登場人物↓
楠音 凛(くすね りん)
京錠 ゆづき(きょうじょう)
汐賀 涼音(しおが すずね)
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小さい頃から、大好きな人がいる。
私は何も出来なかった。
かけっこはビリだし、テストはどれだけ頑張っても70点くらいしか取れなかった。
そんな私の小さな太陽、
君がいたから。
私はずっと頑張れた。
「ちょっと、ゆづき。」
「……なに?凛。」
「その髪…また染めたの?ピアスも…」
「……ごめん」
「いや、違くて…」
「ゆづきー!一緒に昼メシ食べよー!」
「あっ、おっけー!…あたしもう行くから。」
「あっ……」
高校2年生になってから、ゆづきは私を避けるようになった。1年生の頃は、凄く仲が良かったのに。それに、私もゆづきに色々口出しするようになってしまった。別にゆづきが髪を染めても、ピアスをつけても、化粧をしても、私には関係ないのに。 でも、どんどん遠ざかっている気がするから。
私はただ、前みたいに笑って、前みたいに、一緒にいて欲しい。それだけなのに。
「…凛?」
「え?ごめん、涼ちゃん。ぼーっとしてた。」
「もー、大丈夫?次体育だから早く行こ!」
「あっ…そうだね!」
「先生に怒られちゃうよー!急いで急いで!」
「……うん」
涼ちゃんみたいに高校になってから新しい友達は出来たけど、本当は…。
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小さい頃から、憧れの人がいた。
かけっこであの子が転んだら、あの子は周りの人やお母さんが心配してた。
テストであの子が70点を取ったら、あの子はお父さんにアイスを買ってもらってた。
あたしは違う。
かけっこで1番が取れても、誰も褒めてくれない。お母さんは仕事が忙しくて、お父さんはいない。いつも家で1人だった。
でも、そんな時に一緒にあの子は遊んでくれた。一緒に笑って、泣いて、そばに居てくれた。
「凛、高校も一緒だね!一緒のクラスだといいなぁ。」
「うん、……ずっと一緒だよ。ゆづき。」
ずっと一緒だと思ってた。
「あっ、凛…昼ご飯一緒に…」
「凛ちゃーん!」
「今行くー!…ごめん、涼音ちゃんと食べるんだ。」
「…そっか!じゃあまた今度食べよ!」
これだけじゃなかった。
「凛…凛…」
苦しかった。凛の事を思う自分が、汐賀さんに嫉妬する自分が、酷いくらい醜く見えた。このままじゃ、きっとあたしはおかしくなってしまう。それに、凛や汐賀さんに酷いことをしてしまう。
だから…。
「ゆづき!?どうしたのその髪…」
「凛……染めたの。」
「えっ…待ってゆづき!」
髪を染めた。凛を避けるようになった。
「ちょっと京錠さん…。生徒指導室に。」
先生に怒られるようになった。
「ゆづき…!なんでそんな事するの!」
「………」
「…どうして?」
お母さんに泣かれるようになった。
「キャハハそれマジー?」
「エグいってーw」
素行の悪い友達が出来た。
こんなに「自分」を変えたのに、まだ心は変わらない。でも、もう後戻りはしない。
凛が笑顔でいるなら……あたしはそれでいい。
1話 おわり
見てくれてありがとうございます!初投稿です。遅筆ですが投稿頑張ります!
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