テラーノベル
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途方も無い星の海の上。
ついてこいと言わんばかりに紫陽花が僕の前を飛んでいく。
僕は、置いていかれないようにオールを漕いで紫陽花についていっていた。
紫陽花の光は、らおくんと別れてから更に弱々しく頼りない。
すると、遠くで凄まじい光が一瞬見えた。
目を凝らしてみると遠くの空で、煙に巻かれて小さな核が剥き出しになったような、変なものが見える。
その瞬間、大きな風が僕の小舟を直撃した。
見えない衝撃で星の海が掻き乱されていく。
そして、前を飛んでいた紫陽花が、僕の膝の上に倒れていた。
光は、もうなかった。
─────────🩷
俺らがけちちの元を訪れて2日ほど経過していた。
けちちはまだ目が覚めない。
紫陽花の切り花も萎れていく一方。
そばにはちぐちゃんとまぜちがずっとつきっきりで、様子を見ていた。
今日から梅雨明け。
外は灼熱の真夏日。
俺とぷーのすけは昼飯の支度をしていた。
💛「暑いと食欲落ちるからね、素麺ヤッチャイマース!!」
俺は、ご飯を作ってあげることしか、みんなの楽しみが作れなかった。
悲しい顔ばかりしていたら、幸せだって逃げていっちゃう。
それに、美味しいご飯ってきっと心を元気にする源になると俺は信じていた。
隣にいるぷーのすけは、支度を手伝ってくれている。
💚「これ、混ぜればええの?」
💛「うん、お願い」
こんな風に、けちちとカレーを作ったことがあったっけ。
あぁ、まただ。
俺はけちちのことを思い出しては、悲しい気持ちになってしまう。
─────────💛
あっきぃの素麺を食べながら、俺は口を開いた。
💚「そろそろ俺らも配信活動、再開させたほうがいいのかな」
❤️「こんなに待たせてリスナーに申し訳ないもんな」
まぜ太が倒れたあの日から、俺らは配信活動を無期限活動休止としていた。
💛「俺らだけでも枠回す?」
💙「だけど、このまま時間が過ぎれば、けちゃの記憶がみんなから抜けて、けちゃの存在もなくなる、、、」
メンバーそれぞれが貯めてきた動画のストックのこともあった。
グループとして活動はできなくても、それぞれの動画の投稿はできる。
だけど、それよりもけちゃの記憶がなくなってしまうことの方が俺らにとって怖かった。
そんな俺らにまぜ太は言う。
💜「大丈夫、けちゃおは起きる。みんなで信じて待とう、あいつがいなかったらアンプじゃない」
俺らはけちゃおの意識が戻るのを待つことにした。
─────────💚
日が傾く。
今日も時間が過ぎる。
俺はまぜたんと一緒にけちゃのベッドのそばに座っていた。
けちゃが倒れてから、彼の呼吸の音がだんだん小さくなっていく。
俺は地球に旅立つ前、星の海の波打ち際で、らおと交わした言葉を思い出していた。
🐯「本当に行くのか?」
💙「うん、行く。行かなきゃ。これは俺の犯した罪だから。」
🐯「わかった、ちぐさが言うなら俺、姿が見えなくても応援してるから。」
💙「俺もらおのこと一生忘れない。二人が来たら、こっちの世界のことお願いします。」
🐯「了解、必ず戻します。」
お互い、いっぱい泣いた。
そして固く抱きしめあった。
らお、俺、この世界で俺のできること全うしたのかな。
いまだに眠ったままのけちゃの顔を見ながら、遠く離れた相方に思いを馳せていた。
すると、横に座っていたまぜたんがぎょっとして顔を上げていた。
💜「おい、、」
その視線の先には、青い目だけ光らせているあっとくんが立っていた。
─────────💙
❤️「二人に話さないといけないことがある」
俺は、驚いている二人を前にしてそう告げた。
俺がオッドアイになった理由に繋がる話。
俺は昔、地球では無い星に住んでいた。
しかし、ある日、突然俺の住む星の近くで、星の爆発が起こった。
超新星爆発だった。
その衝撃で俺は地球に飛ばされ、後遺症として、俺は左目だけ青色になってしまった。
そして、ここ最近、別の世界が断片的に青い目の方だけ見える現象が起こっていた。
それは、巨大な図書館、アカシックレコードの中の様子らしかった。
─────────❤️
💙「そっか、と言うことは、俺らがけちゃのいる世界まで飛べるかもしれない」
あっとの話を聞いて、ちぐは何かを見つけたようだった。
💜「けちゃおの元に飛べるってどういうこと?」
💙「アカシックレコードの世界を断片的にみることがある、それはつまり、今、あっとくんは二つの世界を同時に行き来できているってこと。」
💜「それが、けちゃおの元に行けることと、どう繋がんだよ」
💙「俺らの意識をあっとくんが向こうの世界に飛ばすことができるんだ。そしたら、安全にけちゃを迎えに行ける。」
❤️「確かに、けちゃのことだから迷子になっているかもしれない、その方が確実に地球に戻って来れるな。」
なるほど、と思った。
けちゃおのことだ、変な目に遭っているかもしれないし、なんせ彼は生粋のポンコツだ。
そして俺は意を決した。
あいつを迎えに行こう。
💜「あっと頼む。俺の意識を飛ばしてくれ。」
─────────💜
どうしよう、僕は視線を落としたまま呆然としていた。
膝の上には萎れた紫陽花。
紫陽花の道標で進んできただけだから、ここがどこだか見当もつかなかった。
まぜちの名前、思い出せたのに。
この記憶ですら、本物のものだったのか怪しく感じてしまう。
忘れたくないはずなのに。
静かな星の海は、何も教えてくれない。
🩷「まぜち、、、」
もうここまでだ。
僕は目を瞑ろうとして、視線を水面に投げた。
?
海の中に一筋の流れ星が走っている。
いや、海の中じゃない。
それは水面に映っているだけだった。
流れ星がまっすぐ僕の方に向かってくる。
ぶつかる!!!!
と思った瞬間、僕の目の前で光が人の姿に変わる。
その見覚えのある影に僕は拍子抜けした。
🩷「あれ、まぜち・・・?」
💜「けちゃお、お前、こんなとこにいたのか?w」
僕の驚いた表情を見たからか、いたずら好きな彼のはにかんだ顔。
まぜちと面と向かって話すことも、笑顔を見ることも本当に久しぶりだった。
🩷「まぜち、なんで僕がここにいること分かったの?」
💜「知らね。とりあえず俺の手に掴まれ、行くぞ。」
まぜちは僕に手を差し伸べる。
その姿に思わず笑ってしまった。
💜「何がおかしいんだよ」
🩷「いや、まぜちってかっこいいなぁってwww」
💜「やめろww この手離すぞww」
🩷「まぜちのばか、僕に会えて嬉しいくせにwww」
そうして手を取った僕らは星の海の上を流れ星となって、駆けていった。
ひんやりとして心地よい風が僕らを通り過ぎていく。
─────────🩷
まぜの意識を飛ばしてどれくらい経っただろう。
日はとっくに暮れて、本当だったら、俺らの公式配信があった時間になっていた。
まぜはちぐの肩にもたれて眠ったまま。
💙「あっとくん、まぜたんどんな感じ?」
❤️「うん、大丈夫、順調にけちゃを連れてこっちに来てるよ」
俺の左目で二人の姿を追っていた。
合流できるか不安だったけれど、さすがはまぜ。
けちゃが陥りそうなところを自分で把握していた。
そして奇跡は訪れる。
長い間眠っていた彼の瞼が開いた。
🩷「あれ、僕眠ってたの?」
聞き覚えのある声。
俺らは、その声をどれほど待ち望んだことか。
💙「あ、まぜたん、、」
ゆっくりとまぜも体を起こす。
💜「けちゃお、おはよ」
二人の声が聞こえたのか、夕飯の片付けをしていたあきぷりが寝室に飛び込んできた。
全員がけちゃの元にいく。
💙「けちゃぁ〜〜!!!!」
💚「けちゃお!!!!」
💛「けちち!!!」
❤️「けちゃぁあああ!!!!」
けちゃが目を覚ました。
奇跡だった。
けちゃが倒れて3日は過ぎたある日の午後のこと。
AMPTAK全員が揃った。
🩷「みんな、すっごい勢いでくるなぁwwwwww」
困ったような笑顔を浮かべる我らが笑い声担当。
意識が戻らない状態だった彼は、栄養不足で少しやつれている。
💛「けちち、素麺食べる・・・?」
🩷「え、いいの?!食べたい!!!!」
ご飯のことになると、顔を輝かせる。
愛されポンコツ食いしん坊。
💜「お前、めっちゃ元気じゃんwwww」
そんな様子を見て、涙を流しながら笑い出すツンデレ悪魔。
🩷「あ、ちぐ〜?」
💙「本当にごめんなさい、、、、」
向こうの世界でらおくんから聞いてたんだろう。
けちゃはそれ以上の言葉は言わなかった。
🩷「元気だった?」
💙「へ?!」
🩷「良かったwwww」
けちゃは微笑む。
きっと、ちぐのことだから責任感じて何も飲まず食わずだったんじゃないかって思ったのだろう。
もちろん、そこはあっきぃのサメ顔説教が効いていたから、心配はなかった。
時が経ち、俺は新幹線で名古屋に向かっていた。
すとふぇすEXPOが名古屋で開催されることに伴って、ハイタッチ会兼握手会が開催されるためだ。
俺の席の近くであっきぃとまぜが楽しそうに、これから行く名古屋のお店を調べてる。
あんなことがあったのに、もう通常運転だ。
けちゃが目覚めた翌日には、彼はいつもの調子を戻していた。
俺らは活動を再開した。
YouTube登録者数は100万人目前。
そして、俺らがここにくる前、もう一つの奇跡が起きた。
けちゃが目覚めた翌日、みんなで花火を見に海へ行った。
すると、
「ちぐさ!」
背後からちぐを呼ぶ声。
俺らは振り返った。
そこには、赤メッシュの見るからにわんぱくそうな少年が立っていた。
💙「らお!!!!!???」
人間の姿になった、らおくんだった。
驚いている俺らに対して、彼は茶目っ気たっぷりに笑う。
🐯「宇宙の法則に逆らったから、その罰として地球に降りちゃった」
❤️「らおくん、良かったのか?」
俺は天使の一族を捨てた彼に尋ねた。
🐯「うん、だってこっちの方が楽しそうだし、なんなら、ちぐもいるし。」
💙「らおぉ〜〜!やったぁ、会えたぁ!!」
そう言ってちぐはらおくんに泣きついていた。
思い返しては思わず笑みが溢れてしまう。
🐹「あっとくん、なんだか嬉しそうですね」
🐐「あっちゃん、何かいいことあったのぉ??」
俺の座席の横を通り過ぎざまに、ころんくんとるぅとくんが絡んでくる。
二人の手にはゲーム機があった。
どうやらこの後もテトリス対戦するみたい。
よく飽きないなぁ、と思いつつ、俺は答えた。
❤️「俺、やっぱアンプにいて今幸せだなって。」
花火が流れる星になって 世界を包み込むころに
僕のこの想いは叶うのかな
明日のことさえもわからない 未完成な僕らでもさ
ねえ、来年もまた一緒にいようよ
Fin.
コメント
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完結おめでとうございます🎉!! もう感極まって号泣案件です😭 この30話イッキ見したんですけど、内容面白すぎて感動しました✨ アニメ化されたらいいのにってくらい良かったです!! ありがとうございました💖
完結おめでとうございます! 内容しっかりしてるのに分かりやすくて、本当に素敵なお話でした! 今のAMPTAKとも繋がってて感動✨ 最後まで最高でした! ありがとうございました!(´▽`)
完結おめでとうございます✨ 物語の世界の広がりが本当にすごくて読んでいてとても楽しかったです!!