テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第2話 「出会いは強制的に 」
ーーどうして、母さんは、居なくなっちゃったんだろう…。
「……夜桜 咲夜だな」
その声が、ふいに背後から落ちてきた。
昨夜が振り返ると、そこには、金髪に制服を着崩した青年が、まるで王子様みたいな態度で立っていた。
切れ目の目。整いすぎた顔立ち。なのに、怖いくらいに表情がない。
「……誰ですか? 」
「白銀家に来い。うちで面倒を見ることになった」
「……は?」
「説明はあと。おまえ、今から俺の家で暮らすんだよ」
「ちょ、ちょっと待ってください?!僕、あなたのこと知らないしっ、勝手にー」
「うるせぇ」
その青年は、昨夜の腕を無理やり掴んだ。
昨夜は咄嗟に抵抗し、体重を後ろにかける。
「話してくださいっ!!僕は、今、母さんがタヒんだばかりで…っ、いっぱいいっぱいなんですよ!!」
涙声で叫んだその瞬間だった。
「……じゃぁ、別のことでいっぱいにしてやるよ」
「…は?」
ぐいっと強く腕を引っ張られたかと思うと次の瞬間には、咲夜の身体が青年の胸にぶつかった。身長差は30cmくらい。見上げたその目に、何の感情もない。
「お前みたいなやつに、名前を教える気はない。ただ……」
青年は、咲夜の頬を片手で掴み、ぐいっと顎をあげさせる。
「………こういうの、初めてか?」
「え…や、め、なっ……!」
ふいに唇が塞がれた。
「ん……っ、や、め…っ」
頭の中に、粘着おんのような音が響く。
しばらくして、やっとのことで、唇が離れた。
「ぁ……」
足に力が入らず、その場に崩れ落ち落ちそうになった咲夜を、青年の腕が支えた。
腰に腕を回された手が熱い。顔も、身体も、心も、追いつけない。
「……っな、に…今の…っ!」
その時、後ろから、落ち着いた大人の声がした。
「やぁ、咲夜くん。初めまして…かな?」
ふと見ると、品のあるスーツを着た男性が微笑みながら立っていた。
「僕は、白銀財閥の社長、白銀幸仁(しらがねこうじ)だよ」
「……っ、は、初めまして……」
咲夜は思わず深々と頭を下げた。顔は真っ赤のままだった。
幸仁さんは、優しく笑った。
「あははっ!咲夜くん、早速玲王に嵌められちゃったね」
「えっ……?!いや、僕は……っ!」
「この子は、白銀玲王、僕の息子だよ」
咲夜が戸惑いながら彼…玲王を見ると、玲王はふっと鼻で笑った。
「何してくれてんの…この人…」
咲夜は思わず心の中で呟いた。
「もう、玲王から聞いているかもしれないけどね、少し話をしたいんだ。詳しい事情も。だから、咲夜くん、僕らの家へ来てくれるかな?」
幸仁さんは、あくまで穏やかに提案した。
咲夜は口を開こうとしたがー。
「断る暇はない」
玲王が咲夜をひょいっと持ち上げ、肩に担ぎ上げた。
「ちょ、や、やめっー!!離せぇええええ!!暴力!反対!!ストップー!!」
咲夜は必死に暴れるが、玲王の腕はビクともしない。
「やかましい。黙れポンコツ」
「誰がだよ!!ポンコツ言うなぁあああああ!!!」
咲夜の叫び声が、空に響いた。
ーこうして、咲夜は、白銀家という名の檻へと、強制連行されることになった。