テラーノベル
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■事務所様、ご本人様、関係者様とは全く関係ございません。
□書きたいものを書いただけのものです。
「参ったな…」
事務所内にある、自分の世界に帰るための転送装置の前でロレさんがため息をついている。
使用する予定だったこともあり、俺も近付いてみれば
「…メンテナンス中、ですか」
「そうみたい」
そう書かれた張り紙を二人で見つめる。
まぁ、機械だしメンテナンスは仕方ないことだろう。
張り紙をよく見れば、午前中に終わる予定だったものがトラブルが発生して明日まで延長してしまうとのこと。
こればかりは誰が悪いなど無いから更に仕方ない。
「明日は仕事っすか」
「いや、念のため休みにはしてあるよ。とりあえず今日はこっちで借りてる家に戻るしかないね」
「俺もそうなるか…」
俺もロレさんも転送装置を使おうとしていたということは、この後の予定がどちらにもないということになる。
最近は互いに忙しくて連絡も全然とれていなかったし、顔を合わせてもたった数分くらいと随分オアズケをくらっていたことを思い出す。
「ロレさ…………なんすか」
この後一緒に歩きませんか。
そう誘おうと隣を見れば、ロレさんが俺の顔をじっと見つめていた。
流石にびっくりするわ。
「小柳が言おうとしたこと当ててやろうか」
「えぇ?」
「最近互いに忙しくて連絡とれてなかったよなー、会えても少しだけだったしなー、ちょっとこの後時間あるか聞いてみようかなー」
「えぇ~?」
「合ってるでしょ」
ばっちり俺の考えていたことを当ててきたロレさんに思わず笑ってしまう。
でも俺も同じこと出来るんすよね。
「じゃあ俺も当ててあげましょう」
「へ?」
「同じことをロレさんも思ってた…でしょう?」
俺の言葉にロレさんが「はぁ!?」と高くなった声をあげながら顔を真っ赤にする。
いや、図星すぎるだろ。
「いやいやいや、何でそんな…」
「え、違いました~?俺とロレさんってラブラブなんで絶対にそういうとこ同じ考え持つって思ってたんすけど~」
にこにこと笑いながらそう言えば、
「………思……わなくは、ない、よ…」
と俯き気味で、小さな声で呟いた。
ああ~可愛い~~~~。
・
・
・
気配を読みながら、人の通りが少ない道を選んでいけば最後には俺たちだけが通る道に出る。
「はい」
「毎回忘れないよね、小柳って」
「そりゃ繋ぎたいんで」
人の気配が完全に無くなった場所でなら手を繋いでも良い。
それがロレさんが付き合い始めた時に俺に出した約束の一つだった。
それが出来ないなら一緒に帰ることはしない。
家以外で二人きりになることはしない。
そんなことを言われては俺は「絶対に守ります」としか言えなかった。
人のいない道に出ればいいだけ。
それが俺にとっては朝飯前のことだと気付いたのは数回目だった。
「ロレさんが俺のことを想って出してくれた妥協案なんでね」
「こんなに人がいない道というものが存在するとは俺は思ってなかったけどね」
「それはもう、運が俺の味方をしているってことで」
人がいる場所で恋人らしいことをするのが恥ずかしいらしいロレさん。
それでも、俺のためにと必死に考えて出してくれたのがさっきの約束…妥協案だ。
そういう優しいところが好きなんだよな。
「俺より背が高いのに、俺より手が小さい」
「地味に悔しいやつね」
「俺は嬉しいっすけどね」
「煽りマ?」
「煽ってると思われるマジか」
嫌味にもならない嫌味を交わして笑いながら適当に歩き続ければ、とある建物の前で足を止める。
「教会?」
「廃教会、っすね」
綺麗な外観ではあるが、周りを囲む柵が朽ちていたり、地面が荒れていたりしているそこは既に使用されていないことを俺たちに伝えてくる。
立ち入り禁止とはどこにも書かれていなくて、それを理由に好奇心から中へ入ってみることにした。
「中も綺麗だね」
「っすね。こんなに綺麗なのに何で使われなくなったんだ?」
「…曰く付きとか」
「あ、そういうのやめてくださいね~」
「ははっ!」
窓から月の光が差し込んで、ロレさんを照らす。
それがとても美しくて、綺麗で、俺は魅入られてしまった。
神様に攫われてしまうんじゃないか。
そんなことを考える程に美しかったんだ。
そんな俺を置いて、ロレさんはゆっくりと奥へと進んでいく。
「健やかなる時も 病める時も」
こつ、こつ…と静かな足音が響く。
「喜びの時も 悲しみの時も」
でも、そんな音は一切気にならなくて。
「富める時も 貧しい時も」
ただ、貴方から目が離せなくて。
「これを愛し 敬い 慰め合い 共に助け合い」
ただ、貴方の声を一文字たりとも逃したくなくて。
「その命ある限り真心を尽くすことを…」
気付いたら俺の身体が動いていて。
「誓います。ロレさん」
その身体はしっかりと、ロレさんに追いついて、俺よりも細いその身体を抱きしめていた。
「ははっ、びっくりしたって小柳」
「誓います」
「…」
「俺、誓います。心から誓います」
「…だろうね」
優しい、甘さをたっぷり含んだ声。
その声に応えるように顔をあげれば、そこには幸せそうに目を細めて微笑む俺の花嫁がいた。
「仕方ないから俺も誓ってあげるよ」
「…はは、仕方ないからなんすか?」
「うん」
「ははは、何それ複雑なんだけど」
ぎゅう…と強く抱きしめる。
祝福してくれる人もいないけど、役目を終えた暗い教会だけど、それがとても俺たちらしくて。
これが、俺たちの正解であるような気がして。
「でもこれだけは言っておくよ、小柳」
幸せを噛みしめていたら、突然ロレさんにそんなことを言われて、いつの間にか落としていた視線を再び前に向ける。
「俺は…どんなに仕方ない状況でも、愛を誓う相手は選ぶタイプなんだよね」
次の瞬間には、そう言って笑う俺の花嫁に誓いのキスを贈りつけている自分がいた。
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。。。とりあえずキモイlrを見て正気取り戻してきます。