テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
少しずつ外の世界へ興味を示し始めた乃亜。
詩乃はそんな成長を喜びながら、この子の世界をもっと広げてあげたいと強く願うようになる。
やがて詩乃は乃亜を保育園へ通わせることを提案する。
最初は戸惑う幸人だったが、乃亜の未来を考え、その決断を受け入れる。
見学に訪れたのは、かつて”入れ替わる前”の詩乃自身が保育補助として働いていた「ひだまり保育園」だった。
懐かしい園舎と子どもたちの声に胸を痛めながらも、詩乃は乃亜の新しい一歩を後押しする。
保育園への入園が決まり、幸人は不器用ながらも乃亜のために小さなリュックを用意する。
初めての集団生活は、乃亜にとって大きな試練だった。
迎えを待ちながら何度も「ママ」と泣き、夜中に目を覚ましては詩乃を探す。
その姿に詩乃は胸を痛め、一度は入園を後悔しかける。
しかし保育士たちの支えや、少しずつ子どもたちの輪へ近づいていく乃亜の姿を見て、この子の成長を信じようと決意する。
そんな中、体調を崩した詩乃は迎えの時間に倒れてしまう。
初めて幸人が乃亜を迎えに行き、慣れないながらも看病をすることで、親子の距離も少しずつ縮まっていく。
そして幸人の誕生日。
詩乃が用意したささやかな食卓で、乃亜は初めて「パパ」と呼ぶ。
家族になろうとする三人の時間は、少しずつだが確かに形になり始めていた。
そんな穏やかな日々の中、長い昏睡状態にあった詩乃の身体がついに目を覚ます。
しかし目覚めた詩乃の身体の中にいたのは、記憶を失った果穂だった。
果穂は自分を「楠木果穂」だと思い込み、まるで別人のように穏やかで優しい性格になっていた。
警戒しながらも接するうちに、詩乃は初めて「普通の姉妹」のような時間を果穂と過ごすようになる。
かつて自分が憧れ続けた関係。
本当ならこうなりたかったのだと、詩乃は少しずつ心を許していく。
さらに果穂は、保育士になる夢を諦めていた詩乃の背中を押す。
その言葉に勇気をもらい、詩乃は乃亜の通うひだまり保育園で保育補助として働き始める。
園で働きながら乃亜の成長を見守り、幸人や乃亜と過ごす時間を重ねるうちに、詩乃は今の生活をかけがえのないものだと感じるようになる。
これまで奪われ続けてきた人生。
しかし今だけは違った。
乃亜から「ママ」と呼ばれ、幸人と笑い合い、自分を必要としてくれる人たちに囲まれる日々。
やがて幸人との距離も縮まり、詩乃は初めて恋心を自覚する。
そして――
「もう元の身体に戻れなくてもいい」
そう思ってしまうほどに、今の家族を愛するようになっていく。
しかしその頃から、果穂に少しずつ異変が現れ始める。
ふとした瞬間に見せる無表情。
辻褄の合わない言動。
まるで失われた記憶が少しずつ戻り始めているかのように。
そんなある日。
果穂は偶然、幸人・乃亜・詩乃の三人が本当の家族のように笑い合う姿を目撃する。
その瞬間。
封じられていた記憶がすべて蘇る。
欲しかった地位と家族。
手に入れるはずだった幸せ。
そして今、それを詩乃が手にしている現実。
自分が奪ったはずの人生を、詩乃が取り戻している。
その事実に耐えられなかった果穂は、本来の姿を取り戻す。
「人から奪った人生は楽しかった?」
そうして始まるのは、姉妹の全面対決だった。
豹変した果穂は詩乃に体を返せと迫り、執着と嫉妬から嫌がらせを始める。
過去(入れ替わり前)に自分が行っていた不倫相手との写真を送りつけ、保育園へ嘘の噂を流し、幸人と詩乃の関係を壊そうとする。
それでも幸人と乃亜、そして詩乃は幾度も危機を乗り越え、家族としての絆を深めていく。
やがて詩乃は、入れ替わりの真実を幸人へ打ち明けようと決意する。
しかしその直前、再び身体が入れ替わってしまう。
果穂は詩乃の身体を手に入れ、「今度こそあなたの人生を全部もらう」と幸人と乃亜の元へ向かう。
だが幸人と乃亜は、中身が詩乃ではないことに気づく。
そして元の身体へ戻った詩乃こそが、本当に自分たちの家族なのだと証明する。
最後に明かされる果穂出生の秘密。
すべてを失った果穂は逆恨みから乃亜を連れ去ろうとするが阻止され、事件は終結する。
奪われ続けた人生だった。
けれど最後に詩乃は、自分自身の力で取り戻す。
本当の居場所も、愛する家族も。
そして、自分自身の人生も。
コメント
1件
第26話、一気に読ませていただきました。詩乃が「もう元の身体に戻れなくてもいい」と思うほど家族を愛するようになるまでの流れがとても丁寧で、そのぶん果穂の反転の衝撃がすごかったです…。保育園の場面で乃亜が「ママ」と泣く切なさと、最後に「パパ」と呼ぶ成長が胸に沁みました。詩乃が自分で人生を取り戻す決意をする終盤、本当に応援したくなりました。続きが気になります!
132
#王子
すっこ
364
碧星_Aoi
124