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初ストーリー、頑張って描きます。
この作品は、完全に一次創作です。既存の作品を真似するようなことは一切しておりません。
『秋ノ雫』
story1
「これは…、かあさんとソラの秘密だよ?」
「うんっ!かあさん!」
これが、母との最期の会話だった。
今日も今日とて、憂鬱だ。 この施設に入れられてから、6年ほど経った。
ここは、疾野那児童養護施設。近場で最も、評判が良い施設だ。
だが、実際、評判がいいような所ではない。
「ソラちゃーん!皿洗いと洗濯、よろしく!」
「あっ、はぁい!」
「ソラちゃん、昨日の書類、誤字があったんだけど。どうすんの?」
「すぐ修正いたしますっ!ごめんなさい!」
この様に。
世間では、これを「いいところ」と言うのだろうか?
嘘だ。こんな所、最悪で、汚れてて、すごくいやなとこ。
こんな所に入れた親族を憎んでも憎んでも、気が晴れない。
だが、こんな事より、親族にはもっと深い恨みがある。
それは、謝ろうと、切腹しようと、絶対に許されない事。私はあいつらを絶対許さない。
そんな事を考えていると、
「ソラちゃっ!」
と、誰かに呼ばれた。「誰か」といっているが、本当は誰か分かっている。
「どうしたの?ラナ。」
『ラナ』。私の3つ下で、9歳の女の子。本当の妹のように思っている、大切な存在。
「ふふっ、なにかお手伝いすること、ありますかっ!」
そういって笑うラナに、私は毎日癒されている。
「そうだなぁ、じゃあ、お皿拭き!お願いしてもいい?」
「うんっ!できたら、なでてねっ?」
「いいよっ。じゃあ、なんかあったら呼んでね!」
「はぁい!」
ぱたぱたと台所に向かうラナを見届けてから、私は自分の仕事に移った。
「えっと…、明日いらっしゃるお客様は….。」
色々と書き記していると、扉を静かにノックされた。
「はーい…。」
軽く返事をすると、「失礼しますっ…!」といって、ラナが入ってきた。
「ラナ?どうしたの?」
「えへ、おさらふきおわったから….」
「ふふっ、うん、ありがとう。」
頭を優しく撫でると、ラナは嬉しそうに笑った。
「んふぅ!じゃあ、ラナちゃんは!これからミナトたちのとこいってきまぁすっ!」
自分にちゃん付けか….、と苦笑いしながらも、ラナを愛おしく想う。
そして、ミナト達の世話まで任せてしまってもいいのかという少しの罪悪感が湧く。
「戻ってきたら、また撫でてあげよ…。」
そんな独り言を呟き、黙々と作業を進める。
「大変そうだね。」
ことっ、と、机に薔薇柄のマグカップが置かれる。
私のマグカップだ。
「えっ、ルリ..!?いつからいたの!?」
「あっははっ!今さっきだよ〜!」
面白そうに笑うルリを、私は軽く叱る。
「も〜….。ほんとにびっくりしたんだからねっ!」
「はーい、ごめんなさい。」
気持ちのこもっていない謝罪。これは絶対反省してない。
「なんか、笑ってくれればって思ったんだけど、笑ってるの私だけだね。」
今度は、淋しそうに笑う。
こういう可愛いところ、憎めないし。
私に「笑ってほしくて」、という動機もすごく嬉しい。
「これ、ここあ。甘いもの飲むと、心安らぐよ。」
微笑むルリは、ほんとうに女神みたい。
「…ありがとね、ルリ。」
「こちらこそだよ!」
こんな場所でも溢れる笑顔を、私は大切にしたい。