あぁ、神様。助けてください。いや、神様じゃなくても誰でもいいから早くこの状況をどうにかしてください。
「マッシュくん…?そろそろ離してくれると嬉しいなぁ。なんて、」
「… 」
無視ですか。もう軽く1時間は経ったんじゃないだろうか。そろそろ周りからの視線にも慣れてくる。というか気まずさからか視線が無くなっている。普段仲良くしているドットやランスまでもが無視を貫いている。え?助けて?
混乱しすぎて脳内がごちゃごちゃになっている。今どういう状況なのかを説明しよう。
廊下で何かの魔法薬を持ったオルカ寮生にぶつかったマッシュくん。あるある展開だ。例のごとくぶっかかってしまった魔法薬の効果は“理性がぶっ飛び、自由に行動してしまう”というものだった。それを浴びてしまったマッシュくんは恋人である僕にくっついて離れなくなってしまった。
いつも所構わずシュークリーム食べてて自由だなぁ。とは思っていたけど理性はあったんだなぁって。一周まわってぽやぽやとどうでもいい事ばかり考えてしまう。
一体いつになったら効果が切れるのだろうか。
クラスメイトに恋人とイチャイチャしてる所を見られて羞恥心で爆発しそうだ。
チェンジズも試した。結果、お兄様と入れ替わってしまい、魔法局で、しかも神格者様の前でイチャイチャを見せつけてしまうという凄惨な事件が起こってしまった。
もういっそ死んだほうが楽かもしれない。
するとガララ、と控えめな音を立て見慣れないローブの生徒が入ってきた。先程マッシュくんにぶつかったオルカ寮生だ。
「あの…マッシュさんって…」
「いますいますいますいます!!!」
やっとだ。やっと解毒薬が!!!!
ほぼ光と同じ速度でオルカ寮生の元まで行き話を聞く。
すると耳を疑うようなことを言われた。
「あれ…?もうとっくに魔法薬の効果切れてるんですが…」
え?え?
切れてる?もうとっくに?
「…マッシュくん、? 」
声をかけると今までは無言だったのに今回はあ、やべ。とだけ声を漏らし凄い勢いで走り去ってしまった。
オルカ寮生に声をかけた後、急いで寮部屋へ向かう。
そこには扉が外れて開放的になった自室がある。
中で扉を持ちブルブルと震える恋人に向き合い、なるべく低く、静かな声を出す。
「どうしてこんなことしたの…?」
「押し戸か引き戸かわからなくなっちゃって…」
「それじゃないよ。わかるよね?」
バツが悪そうに下を向くマッシュくんに更に問う
「効果切れても、わざとやってたんだよね?」
するとマッシュくんは顔をそっぽ向け震える小さな声でこう言った。
「フィンくんとくっつきたかったから…」
うーん。可愛い。反則。
なんかもう全部許したくなってきちゃったな。
いや、ダメだ。ここで甘やかしたらダメだ。
「マッシュくん、悪い子だね…?悪い子は何されるかわかるよね?」
コクコクと顔を真っ赤にし首を縦に振るマッシュくんが愛らしい。
後日マッシュにパルチザンを喰らわそうとした兄様がマッシュの首元にあるキスマークを見て大混乱したそうな。
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