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私はこういう青桃が好きです。
課された仕事をこなし、ミスしては怒られて、ミスしなくても怒られて。遅い、違う、なんでできない。怒鳴られる言葉を降り注がれてそれを俺は受け止めることしかできない。
家に帰ってはもうなにもやる気が失せて、家事なんて後回し。目の前に積み重なった洗濯しなきゃいけない服の山。使っていないからこそ汚れているキッチンにはどうも目をつけたくない。ただただ、まるで俺みたいに何も無い部屋にぽつんと置かれたベッドに飛び込み、そのまま意識を手放す。
…それだけの生活にすっかり慣れてしまっていてもうこれが当たり前だと思っていた。
でもそれはどうも違うようで
世の中は感染症が広まった。…広まってしまった。そのため自粛期間なんて名付けられては外出することに制限されてしまって、ミーティングもタスクも全てオンライン上で行うものが増えた。それでも会社には出社しなければいけなくて今日も眠たい目をこすりながら電車に揺られる。
「…ふわぁ…っ」
趣味程度に始めた歌い手活動、何の意味もなく、ただただ限界社会人による自己満歌ってみた投稿。英語アレンジで歌ってみたを上げてみても当然、素人にはそうそう大勢からの注目を浴びることはできなくて、まわっても1000回再生行くかどうか。
でもそんなとき、俺のスマホに届いた一通のメールが後の俺を作り出した。
「…おはようございます」
「おはようございます!…コーヒー、淹れましょうか、?笑」
出社して早々にそう言われてしまうのだから相当眠い顔してしまっているのだろうな。シャキッとせねば、と深呼吸をした後に俺の机の上に置かれたコーヒーを一口飲むと一気にギアがかかる。
メールの内容は歌ってみたに対する反応のものでたくさんの嬉しい言葉をずらずらと並べられたものだった。そんなものをみたら嬉しくなってしまって…きっとこのギアがかかった理由の一つとしてはこれの理由もあるのだろう。
「いふ!お前ぽけーっとすんな!!」
ぐるっと世界が明るくなったような気がする。いつもだったら嫌だななんて負の感情がぐるぐると渦巻くだけなはずなのにどうも調子が良い意味で狂ってる感じがする。
「…ふうっ…」
まるで、コーヒーにミルクを入れ、それをぐるぐるかき混ぜて真っ黒から茶色に染まったように俺の心はいつもとは違うなにかに満ちていた。それが幸せなのか、承認欲求なのかわからないけれど。それでも、…もう少しだけ頑張ってみようと思えた。
「お前、俺に惚れ込みすぎだろ」
昔話のようにかるーく目の前の彼に話してみたら思い通り、ふはっと吹き出しては俺の背中をばんばんと叩いてくる。痛いって言っても辞めてくれないから腕を掴むとようやっと俺の背中から離れるその腕。
「…別に、ただないこのことが大好きなだけやで」
なんて言って社長室を出ていったら今度は机をバンバン叩く音を背景に思わず俺は吹き出してしまう。…今日も可愛いなぁ、なんて思いながら社内のコーヒーメーカーでコーヒーをつくって一気に飲み干した。
end