ダークウィックアカデミーを卒業して数年。
呪いから解放され、普通の社会人として日々を過ごす私は、会社の功績を称える年次パーティーに招かれていた。
煌びやかな会場には、政治家や財界人、各界の要人たちが集まり、シャンデリアの光がきらめいている。
私は上司と挨拶を交わしながら、会社の新しいプロジェクトについて説明していた。
笑顔を作り、資料を手に説明するその最中――ふと視線の端に、見覚えのある人物を捉える。
冠氷尋。
黒のスーツに身を包み、群衆の中でも自然に人々の視線を集める男。
誰もが遠巻きにその姿を見つめる中、彼の目線は特待生だけを捉えていた。
冠氷「……お前……久しぶりだな」
低く落ち着いた声。視線は揺らがず、学生時代の面影を残しつつも大人の威圧感が漂う
特待生「……冠氷、さん……」
動揺を隠しつつも、心臓が高鳴る。久々の再会の重みを肌で感じる
私は思わず口を開こうとした。
「えっと……その……」
だが、その瞬間、上司が手招きして声をかける。
「〇〇さん、こちらへ来てくれ」
視線を上げると、冠氷さんもまた、誰かに声をかけられている。
お互いに会話を続けられないことがわかり、わずかに視線を交わしたまま、距離を空けるしかなかった。
冠氷「……またな」
低くつぶやき、まるで約束のようにその言葉を残す
特待生「……はい……また……」
小さく返事をして、上司の元へ歩き出す。後ろからも、冠氷さんの姿が少し見える
短い再会だった。
だが、確かに心の奥で、また会う日が来る――そう思える余韻だけが、煌びやかな会場に静かに残っていた。