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読み終わりました!いやー、今回も六駆くんがぶっ飛んでて最高でした。偽札で無防備になる弱点、福田さんの的確な転送、そして解説席に戻ってきて平然とマイク握る図太さ。あのポジティブ思考は確かに「おっさんの必殺技」ですね(笑)。最後に莉子さんのパンチで〆られる流れも好きです。六駆抜きで互角に渡り合ったBチームの成長も感じられて、得るもの多い回でした!
「すごいや!! これ全部集めたら、親父が買ってるパチンコ雑誌の裏表紙にある浴槽をお札で満たしている太ったおじさんごっこができるぞ!! う、うひょー!!」
かつて、戦闘中にここまで無防備になった六駆はいなかった。
五楼と楠木が軽く引きながらしばし最強の男のご乱行を眺めていた。
「……何と言うか。あの痴れ者、とんでもない弱点があるのではないか? 今なら狙い放題だぞ? 煌気の防御膜すら解除している。これ、撃っても良いのか?」
「いやはや、下柳くんにこの逆神くんのデータを持ち帰られていたらと思うと、胆が冷えますな。高校生の少年にはとても見えない喜び方ですね」
隙が出来たのに、当初の話と違って攻撃を仕掛けない五楼。
ちなみに、スキルを発動させた久坂もドン引きしていた。
「六駆の小僧はなんじゃのぉ……。なんか、見よると気の毒になって来るのぉ……。模擬戦終わったら、なんぞ美味いもんでも食わしちゃろう……」
久坂剣友が心から哀れんでいる。
彼は自分の創った偽札に踊らされる六駆を見て、「軽い気持ちで人の心を弄んじゃいけんのぉ……」と、何故か後悔の念が湧いて来たと言う。
だが、この戦場には常に冷静な仕事をこなす男がいた。
「……。失敬。『急な人事異動』!! 遠隔発現!」
「う、うひょー! あああああああああああああああああああああっ!!」
福田弘道、空間移動スキルで六駆を武舞台から消す。
彼はかつて、若手の探索員の集うサークルにて山根健斗と一緒に転移スキルについて学んだこともあり、実力を発揮する機会に恵まれないが、たまに使うと切れ味抜群なのだ。
「ふ、福田……? 貴様、よくあの状態の逆神を攻撃できたな?」
「あまりにも隙だらけだったもので。攻撃しないのも失礼かと思いました」
「貴様、鬼か何かか? 偽の金に踊らされるだけでも充分なダメージだろうに」
「逆神くんの実力を考えれば、こうするのが妥当かと」
監察官選抜、残されたBチームの全員が沈黙した。
久坂がまず手を挙げる。
「ほ、ほいじゃあの。ワシは、アレするけぇ。棄権するけぇの? あとは若いもんでの? ナニしてくれぇや。じゃあの」
久坂剣友、戦線離脱。
「……よ、よし。まだ模擬戦闘訓練は終わっていない。むしろ、ここからが本番だ! かかるぞ、福田! 楠木殿!!」
この空気で訓練を続行させる姿に、観客たちは真のリーダーとはどういうものかを体現する五楼京華に対して敬礼したらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『これは予想外の展開になりましたぁ! 逆神Dランク探索員! なんだかよく分からないうちに異空間に消滅ぅー!!』
『……お恥ずかしい。私の監督責任です。ん? なんだこの煌気の反応は?』
「ああああああああああああああっ!!! お金がなくなってなんか移動してる!!」
逆神六駆、よりにもよって解説席の南雲の真横に転送されて来る。
『出たぁー! 逆神Dランク探索員だぁー!! なんと、まさかの解説席への直帰です! それほどまでに解説の仕事が気に入ったのかぁー!!』
『いやね、もう酷い目に遭いましたよ。お金が宙を舞ったところまでは記憶にあるんですけどね? その後の記憶がないんです。気付いたらここにいるんですよ。うふふふ!』
『逆神くん。君、自分の身に何が起きたのかも把握できないのに、よくマイク持って話をしようと思えるね? もうそのメンタルだけでも狂気だよ』
『ちょっとサーベイランス見せてください! ああ、なるほど! 福田さんの仕業ですか! 僕の出しっぱなしにしておいた『銅鑼衛門』と僕の煌気を繋いだんだ! だから実況ブースに転送されたんですね! いやー! 上手いこと考えられた、いいスキルですねー!! よし、これは覚えとこう!!』
『逆神Dランク探索員! 天衣無縫のセルフ反省会ー!! マイクを使う意味があるのかぁー!!』
『いや、もう本当にすみません。逆神くん、私と一緒に謝ろう?』
六駆のいなくなった戦場では、主に楠木の震動スキルと五楼の剣技が繰り出されており、それを上手く受け流すのは加賀美政宗。
震動スキルは威力こそ及ばないものの、同じ属性を使える青山仁香が相殺。
小鳩は『銀華』を最大出力で48枚まで咲かせてミドルレンジから五楼を狙う。
戦況を見て自分の役割をよく理解している戦い方には、師匠の久坂も「小鳩め、やりよるわい!」と目を細めた。
再び最後方に下がった和泉はピクリとも動かない。
が、実はスキルを発現中である。
『エクセレス・ケーブル』という名のスキルで、戦う3人に煌気を送っていた。
和泉正春は体が弱い代わりに煌気総量に恵まれており、六駆の『注入』に似た形で自分の煌気を仲間に分け与える事を可能としている。
なお、これは六駆のアドバイスを元に彼がつい先日創り出した新スキルである。
『みんな、なかなか良い動きですね! 特に小鳩さん! 『銀華』の特性を使いこなせてます! 加賀美さんを相手にしながら、衛星による熱線放射は五楼さんにとってもかなりのストレスですよ! 実力が違っても、ああやって嫌がらせをするのは大事ですから!!』
『うん。逆神くん。君の見る目は確かだよ? 多分、この場にいる誰よりもスキルについて熟知していると思う。けどね、逆神くん?』
『はい。なんですか、南雲さん!!』
『あれだけの醜態晒して、本当によくマイク握れるね!? 脳が壊れてるのかな!?』
『うふふっ! 南雲さん! 過去を引きずるようじゃ二流ですよ! 悔いるよりもまずは前を向かなくっちゃ!!』
ポジティブな思考を持つ事で、激しくやらかした現実をなかった事のように振る舞う。
これは、おっさんが持つ108ある必殺技の1つである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふっ。なかなかどうして! 加賀美! 貴様、以前よりもやるようになったな!」
「五楼さんの胸を借りられる機会など滅多にありませんから! 逆神くんと一緒に鍛えたスキルをもって、お相手させて頂きます!! つぅりゃぁ!!」
五楼は5割程度の力で戦っているが、それに肉迫する加賀美は新米Sランクとは思えない、堂々とした剣捌きであった。
「青山くん、急襲部隊に参加してからスキルの質が上がったね!」
「恐縮です、楠木さん! ですが、これは塚地さんのサポートがあってこそです!」
小鳩の『銀華』は見事にミドルレンジ支援をこなしており、慣れない操作で消耗する煌気は和泉が無言で継ぎ足していく。
この状態が既に15分ほど継続されており、千日手の様相を呈していた。
「……うむ。よかろう。逆神抜きでここまでの戦果を挙げられたのならば、私たちの負けだな。この模擬戦闘訓練はここまで!! 貴様たちの勝ちだ!」
五楼が降参した。
戦いとしては決着がついていないものの、「六駆抜きで対等に戦う」という戦略的な勝利条件を満たしたBチーム。
派手さはないが見事な戦いぶりだったと、観客たちもスタンディングオベーションで称えた。
『いやー! いい戦いでしたね! 僕も得るものが多かったなぁ!』
『逆神くん。そのコメント、マイク通さないとダメなヤツ? 違うよね?』
やりたい放題したツケと言うものは、しっかりお勘定と言う名の制裁で支払われる。
「六駆くーん? ちょっとこっちでお話しよっかぁ?」
「あっ!? 莉子さん!? 今の『瞬動』速かったね! ああああっ!? なんで!?」
現在、莉子パンチによる教育的指導が行われております。
「もぉぉ! ダメだよ、勝手な行動ばかりしたら! めっ!!」
「は、はい。もうしません。だから、晩ごはん食べさせてください……」
こうして、白熱の模擬戦闘訓練は幕を閉じる。
急襲部隊の準備は着々と整いつつあった。