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夜風が吹き込む。…窓の開かれた、小さな部屋の中に。その部屋の中で、唯一つけられている机の照明に照らされながら少年が1人机に突っ伏していた。
「………」
少年の手には鉛筆が握られているが…どうやら、突っ伏している顔の下敷きになっている算数のワークをしている途中であったようだ。
とうに寝る時間を過ぎていた為か、眠気の奔流に押し流され、抵抗も虚しく撃沈してしまったらしく…ノートには彼の死闘の形跡が残っていた。寝巻きにも使っている、ダボダボのTシャツから、無防備にも肩が出てしまっているのがその証拠だ。…自分の身なりに気にする余裕もなかったのだ。
「……ぉ…か……さ…ん。」
小さく、か細く…そんな声が部屋に反響する。誰にも届かない声が。……安らかに閉じられた瞼の隙間から…水滴が零れる。ついでに、小さく開いた口からも少し。
…明日は確か算数の課題の提出日だったような…。頑張れとでも言いたげに…夜風が小さく、優しく吹いて…彼の髪を撫でる。
「……ふふ…」
それを感じてか少年は柔らかく微笑む。安堵したように…嬉しそうに。………母に褒められた、子のように。風は止み、再び部屋に静けさが満ちる。…翌日の朝、この静けさが嘘のように彼が怒られたのはまた別のお話で。