テラーノベル
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読み切り 深夜ハイ
カタカタと音が薄暗い社内に響き渡る
眠い目を擦り液晶画面と睨めっこしながら現実と闘う、会社を出た頃には深夜2時になっていた。
『はぁ…私なにしてんだろ』溜め息を一つつきながら昔に思いをはせていた。
『昔は、あんなに大人になりたかったんだけどなぁ……子供の頃に戻りたい…』
ふと周囲の景色を見るとすぐそこに公園があった。私は気晴らしにと思いブランコに乗った。ただ揺れるだけの乗り物ではあるものの、幼心を刺激され、なんだかんだと良い気分に浸れた。
その時だった
『ブランコ良いですよね』
バッ!!と横を見ると小太りの中年位の男が缶ビール片手にブランに乗っていた。
『え…ぇえ…まあ』
不審者かとも思い心臓をバクバクとさせ、不安に駆られている私を他所にその男は
『ただ…揺らしてるだけなのになんだか楽しい気分に浸れて嫌な気持ちが晴れて…… 』と言いながらそのおじさんは靴を投げ
『ぁ″ーー…あんま飛ばなかった』
とキャッキャと靴飛ばしをして遊んでいた
『あの…お仕事帰りだったり?』
と靴を履き、戻ってきたおじさんに対し、そう言うと
『灰色のTシャツにジーパンのおっさんが仕事してるわけないじゃないですか』とおじさんはケラケラと笑い
『そちらさんはお仕事帰りですか?』
『えぇ…まあ』
『こんな夜遅くまでご苦労様です…』
『いえいえ…私なんて、まだ半人前で………今日もミスばっかしちゃって』
『頑張ってるだけ良いと思いますけどね…私なんか40にもなって未だに職業ニートですんもん…』
そう言うおじさんを見て私は深夜テンションなのもあってケタケタと大笑いをしてしまった。
『えぇ…そんな面白かった?』と、どこか嬉しそうな顔をしながらおじさんは続けて
『じゃあ…私は帰ります…明日から面接があるもんで…』
『その前日に公園で夜遅くまで酒飲んで女の子ナンパしちゃって良いんですか?…』
『ナンパしてませんから!!』
私とおじさんは大笑いし、別れを告げた
家に向かって私は歩き出した。
鼻歌を歌いながら私は幸せをかみしめる。
今日も辛かったが明日もいっぱい頑張れそうな、そんな気がした。
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