テラーノベル
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ガンッと頭に鈍い痛みが響いて、明るさに目を開く。失っていた意識のせいで焦点はまともに合わず左右をぐらぐらと行ったり来たりしている。
何事かと痛み生暖かい何かを垂らす額に手を当てようと腕を上げた。
_____筈だった。
ギチッと掠れる音がして腕は動くことはなかった。
後ろで縄によって固定されている腕、四季は漸く自分が椅子に座らされていることを自覚した。
瞬間に意識が鮮明になり焦点がガチリと合う。目の前に広がるのは異質な光景。
真澄隊長、馨さん、ムダ先とチャラ先。
それと…薺さん。
「!なずっ!」
「一ノ瀬くん!なんで桃と会ってたの…?」
薺の口から発せられた言葉に四季は呆気にとられた。
まるで四季は桃と密会をしていた事を責め立てるような言い方。
先刻まで浮かべていなかった癖に目尻には真珠のような涙が溢れんばかりに溜まっていた。
「おい…一ノ瀬ぇ…、てめぇどう言う事だ…?」
青筋を立てて、口を引き上げ伺うように尋問しだす真澄。
けれどもその口調は、未だ様子見の方は割合は高かった。
練馬区での事杉並区での事、それら一つ一つの事から真澄は四季が密会を謀っていた事に真偽をかけている。
「俺、普通に…出かけてた、」
「じゃあこのガキが言う事が虚偽だと?」
「、ぅ…ん」
仲間を最後の最後まで疑いたくない四季は肯定する事に抵抗を覚えながらも、否定はできなかった。
小さく頷いた四季を見て内心薺は苛立っている、自分の身代わりがこれでは身代わりとしての役目を果たさないからだ。
だからポケットの中で鳴りを潜めていたスマホを取り出して動画を再生した。
『よぉ、調子はどうだ…?一ノ瀬』
『お久しぶりですね、隊長』
その声は四季にとって聞き覚えがあった、意識を飛ばす寸前で聞いていた物真似遊びの音声。
撮っている時は何に使うかなんて分からなかった…でも今は痛いほどに良く理解できた。
機械媒体からの音声がピタリと止んだ。背中に冷や汗を流す四季が恐る恐る顔ごと目線を上げれば、温度の消え失せた瞳が四季を貫いた。
「これっ…一ノ瀬くん、でしょ!」
「嘘…良くないよ、本当のこと言おうよ…」
恰も偶然目撃してしまった被害者の様な口ぶりで叫んだ薺。
四季の脳裏には遊摺部の時の会話が流された。
『極刑』
『処刑』
『裏切』
今の四季には何にも証拠がない。証明してくれる人も、現状じゃ情状酌量の余地すらも見当たらない。
俺…死ぬの…?まだ、まだ親父の仇果してないのに…?何もしていないのに…?なんで俺はこんな目で見られなきゃいけないんだろう…?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…。
嫌だまだまだ死ねない。
話をしている真澄や花魁坂の言葉など耳に入らずに、顔面蒼白な状態で四季は思考を埋めた。
不審に思った無陀野が見たのは顔を青白く染めて、瞳孔は広がり呼吸を短く乱している姿だった。
逃げなきゃ、殺される。
きっとこの人たちは俺を裏切り者と見なす。遊摺部の時だって確定的な証拠があってからの決断だった、この音声は俺の首を絞める縄。
逃げなければ…平和を叶える前に俺が死ぬ。
そうして四季は音を出さない様に縄に触れて僅かに腕をズラし肩の骨を外した。
その状態のまま爪で手の皮膚を破り小型の銃刀を造り出す、血で出来た刃でムダ先達の目が逸れた一瞬で縄を切り裂いた。
ガタンッ、と鳴る音と共に椅子から立ち上がり扉へと四季は走り出していた。
音に気付いた無陀野が動き出したが既に部屋には四季はいない、勢いよく飛び出して扉から無陀野が四季を追いかけて行った。
残った馨は椅子の後片付け、花魁坂は薺を別の椅子に座らせ、真澄は並木度の血が入った小瓶を手にインカムに話しかけていた。
四季は息を乱し汗を流しながらも迷宮の様な偵察部隊の地下を駆け回っていた。理由は担任である無陀野からの逃走一択。
捕まれば再度あの部屋へと引き摺られ、さっきよりもキツい拘束と迅速な処罰が待っているから。
無陀野に鍛えられたからと言って無陀野よりも早く走れるわけがない、徐々に近付いて来るブレードの音は四季の首に刻々と迫り続けている。
曲がり角を走った先で誰かと四季は思い切りぶつかった。
その灰色の髪を四季は知っている。
「…しき」
「こ、…がさき」
目を見開いている皇后崎と泣きそうな目をしている四季。
そんな空気を割くようにジャッという音がすぐそこで聞こえた。
眉を顰め一気に辛い顔をした四季は皇后崎に謝ることもせずに立ち上がり走っていった。
数秒もせずに無陀野が皇后崎の横をすり抜けていった。
皇后崎知っている、四季が鬼と密会をしていたという疑いがある事を。あの薺とかいう女からの報告を。
だから皇后崎は今すぐ問題にするのではなく泳がせたらどうかと進言するところだった。
なのに四季は怯えた目をしていた。恐怖に染まった瞳をしていた。
一ノ瀬先生の方は一旦投稿ストップさせてもらいます…
この先の構成とプロットを練っている所です。出来上がり次第順次投稿いたします。
ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。
ご理解の程いただけると幸いです。
コメント
2件
はいもう最高です。名前からして神回の予感かと思ったら予想どうり神でした。マッッッジでこーゆー系大好きなんです!続き楽しみにしてます!
読了しました。第1話のタイトル「裏切り」の通り、一気に疑いと追い詰められていく展開が重くのしかかってきましたね。四季の「なんでなんで…」が頭の中でぐるぐる回る感じ、胸が締め付けられました。無陀野のブレードの音と、最後の皇后崎の目撃で終わる流れも巧い。薺の手口が本当にえげつなくて、早く真実が明らかになってほしいと強く思わされました。続きが気になります!