テラーノベル
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⚠︎夢‥既存キャラとの絡み有り
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知らない天井、知らない空気、知らない人たち。
目を覚ました瞬間から、
この世界は最悪だった。
「は〜⋯てほんとなんなの、ここ⋯」
足元に視線を落とせば、緑のジャージに“162”の数字。
胸元を引っ張って軽く舌打ちした。
「ださっ、まじありえないんだけど」
あたりをぐるぐる見渡しても、知ってる顔なんてどこにもない。
少しでもマシな場所を探すみたいに、私は人の隙間を縫って歩いてた。
(うっわ……みんな目死んでる。
てか、あの人泣いてる⋯笑?なんで泣いてんのあの人⋯⋯こっちが泣きたいんだけど)
そんなふうにイラついて歩いてたら、
——ふと、視線の先に、見覚えのある後ろ姿が見えた。
「⋯⋯え?」
立ってたのは、背が高くて、黒髪で、
ちょっと不機嫌そうな男の人。
——あれ、あの人⋯⋯まさか、
「⋯⋯ねえ。あんたナムギュ、でしょ?」
自分でもびっくりするくらい、自然に声が出た。
相手がゆっくりとこっちを振り返る。
切れ長の目に軽い寝ぐせ。間違いない。
「⋯ジユ、、だよな?」
「うん。よく覚えてたね」
ナムギュの顔が一瞬だけやわらいだ。
その空気に、私もちょっとだけ力が抜けた。
「たしか事務所の近くで何回か会ってたよね。
すれ違うくらいだったけど、顔見て、すぐ分かった」
「お前、練習生だったよな?」
「だった、ね。今はただの162番ってわけだけど」
わざと笑ってみせたけど、
ナムギュの視線は、どこか疑問がありそうだった。
「⋯よく来たな、こんなとこに」
「来たくて来たんじゃないし。
⋯でも、あんた見つけたとき、ちょっとホッとしたのは事実」
ぼそっとつぶやいた私に、ナムギュがふっと笑った。
「かわいくねぇな。もっと素直に言えよ」
「は?うっさい。言って後悔したから取り消す」
「ダメ。今のでちょっと俺、うれしかったから」
——ああ、なんかもう⋯
ムカつくし、調子狂うし、
でもたぶん、もう少しだけ、この人の近くにいたい。
そんなことを思ってたら、
耳に嫌なアナウンスが流れてきた。
——“第一ゲームを開始します”。
一瞬、ナムギュがこっちを見た気がした。
でも私は気づかないふりして、こう言った。
「⋯⋯別に。ゲームくらい、余裕でしょ」
本当は、手がちょっとだけ震えてたくせに。
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