以前短編集の中で書いた『恋のない日』のノベル書き落としです。ノベルの方が心情の変化とか情景とか伝えられるかなーと。余白の美を求める方はチャットノベル版をお楽しみくださいませ。
少し、足したりセリフを変えた部分もありますが、内容は変わりませんのでご安心を。
作者より
安定の誤字脱字のため直しました。タイトルも変えました。今後もちょくちょく入れると思います。
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Side Akihiro
その日は冷たい雨が降っていた。天気が悪いと特に理由はなくても気分は沈む。ソファにもたれながらゆっくりコーヒーでも飲もうか。そう思って立ち上がった時だった。
ピンポーン
チャイムがなった。誰だろう。ドアを開けると後輩が立っていた
「祐希、どうしたの?」
「すみません」
彼は俯いたままそう一言だけ返す。ちゃんと傘をさしていたから濡れてはないが、この土砂降りの中を返すわけにはいかない。こんな天気でも来たと言うことはそれなりに理由があるのだろう。
「とりあえず、中入れ」
「お邪魔します」
「すみません、急に」
「飲み物何がいい?」
「お茶で」
祐希の言う“お茶”は麦茶のことだ。昨日作ったやつが残ってたはず。寒い中来たから温かいのがいいだろう。電子レンジで温める間に自分のインスタントコーヒーを溶かす。
温め終わってもっていくと、彼はソファの上でクッションを抱えて疼くまっていた。
「え、なにしてんの?」
バッと顔をあげ赤面する。なんだそのリアクション。イタズラ見つかった時の猫か。「すみません」
「さっきからそればっかじゃん」
そうってまた俯いてしまった彼に静かにマグカップを渡して、自分もコーヒーに口をつける。
温かいものを飲んで少し落ち着いたみたいだ。相変わらず俯いたままだけと。来たときから気になってたことを聞く。
「どうした?」
「……。」
「別に怒ってなんかないから。話してごらん?」
「…失恋しました」
「…関田?」
「え、なんで」
「そりゃ、見てればわかるよ」
そう、俺はずっと祐希のことを見ていた。だから、彼が大学の先輩でもある関田に想いを寄せていることもとっくに気づいていた。
「山さんは知ってたんですか?関さんが結婚すること」
「んーまあね」
「どうして教えてくれなかったんですか?」
「聞かれてないし。それに知ったところで諦めついたの?」
「……。」
「ほら」
やっぱり俺は関田にはかないっこなかったのを改めて思い知らされる。
「いつから好きだったの?」
「大学の時からです。」
祐希がぽつりと話し出した。
「もともと、すごいセッターだって知ってました。実際に打ってみたら本当に魔法みたいで。」
「うん」
「いいスパイク決めるとめちゃくちゃ褒めてくれて、しかも背低いから上目遣いで可愛いし、部活外でも、優しく、してくれて」
ポタリ。祐希の目から涙が落ちた。
「イタリア、いく時、お菓子いっぱい持たせてくれて、それで一年目寂しかったけど頑張れて、」
「うん」
ひとつ、またひとつその頬を伝う。
「帰ってきた時も、笑顔で出迎えてくれて、卒業しても代表で招集されるたびにすごい話しかけてくれて、」
「ほんとに、好きだったんです」
いっとう切なくなったのだろう。堰を切ったように一気に溢れ出す。
「そっか。そっか。」
「はい、ティッシュ」
「あ、おれ泣いて、る」
俺に言われて驚いたように顔を触る。
「気づいてなかったのかよw」
「ねえ、そんなに辛いならさオニイサンが慰めてあげようか?」
「え、」
自分の中にある、黒い感情がじんわり滲み出る。
「冗談だ
「お願いします」
言い終わる前に即答された。
「は?意味わかってんの?」
「わかってます。セ⚪︎クスするんでしょ?俺そんなアホじゃないです。」
そしてそれはまるでインク玉を潰したようにどんどん広がって止まらない。
「言ったな?」
「はい」
「どーなっても知らないから。」
ダメだとわかっていた。それでも、一度封を切ってしまったら止められなかった。
ーー
やってしまった。
祐希は隣ですやすやと眠っている。こんなはずじゃなかったのに、どうしてこうなっちゃったのかな。寝ている彼の顔をなぞると気持ちよさそうに擦り寄せてくれる。
「ごめんな、こんな先輩で」
起こさないようにそっと、その無防備な顔にキスを落とした。
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いいねいっぱいください!(アピールしとく)
追記:ノベルの方もベッドシーン要りますか?需要あれば最後にまとめて書きます。
コメント
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最高卍