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彼に見られると、全てを曝け出せるのは、どうしてだろう。
――お前は他の奴には撮らせない。俺だけが、お前の全てを知っていいんだ。
そんな風に思わせぶりなことを言うのなら、その瞳に私だけを映して欲しい。
そう願っているのに、
私は知ってしまった。
彼の中に、
他の女性が居ることを……。
私だけを見てくれないのならいっそのこと離れたいのに、
彼は狡い人だから、
私を傍に置きたがって、離してはくれないの――。
「初めまして、遊佐 千鶴と申します。よろしくお願いします!」
都内のとある撮影スタジオに一人の女性新人モデルがマネージャーに連れられてやって来た。
彼女の名前は遊佐 千鶴。
これから撮影の為にメイクをされるであろう彼女は素っぴんなのだけど、その必要が無いくらいの透き通った肌に長い睫毛の大きな瞳。
乾燥を知らないくらいに潤いぷっくりとした唇と、既に完成されているのではと思う程に整った顔立ちをしていて周りを魅了した。
そんな彼女は高校三年の秋に大手事務所の社長から直々にスカウトされたことをきっかけに卒業後上京し、一人暮らしをしながら本格的にモデルの道へ進むことを決め、本日は初の撮影日だったりもする。
「遊佐さん、あちらが本日担当するカメラマンの西園寺さんです」
「あ、そうなんですね。それじゃあ私、挨拶に行ってきます!」
「あ、遊佐さん……」
千鶴は昔から物怖じしない明るい性格の持ち主で、初対面の人を前にしても全く動じない。
これから自分を撮影してくれるカメラマンならば一度挨拶をしなくてはならないと思い立った千鶴はすぐさま行動に移した。
「あの、西園寺さん、初めまして。本日撮影していただくモデルの遊佐 千鶴と申します。初めてなのでご迷惑をおかけするかもしれませんが精一杯頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」
一人でカメラ機材チェックをしている西園寺というカメラマンの元へ近付き、深々と頭を下げながら挨拶をした千鶴。
彼はそんな彼女に視線を向けることも無く、「ああ、そう」とだけ口にすると、そのままカメラのチェックをし続けていく。