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熱暴走

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熱暴走

1 - 熱暴走

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2025年02月11日

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大雨、暴風、真夜中、そんな時にインターホンがなった。何か嫌な予感がして、ドアの穴から向こうを見た。物差しの距離だった。


ドタドタと階段を駆け上がった。空を飛ぶように、一瞬ふわりと足が浮いて、弧を描いて革が、布が、皮膚が、ぺしゃりと着き、私の自重でそれらを1枚にした。勝手に動く腕、それとは反対にぶらぶらと動く手。一度あげてしまったら2度も3度も上げてしまう。髪の毛が、重い。服が重い、足も、腕も、目も、体全体が重い、。大雨。あ、ぁ。大雨だった。大雨だ。まだ5月だというのに私が梅雨へ行ってしまったのだ。浮き上がった全ては私にしがみついている。

嫌がらせだろうか。

私は一息ついて、一呼吸をして、息を少し整えて、ドアの前に立った。



ーーー!

見覚えのあるシルエットが見えた。こんな日に?どうして??急いで扉を開ける。


「どうしたの?って、びしょびしょじゃん、」


「え…、?あぁ、……ほんとだ」


大粒がおちる。前髪から落ちる水は胸元に、横髪はズボンに、ズボンから靴へ。パタパタと水が落ち、屋根があるのに、玄関に雨が降り注いだ。どん、どん、と大きくなる雨音に、一本の白い網が見え、数秒後、空から大きな音が鳴った。


「……何しに来たの?」

「こんな大雨で、そんなに濡れて、わざわざ私のマンションまで。」


何か様子が変だった。雨できしんだ髪の毛が異様さを放つ。彼女の目の、深い黄色が。青色で黒く濁っている。


「あ、あ」

「……」

「………」

「み、見つけたん、だ」

「キレーな、花を。」


「………え?」


「とっ、てもきれいでね、」

「大事にしたいっておもったんだ、」


「リク?」


「は、はは」

「でも花、ってさ、」

「地面に付いてるから」

「ちぎったら、ね。枯れちゃ、うし」


私を無視し、淡々と話し続けている。私の声は、ゆっくり上へカーブして、彼女の頭にトンとあたり下に落ちていった。黒い空気の煙が彼女を包み込み、ドアを超えて来そうになる。ぴしょん、ぴしょん、とまだ、布から水が落ちていた。濡れた布から彼女が見える。透明。深くて濃ゆい透明になっている。


「そのまま、…置いておいても…」

「誰かに取られちゃうかも知れないし…、」

「俺、迷ったんだよ?少しの間ずーっとね?」


「それで、…、俺、気づいたんだ」

「ぐちゃぐちゃに汚してしまえばいいんだ、って」

「………まぁ、ぐちゃぐちゃにしすぎたせいで花はなくなっちゃったんだけど、。」


「風邪……ひくよ」

「ほら、家入りなよ」


彼女の腕を引っ張ろうとしたその時、逆に私の手を掴まれた。


「君がこっちに来なよ!!」

「ッハハハハハ!!!!」


思いっきり体が前に進み、黒い空気へ飛び込んだ。


ムンクの『叫び』のようになる世界は、全てをねじさせていた。重ねた色が混ざって浮き出て、目を混乱させる。雨なのに燃えるように熱くて、彼女にそれを伝えたくて、引っ張ったら、来てくれた。不安そうな顔。なんで?大丈夫?駄目だよ、君は、君はストレスに弱いんだから。君はずっと幸せじゃないと、駄目だよ……あ、…でもバラバラになったのなら、ちぎってもいいよね


彼女は、笑っていた。ぐにゃぐにゃと笑っていた。


ゴツン!!


「リク!!何して…!」


「……………?」

「詩乃、?どうしてそんな悲しい顔をするの…?」

「だめ、だよ、笑顔になってよ」


「リク…目を覚ましてよ…」


「何が?……ああぁ、血、でちゃってるよ、」

「………え、あれ、、俺…何したかったんだっけ……」

「大丈夫?何かあったの…?」

「……ごめんね、ごめんね、」

「泣かないで…」


俺の上にいる彼女の目は血が溜まっていて、溢れた血が服へ落ちる。沢山の白い布に、赤いものが滲んで、薄く広がった。大雨。ビシャビシャな服。薄着。寒い、…俺は彼女の涙を拭いながら、今起きていることを整理することにした。


「家、入ろうか?」


「……うん…」


リクは風邪を引いていた。

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