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もか@リムるな🫶小説コン開催
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西村悟がその能力に気づいたのは、金曜日のボロアパートの四畳半だった。
足元で丸くなっていた愛猫のミケを見下ろした瞬間、頭の中に直接、妙に低くハスキーな声が響いた。
「おい悟、カリカリの袋の底に残ってる細かい粉、あれが一番うまいんだよ。皿を傾けろ」
悟は持っていたマグカップを落としそうになった。ミケは微動だにせず、じっとこちらを見つめている。口は開いていない。意志疎通を試みるべく、悟は心の中で強く唱えた。
(……ミケ、お前なのか?)
「他に誰がいるんだよ。それより早く粉だ。あと、昨日の夜中に暗闇で俺の尻尾を踏んだ件、まだ許してないからな」
その日から、悟の日常は一変した。能力は猫だけに留まらなかったのだ。
電信柱に集まるカラスたちは「あそこのゴミ集積所のネット、右下が甘いぞ」「昨日の揚げ物、油が回ってたな」とグルメ批評家のように情報交換をしていた。
近所の柴犬は「散歩のルートを変更したいが、飼い主の歩幅が遅すぎてストレスが溜まる」と哲学者のような溜息をついていた。
悟は最初、この特別な力を使って何か偉大なこと——例えば動物界のヒーローになったり、迷子捜しで一儲けしたりできるのではないかと考えた。
しかし、現実は甘くなかった。
町を歩けば、スズメたちの「あいつの頭、着地しやすそう」「おい撃墜(フン)すんなよ」という不穏な会話が聞こえ、ペットショップの前を通れば「ここを出たらまず何を喰う?」「俺は自由を喰うね」という凄まじい会話が聞こえてくる。情報量が多すぎて、悟の頭はパンク寸前になった。
極めつけは、公園で出会った鳩の群れだった。悟がうっかり話しかけると、一羽が驚いたように首を傾げ、周囲にこう叫んだのだ。
「おいみんな! この人間、俺たちの言葉がわかるぞ!」
一斉に何十羽もの鳩が悟を取り囲み、脳内に濁流のような声が流れ込んできた。
「パンくずくれ!」「公園の池の水、最近ぬるくない?」「昨日俺の写真を撮ったやつに著作権料を請求したい」「パンくずくれ!」
脳を直接殴られるような騒音に耐えかね、悟は逃げ出した。
自室に飛び込み、荒い息をつきながらバタンとドアを閉める。部屋の中は静まり返っていた。
「外、うるさかったろ」
部屋の隅から、呆れたようなミケの声が聞こえた。悟は壁に背をもたれかけ、そのまま床にへたり込んだ。
(……ああ、地獄だったよ。動物と話せるなんて、夢のような力だと思ってたのに)
悟が心の中で呟くと、ミケはあくびをしながらゆっくりと歩み寄り、悟の膝の上に飛び乗った。
「人間はすぐ特別なことに意味を探したがる。聞こえるようになったなら、聞き流せばいいんだよ。俺たちの言うことなんて、だいたい『腹減った』か『眠い』か『邪魔だ』のどれかなんだから」
ミケはそう言うと、悟の膝の上で小さく丸くなり、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。その規則的な振動と暖かさが、悟の荒だった心を少しずつ鎮めていく。
「……まあ、たまには役に立つ話も教えてやるよ。隣の家のポチが、庭のどこに骨を埋めたかとかさ」
(それは別に知りたくないかな)
悟は笑いながら、ミケの柔らかい耳の後ろを撫でた。
世界は思っていたよりもずっと賑やかで、勝手で、そして少しだけ愛おしい。悟は耳を塞ぐのをやめ、この奇妙で騒々しい新生活を受け入れることにした。
コメント
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読んだ読んだ!第9話、めっちゃ良かったわ〜。動物と話せる能力、一見夢のようだけど現実は情報過多で地獄ってギャップが笑えた。特に鳩の群れの「パンくずくれ!」連呼と著作権請求がツボったw ミケの「聞き流せばいい」って達観したアドバイスも渋いし、最後の「世界は賑やかで勝手で愛おしい」って着地が優しい気持ちになる。新生活の受容、応援したくなるな〜。続きも楽しみにしてる🔥