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カラン___
それは、風鈴が哭く夏の初めの頃
二度と会えないかも知れない、貴方との物語
私は、何処を見渡しても畑しか無いような田舎に住んでいた。
私のお婆ちゃんは人柄が良く、近所の人達とも随分と仲が良かった。
元から人と話すのが好きだった私は、
近所の子達と一日中遊んでいた。
今日は夏の中でも特段に暑い日で、その日は皆でお婆ちゃんの家に集まって遊んでいた。
ラムネを飲んだり、スイカを食べたり。
時には鬼ごっこをして遊んでいた。
皆疲れ、家の縁側に座って団扇を扇ぎ休憩していた。
皆で笑い合い、最近はどうだーとか、此処に居ない子の好きな人はあーだー、とか。
その日の縁側からは、子供達の楽しそうな話し声が聞こえていたと言う。
日が落ちてきた夕方。随分と涼しくなり、今の内に帰って、ゆっくり寝なさいと皆は言われ話し乍帰って行った。夜ご飯は冷麺で、腹が膨れる程食べた。毎日動くし~とか言い訳をし乍
食べた結果がこれだ。
お婆ちゃんには苦笑いされたが、
「そんなに美味しかったなら良かったわぁ」と微笑んでいた。そんなお婆ちゃんに、
「そりゃ絶品もんだべさ~!料理上手な
ばっちゃんが作るんやから、ほんまうちは幸せもんやなぁ 」なんてにかっと笑い乍言う。
その日はゆっくり敷布団で寝た。
次の日は雨だったから、遊ぶことは出来なかったが皆で山の探索に行った。山は足場が悪く、途中で転ぶ子も泥を転んで食べてしまう子も居たが、皆元気に走り回って探索した。
___そして、全員で迷ってしまったんだ。
歳が小さい子は泣き、大人に近い子は山の下の方に行って帰ってこない。そりゃそうだ。
この山は立ち入り禁止。入るにしてもこんな山奥までは大人の体格じゃ入れない、木の隙間を通って行かないといけない。
幸い、ご飯はパンを持って行った為あったし、山の奥まで行くと雨は一切無いし、
熊だって、動物だって、この山には絶対に出ない。
その為、皆が秘密基地にしていた洞窟に入った。敷布団だってあったし、ボロいが座布団や机だってあったから、明日下の方へ向かおう、と言う話になってその日は洞窟で過ごした。
次の日。
幻覚だろうか。山の地形が変わっていた。
何もかもが変わっていた。
木の隙間だって大人が入れる。木々もあんなに少なかったのに生い茂り、地形はでこぼこに変わっていた。私達は何とか岩道を進んだが、
途中で幼い子が転び怪我をしてしまい、
休憩出来る場所を探していた。
そんな時、向日葵畑と一人の綺麗な少年を見た
茶髪の少し長い髪に、水色の綺麗な柄の着物。
アクアマリンの様な水色の目、長く茶色の
睫毛、肌だって真っ白に近く、体型も細かった
その子は私達に気付いたのか、少し目線を逸らした後、言葉を発した。
「その子、怪我してるでしょ。おいで」
優しく、脆い物に話し掛けるような口調。
私達は其れに釣られ、近くに行った。
「…あんさん、何処のもん?ウチら辺では見ぃひん顔立ちやし…」
「僕?…ごめんごめん…名乗ってなかったね。
僕は瀣褹 翡翠(ミズネ ヒスイ)。皆…友達から、
nakamuって呼ばれてる。気軽に呼んでね。」
その子はnakamuと言った。私達は警戒せず、
幼い子を翡翠の元へ向かわせると、
慣れた手付きで治療を始めた。
「…君達、山下の方の村の子達…だよね。
迷って来ちゃったんでしょ?
案内するよ。」
翡翠は幼い子をおんぶし、ゆっくり山下へ歩いて行った。
そうしていると、村の入口に付いた。
「じゃあ、僕はこれで。ばいばい」
「…村の人達に顔合わせへんの?綺麗なんに」
「……うん、可笑しな話だけど…僕の姿は、
大人には見えないよ。だから、行っても無駄」
翡翠は少し悲しそうに微笑むと、耳飾りを取り
私の手を包み込んで渡した。
「これ、僕が居たって証だから。
…忘れないでね。寂しくなったらおいで。
君達だけになら、大人になっても
姿を見してあげるからさ」
そうして、翡翠は煙と共に消えた。
耳飾りには、金色のチャームに毛先が水色の
尾が付いていた。私は耳に付け、村に戻った。
お婆ちゃん達には叱られたが、悲しい気は
しない。だって、そうじゃなければ翡翠には
会えてないから。
今、私は高校生だ。翡翠に会った、夏の初め頃
どうやら、転校生が居るようだ。
私はずっと昔に貰った耳飾りを付け、
学校に向かう。
何時も通りの会話をして、何時も通り座る。
転校生はうちのクラスだった。
その転校生は___
___翡翠と同じ、美しい少年だった。
「__また会ったね」