよ。……あれかい? 噂の『推し』ってやつに会えて、理性がパンクしちゃったかな?」
神くんの瞳が、一瞬で凍りつくような冷たさに変わる。 「……死にたいのか、壱番。お前のその再生能力が、俺の孤独の呪いにどこまで耐えられるか、今すぐ試してやってもいいんだぞ」
「おっと、怖い怖い」 阿良々木は両手を上げるが、その表情には余裕がある。 「でも安心しなよ。僕は女の子の味方だけど、困っている友達(リーダー)の味方でもある。……あの白髪の少年がこの学校を壊そうとするなら僕が止める。でも、君が彼に『喰われたい』と願うなら、それを見届けるのも僕の役目だ」
そこへ、お湯を被って人間に戻ったばかりの葵が走ってくる。 「あー! 阿良々木先輩! また神くんをいじめてるんですか!?」
「いじめてないよ、葵ちゃん。リーダーが『恋の病』で熱を出さないか心配してただけさ」 「恋!? 神くん、本当ですか!? 相手は誰!? 先輩ですか!? それとも……」
「……黙れ、葵。阿良々木、お前はさっさと四番(エレン)の暴走でも止めてこい。奴がまた『駆逐してやる』とか言いながら旧校舎を壊し始めてる」
阿良々木は「はいはい」と肩をすくめ、影の中に消えていく。 一人残された神くんは、震える手で空のポケットを探り、再び舌打ちをした。
「……阿良々木。あいつは鋭すぎる」 神くんは、アクアのような冷静な思考で、これからの「カネキ」「七不思議」「学校の崩壊」のシナリオを書き換えていく。 だが、そのシナリオの端書きには、自分でも消せない一文が残っていた。
(――カネキくんに、もう一度会いたい)
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