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「えっ?」
 「あ、俺はお酒飲まないですけど。まだ18なんで。でも、お酒飲みながらの方が悩み相談ってしやすくないですか?」
 「たしかにそうですね」
 「はい。あ、もちろん、葉山さんがいいならですけど」
 そういえば土岐さんは凄いイケメンな常連さんと付き合ってるんだった。土岐さんなら俺の気持ちを分かってくれるかもしれない。年下に恋愛相談なんてなんだか恥ずかしいけど、今頼れるのは土岐さんしかいない。
そう思って俺は決心する。
 「ぜひ、お願いします」
 俺がそう言うと、土岐さんはニコッと笑って言う。
 「了解です」
 そして今、居酒屋でお酒とおつまみを頼み、土岐さんに恋愛相談中だ。俺は吸血鬼の事は隠しつつ、今までの事を話す。
 「ん〜、なるほど。」
 土岐さんは少し考えてからまた口を開く。
 「つまり今の状況は、葉山さんはその同居人さんが好き。それで、その同居人さんはお友達が好き。それで、本当はその同居人さんの恋を応援したいけど、葉山さんは一緒にいたいと思っちゃうってことですね?」
 「そういうことですね」
 「なるほど…。まぁ、なんで一緒に暮らすことになったかは知らないですけど、ずっと一緒にいる人なんだし、いつかバレると思うので、いっその事ちゃんと伝えた方がいいんじゃないですかね」
 土岐さんのその言葉に俺はドキッとする。
 「無理ですよ!告白なんて…」
 「でも勇気出さないと、何も解決しないですよ?」
 「それはそうだけど…あ、土岐さんはあのイケメン彼氏さんとどうやって付き合ったんですか?」
 「えっと…偉二さんが花火大会の夜に、急にキスしてきて」
 「えっ、急にキスですか!?」
 (さすが、イケメンはやることが違う…)
 「うん。俺もびっくりしたんだけどね。その時はまだ偉二さんのこと友達としか思ってなくて、その後1回距離置いてからデートに誘ったんだけど」
 「え、土岐さんからですか?」
 「そう。ちゃんと向き合わなきゃって思ったから」
 ちゃんと向き合う。俺も諒真とちゃんと向き合わないといけないのかもしれない。
 「それで、そのデートを通して偉二さんのこと好きって気づいて、その日に告白したんですよ」
 「へぇ〜、土岐さん、やりますね」
 俺がそう言うと土岐さんはふふっと笑う。
 「気づいたら告白してただけですよ。葉山さんも、勇気出してみたらどうです?」
 「勇気…」
 無理だ。告白なんて、俺には出来ない。
 (恥ずかしいし、怖いし…)
 俺が苦悩していると、土岐さんが何か思いついたかのように言う。
 「あ、そうだ」
 「なんです?」
 「お酒飲むと本音が出やすいって言うじゃないですか」
 「はい」
 「酔った勢いで告白しちゃえばいいんじゃないですか?」
 「酔った勢い…」
 「そうです。お酒の力を借りれば、言いづらいことも言えるかもしれないですよ?」
 (お酒の力を借りれば、俺も勇気を出せるかも…)
 「まぁ、冗談で…」
 土岐さんが何か言いかけているのを無視して俺はお酒をグッと飲み干す。
 「ちょっと!冗談ですって!」
 「土岐さん、止めないでください。俺だって、やれば出来るんですよ」
 俺はそう言って、店員さんを呼ぶ。
 「すみません!おかわりください!」
 そして数十分後、俺は見事に酔っ払ってしまった。吸血鬼だから血を飲めば満足で、お酒なんて滅多に飲まなかったから、自分の容量を理解していなかった。酔いすぎたかもしれない。頭がふわふわする。それに、体を動かす気力がない。
 「葉山さん、大丈夫ですか?」
 「ん、だいじょ〜ぶっ」
 「大丈夫じゃないですね。もう帰りますか。明日も仕事ですし」
 「ん〜、帰る〜」
 「じゃあ行きますよ。ほら、立てます?」
 そう言って土岐さんは俺を立たせようとしてくれたが、上手く立ち上がれず、俺はその場に座り込む。
 「むり〜、動けない…俺、ここで寝る…」
 「いやちょっと葉山さん、しっかりしてくださいよ」
 (あぁ…眠い…もう寝ちゃお…)
 「おやすみなさい…」
 「えっ、ちょっと、葉山さん」
 そう言う土岐さんの声を聞きながらも、俺はそのまま眠りについた。
 「…さん。瞬さん、起きてください」
 (諒真の声…)
 諒真の声がして目を開けると、諒真が俺の顔を覗き込んでいた。
 (なんで諒真が…)
 「瞬さん、帰りますよ」
 「ん…」
 (頭がふわふわする…)
 「大丈夫ですか?立てます?」
 「ん…諒真…」
 (なんか凄い甘えたい気分…)
 「はい、諒真です。迎えに来ました。一緒に帰りますよ」
 「りょ〜ま〜」
 俺は諒真に抱きつく。
 「ちょっと、瞬さん。何してるんですか」
 「りょ〜ま、すき」
 「えっ?」
 「だ〜か〜ら〜、す〜き」
 俺がそう言うと、少し沈黙が走った後、諒真が言う。
 「…瞬さん、飲みすぎ。とりあえず帰りましょ?」
 「ん…帰る…でも…立てない…」
 俺がそう言うと諒真は俺の方に背中を向けてしゃがみこむ。
 「ほら、俺の背中乗ってください」
 「ん…おんぶ…?」
 「そうです、おんぶです」
 その言葉を聞いて俺が諒真の背中に乗ると、諒真は立ち上がる。そしてそのまま店を出た。
夜道を歩きながら、諒真は言う。
 「瞬さん、なんでそんなに飲んだんですか?」
 「だって…諒真が…」
 「俺ですか?」
 「ん…諒真が…好き…だから…」
 「…そうですか」
 (あんま反応してくれない…)
 そこから諒真も俺も喋ることなく、家まで歩いて行った。
家に着くと、諒真は俺をソファーに下ろす。そしてそのまま立ち去ろうとする諒真の腕を俺は掴んだ。
 「どうしたんですか?」
 「行かないで…」
 「えっ?」
 「俺と…ずっと一緒に…いて…」
 俺がそう言うと、諒真はおれの方に体を向ける。
 「水取ってくるだけですよ。だから大丈夫です」
 そう言って諒真はかがんで俺の頭を撫でた後、慌てて俺の頭から手を離す。
 「あ、すみません…」
 「ん〜ん、もっと撫でて…?」
 俺がそう言うと、諒真は何も言わず、俺から目をそらした。
自分でも怖いくらい諒真に甘えてしまう。思ってることが口に出る。これがお酒の力なのだろうか。
 (土岐さんみたいにデート誘お…)
 「りょ〜ま、デート…して…」
 諒真は相変わらず目を逸らしたまま何も言ってくれない。
 (やっぱり拓実くんが好きだから…?)
 俺の心臓がぎゅっと掴まれたような感覚になる。
 「ねぇ、りょ〜ま、拓実くんじゃなくて…俺にして…」
 俺がそう言うと、諒真は俺の目をまっすぐ見る。
 「瞬さん」
 (やっと喋ってくれた…)
 「ん…何…」
 「それ以上可愛いこと言われたら俺、我慢できないです」