〜 attention 〜
・季節外れ
(作品の中だとバリバリ夏です)
・息抜きBL小説
・何でも許せる方のみ見て下さい
教室から見える空は随分と青く、綺麗に見えていた。
とても近くに見えるのに実際はとても遠くて、いくら手を伸ばしても届かない。
教室でただ呆然と空の青を見つめていると、図書室の扉が開く音が聞こえてきた。空を見つめるのを辞め、俺は音のした方を向く。
そこには、俺の良く見知った人が居た。
驚きで心臓が跳ねる。思わず、その名前を口にする。
「えっと…來要先輩?
どうして此処に…」
「たまたま学校に来ていたんだ。
そしたら、図書室にお前が居るのが見えて。」
爽やかな笑顔でそう告げる彼を見て、何故か胸が痛くなる。
__嬉しい筈なのに、彼が来てくれたら良いと心の何処かで考えていた筈なのに、どうしてだろう。
俺が何も言えずに居ると、先輩は困惑している俺の隣に座った。
真隣でこうして顔を見ると、やっぱり整っているんだな、と思う。学校でもトップクラスを誇る程のモテ男という渾名は伊達じゃないのだろう。
そんな人が何故俺に構うのかは謎だが、その事自体に嫌悪感は無い。ただ、それを知った女子生徒に背中を刺されそうな気はするが。
「…態々、それの為だけに来たんですか?」
「もしかして、嬉しくなかったのか?
それはすまなかった。」
「いや、そういう訳じゃないですけど…。」
これだから人たらしは。これで一体今までどれだけの人を狂わせて来たのだろう、と言う思考が巡った。…いいや、少なくとも本人は無自覚なのだから辞めておこう。何より彼が可哀想だから。
何も言えなくなった俺が口篭っていると、先輩はにこーっとしながらこちらを見つめてきた。確実に反応を見られている__と思う。最悪だ。
夏真っ盛りなせいかエアコンの風はとても冷たくて、汗も直ぐに冷える。静かな図書室では、エアコンの低く唸る音が聞こえてきた。
「…そういえば、なんだが」
突然、先輩が何やら話を切り出してきた。何だろうと思いながら、ひとまずは利き手に徹する事にした。こくりと頷くと、先輩は続きを話し始める。
「今度の祭り…一緒に行かないか?」
「え…
祭り、ですか?」
心臓が一際強く跳ねた気がした。先輩の顔を伺う。とても真剣な顔で、真っ直ぐこちらを見据えていた。
先輩は人気者だ。明るく爽やかで、男女問わず誰からも愛されている。友達や、一か八かを狙う女子生徒達からも誘いを受けていない訳がない。それなのに、高校生活最後の夏祭りという貴重な時間を、俺なんかと過ごして良いのだろうか?
__いいや、絶対ダメだ。そもそも、先輩が俺なんかと一緒に居て良い筈が無い。俺と先輩では、あまりにも住む世界が違いすぎる。
断り文句なんていくらでも出てくるのに、いざ口に出そうとすると喉に突っかかって出てこなかった。嬉しいけれど、これも先輩の為。そう自分に言い聞かせ、適当に理由を付けて断ろうとしたのに。
「…どうだ?
もしかして、俺と回るの嫌か?」
嫌な訳が無い。心の中で首をぶんぶんと横に振り、それでも考える。先輩が俺と回りたくて誘って来ているのなら、好意を無下にしない方がいいのではないだろうか?そんな考えも頭に巡った。
でも、やっぱり夏祭りの日に先輩の横を歩ける気がしない。現に、図書室で二人きりになっただけでも、こんなに心臓が煩いのに。
それはそれはたっぷり考えて、やっと答えを出した。手のひらは固く握っていたからか、じんわりと汗をかいていた。
「…俺で、よければ」
鬱陶しい蝉の鳴き声すらとても遠く聞こえる。いつもはあんなにも勉強の邪魔をしてくると言うのに、今だけはその音は思考を掻き乱してくれなかった。
隣で、先輩がくすりと笑うのが見えた。
〜 登場人物紹介 〜
ㅇ黒桐 維月
読み¦クロキリ イツキ
年齢¦16歳(高校一年生)
身長¦170cm
主人公。受け。正義感が強く、他人を放っておけない。
來要とは家が近く、幼い頃から交流があった。
ㅇ南條 來要
読み¦ナンジョウ ライ
年齢¦18歳(高校三年生)
身長¦178cm
主人公の親友件先輩。攻め。明るく豪快で、細かい事は気にしない。
家が近所なので維月の事は気にかけており、それと同時に幼い頃から可愛がっている。
コメント
1件
登場人物紹介を見た瞬間、良いわぁって思ってしまいました…😌 先輩後輩が本当に大好きだから読んでいてニヤケが止まらなくなっていました…最高です…。