「――っん、……ふぁ、……んんっ」
キスなんて初めてだから、ただただびっくりしたのと同時に、角度を変えながら何度も何度も唇を塞いでくる陽向に合わせるのが精一杯。
息継ぎをしようにもすぐに塞がれてしまい、上手く息継ぎが出来ずに苦しくなる。
やだ、怖い……。こんなの、陽向じゃない……。
どうしたらいいのか分からず、恐怖と悲しみから私の瞳には涙が溢れていく。
それに気付いた陽向は唇を離すと、
「……稚菜、何で泣くの?」
私の瞳から流れる涙を指で掬いながら尋ねてくる。
「だって……、陽向が、知らない人みたいで……怖いの……っ」
何とか止めてもらいたくて必死に訴えかけると、
「……ごめんね、怖がらせて。だけどさ、稚菜が悪いんだよ? 悪い子にはお仕置きしないとでしょ? だから――止めないよ?」
ごめんと謝ってくれたものの、陽向は始めから止める気など無かったようで、どこか異様な笑みを浮かべると、私の着ていたトップスの裾を捲り上げてきた。
「や、……陽向……っ」
これから何をされるのか何となく理解出来た私は首を横に振りながら必死に抵抗するけど、
「狡いかなとは思うんだけど、誰かに取られてからじゃ遅いってよく分かったから、稚菜の初めては――俺が貰うね?」
「やっ! 陽向、やだっ!」
一方的に自分の意見を口にした陽向は私の言葉を無視するとブラジャーまでも捲り上げてきて、露わになった胸にチュっとリップ音を響かせながら吸い付くように唇で愛撫し始めた。
「やっ、……あっ、ん……っ」
「……可愛いなぁ、稚菜は。昔から可愛かったけど、今はそれ以上だよ」
「……っ、陽向……っ、おねがいっ、やめて……」
「嫌だ、止めないよ。俺はずっと我慢してきた。稚菜は大切な幼なじみだからって。だけどさ、気付いたんだよ。ただの幼なじみじゃ、稚菜を閉じ込めておけない、ずっと一緒には居られないって」
「……だからって、こんなの……っ」
「それじゃあ聞くけど、稚菜はさ、俺と奏多、どっちが好き?」
「え――?」
「どちらかを選べって言われたら、どっちを選ぶ? 俺? それとも奏多?」
「選ぶなんて、そんな……っ、私にとって、陽向も奏多も、大切だから……選べないよ……っ」
「うん、稚菜はそう答えると思った。だからこそ、今のままじゃ駄目なんだ。俺はね、稚菜には俺だけを選んで欲しい。奏多のことも、他の男のことも選んでなんか欲しくないんだよ――」
「――っんん!」
頭を撫でながら気持ちを伝えて来た陽向は私の唇を強引に塞ぐと、キスをしながら執拗に胸を揉んできて、膨らみの中心を指先で刺激してくる。
「ん、……っんん!」
頭の中はぐちゃぐちゃで、嫌なはずなのに身体は気持ち良さを感じているし、激しい口づけで息をする余裕すらなくて苦しくて、もうどうにかなってしまいそう。
私はこのまま、陽向に犯されてしまうのかもしれない。
諦めかけたそのとき、階段を上る音と、私の部屋の隣の玄関が開く音が聞こえてきた。