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「なんて」
その言葉を、私は無理やり飲み込んだ。
言ったら終わる気がした。
今の関係も、空気も。
「……寧々くん」
また、類の声。
今度はさっきより少しだけ低い。
「何」
「君は、とても分かりやすいね」
「は?」
「隠している“つもり”なのが、という意味だよ」
ムカつく。
なのに、否定できない。
図星だから。
「別に……何も」
「ふふ。そういうことにしておこうか」
類はそれ以上踏み込まない。
でも、逃がすわけでもない。
ただ“見ている”。
それが一番ずるい。
その時だった。
「寧々ー!」
えむの声。
「こっち来てー!司くんがね、次の構成思いついたって!」
「今行く」
反射みたいに返事をして、一歩踏み出す。
その瞬間。
「寧々」
呼び止められた。
司だった。
まっすぐな目。
あまりにも真っ直ぐで、逃げ道がない。
「お前、最近少し無理をしているだろう」
「……してない」
「している顔だ」
一瞬、息が詰まる。
まただ。
また“分かってる顔”をされる。
類も、司も。
「……意味わかんない」
そう言うしかなかった。
「意味は分からなくていい」
司は少しだけ眉を寄せる。
「ただ、無理をするな」
その言葉が、
優しすぎて。
一番刺さった。
「……優しいね、司くん」
思わず漏れた。
でも、すぐに気づく。
違う。
これは“優しさ”じゃない。
「それは違う」
司は即答した。
「俺は、お前が笑っていない方が嫌なだけだ」
空気が止まった。
えむが「え?」って顔をする。
類は、少しだけ目を細めた。
私は——
何も言えなかった。