テラーノベル
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何でも許せる方のみお進みください。
「きょうも……仕事と書類が多いんだゾ…」
統領という名の、大佐というあいまいな地位からのし上がった革命者、
ことグルッペンは、怨み言のような言葉を吐きながら、
朝っぱらから書類の山に顔を埋めた。
そんな彼は、知る由もない。
まさか、自分を観察しているものがいるなんて──
「ふぅ〜ん、アレがグルッペン、ね」
シャオロンside
「はい??」
ボブと明るい茶髪が特徴であり、チャーミングポイントをといっても
過言ではない豚さんピンは、今日もしっかりとニット帽につけられていた。
「だから、ちょっと新しくできた国の調査してきてくれへん??」
目の前にいるのは自分の統領。そして手元には先ほど渡された書類。
そして俺は、新たな任務として、潜入調査が与えられたのだ。
「…は」
俺は理解できない、というように困惑の声をもう一度上げる。
というか実際に理解できていない。
「はぁ??だから──」
「潜入調査…??やんな」
統領がもう一度口を開いたとき、俺は自然とその言葉を遮っていた。
「お、おお、せやで?」
突然俺が割り込んだものだから、統領は少し驚きながら肯定して見せた。
「…わかった、すぐ、今から出発するわ」
「え、ちょ、今日からわざわざ行かんでも────」
そうとだけいい、俺は扉に手をかけ、ふらふらと外へ出る。
衝撃がまだ収まっていないのだろう、ぼーっとしながら俺は静かに準備を進めていく。
荷物をもって、静かに俺は祖国であるR国をあとにする。
「…潜入」
そして、広大な土地のど真ん中で、俺はしっかりと空を仰いだ。
「よっしゃぁあああああああっつ!!!!!」
「クソみたいなやつらから解放されたでーーーーっッツ!!!!」
シャオロンは祖国が大嫌いであった。
そして、ダクトから見える景色は、書類の山に埋もれ呻く続領の姿である。
さすが、始めたてのひよっこということもあり、大変忙しいみたいだ。
そして、そんな統領に対する、シャオロンの密着調査が始まった。
まず、朝日が程よく訓練所を照らし始めたころ、統領は時計をしり目に立ち上がる。
「朝食の時間なんだゾ」
「やと言うと思ったで!!!!」
統領のつぶやきに答えるようにして扉を壊す勢いで入ってきたのは、
緑のフードを被った青年である。
その後ろには、なぜか黒焦げの金髪青年もいた。
「グルッペンの書類作業があまりにも長かったから、
兵士たちはみんなもう飯とったねん!!」
「だから、忙しいグルッペンを配慮して俺らが飯を直々に作ったってわけ!!!」
金髪の青年は元気よく声を上げると、ぐっ!と、サムズアップした。
「なるほどなるほど」
「なんでコネシマ、お前は黒焦げなんだ??」
統領が疑惑の声を上げるもお構いなし。
ゾムが後ろに隠し持っていた皿をさっとグルッペンの書類の上にのっけた。
「…..これは??」
「「オムライス!!!!」」
「なぜ黒焦げなのだ??」
「「召し上がれ!!!!」」
「話を聞くんだゾ…」
グルッペンはあきれたようにしてため息を吐くと、
目の前の黒焦げの物体に目をやる。
あきらかにまずそうである。
「グルッペンなんか見た目に合わず小食やから、
それに配慮して少なめにしといたで!!」
ゾムは顔を輝かせるようにして笑うと、ぐっ!とサムズアップした。
せめて別の場所でも配慮してほしいものである。
統領はしぶしぶと口の中に運ぶと────
見事にぶちまけた。
シャオロンは爆笑したい気持ちを必死に抑え、朝食を終えたグルッペンの後を追う。
どうやら次は町の様子を見に行くらしい。
たしかに、戦争という名の革命で、ボロボロになったはずの町は、
今や復興を遂げたというものなのだから、
統領が顔をのぞかせるということも大切なのだろうな、とシャオロンは思う。
「グルッペン様!!」
「来てくださったのですか…!!」
たくさんの声援を浴びながら、あたたかな人々に囲まれる統領。
そんな光景を、うちの国では見たことがない。
「…いいなぁ」
多くの人に囲まれ、笑みを浮かべる統領の背中を見つめながら、
シャオロンは自然と言葉を漏らしていた。
うちの国は、一言では表せない。
好きだけど、嫌い。それに尽きる。どっちかというと、好きだった。
という思いはあるだろう。悪行にまみれていた統領が死に、新しい統領ができた。
しかも、その統領はなんだかんだ真面目に国をよりよくしようと日々奮闘している。
しかし、引き継いだ幹部達は、統領にならい好き勝手やっていたらしい。
そんな彼らは、真面目な統領が気に食わなかったのか、
ことあるごとに国を悪く変えていく。いくら俺や統領がどうあがいても、
作られた傷など癒えないものだった。
「………俺も、こんな風になりたい」
風にかき消されるような声。だけれど、その声は、
一人の者にしっかりと拾われていた。
「なればええやん」
「えっ!??」
そこには、今朝見た金髪の青年、否、幹部ことコネシマがいた。
「憧れるだけじゃ、手に届かんと同じやねんで」
「ほら!!こっちやで!!」
そいつはいきなり立ち尽くしていた俺の手をつかむと、
統領のところへと引っ張っていった。
「グルッペン!!侵入者捕まえたで!!」
にっこりと笑いながら逃がす気もなくかっちりと腕をつかみ離すそぶりもない。
「ほほぉ…」
また面倒事がきた、と言わんばかりにグルッペンは顔を歪めた。
「コネシマ、お前はいつも侵入者がいたら容赦なく殺すではないか」
「こいつ気に入ってん!!!」
「はぁ…」
統領様は、額を抑えると、赤い目で俺をしっかりと見据えた。
「…お前、名前は?」
「お、おれは…」
「シャオロン」
これが、俺の人生を大きく変えた一手だった。
回覧ありがとうございました。
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#ドズル社
コメント
2件
もしかしてサムネ少し変わりました…?? 今回も良かったです…!! 次誰が来るのか楽しみです〜!!