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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#年の差
水無月 京
84
#大人の恋
月詠 涼
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部屋の前まで来て、夢心地のまま鍵を開ける。
朝出ていった時と同じままの自分の部屋を見て、ようやく現実に戻ってきたような気がした。
「いったい何だったの」
このアパートには、二ヵ月前に越してきた。
母が死んで、以前住んでいたここより広いアパートの家賃は、私には負担の大きかったからだ。
「……お母さん、ただいま」
母の遺影に手を合わせ、制服をハンガーにかけ、シャワーを浴びに浴室へ向かう。
私と母は、ふたりで生きてきた。母は生涯、結婚をしなかったのだ。
シングルマザーというと悲壮なイメージがあるけれど、彼女に関してはそんなことはなかった。
母には、自分の親の遺産だというお金がいっぱいあったのだ。
元気で明るい母は、しっかりものでもあって、親の遺産を元手に株で一財産を築いていた。
一年の初めには新しい下着、新学年の始まりには新しい文具。そういった節目を大切にする人で、私はきちんとした家庭のお子さん、という目で周囲から見られていた。だから、片親だと知っていた人は少ないと思う。
『静乃は笑っていてくれたらいいのよ。お母さんが頑張れるために、お願いね』
母が私に要求したのは、ただ、笑顔でいることだけ。
丸顔でほわんとした雰囲気の私は、彼女にとっては癒しのぬいぐるみみたいなものだったのだろう。
そして私は、母の要求をはねつけるほど意思の強い子どもではなかった。
ぼんやりと笑って、学校に行って、勉強しているだけでいい子だと言われるのなら楽なことこの上なかったのだ。
『大学、行くよね? 静乃は賢いもん』
そう言われたときも、断る理由が見つからなかった。
やりたい勉強があったわけでもないのに、ただずるずると社会に出るのを先延ばしにするつもりで大学に行った。
コメント
1件
「笑顔でいることだけ」という母からの要求に、ずるずる従ってきた静乃さんの心の描き方がとてもリアルで胸に迫りました。明るくしっかり者の母と、それを支える娘——その関係性の裏にあるもやもやした空気が、短い回想でしっかり伝わってきます。ぬいぐるみみたいな存在、という自己認識の表現が切ないです。大学に進んだ動機も「逃げ」だったと自覚しているところに、この後の展開への期待が湧きますね。